列島を翔ける平安武士: 九州・京都・東国 (歴史文化ライブラリー 446)

著者 :
  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642058469

作品紹介・あらすじ

中世武士は地方の所領に根を下ろすイメージが強いが、実際には北は陸奥から南は薩摩まで列島間を移動していた。京都や東国と関わりを持ちつつ、九州で活動した中世成立期の有力武士団を取り上げて実態を検証。在京活動のなかで各地から出仕してきた傍(ほう)輩(ばい)とのネットワークを築き、様々な情報を得て果敢に活動の空間を広げた武士たちの姿に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 平安時代の武士に関する本。
    平安から鎌倉にかけて、公家から武家に政治の主役は移ったものの、その過程や以後も、武士の固定的なイメージ、すなわち”一所懸命”のような、土地に固定化された人たちではなく、遠距離での交流があったり、単に源氏vs平氏で、平氏が絶滅したということではなかったりなど、歴史研究が進んでいるなぁ~ということが再確認できました。
    もっとも考想(1998年)から脱稿(2013年)までかなり時間がかかっているとのことですし、また発行も2017年なので、今ではもっと研究が進んでいることでしょう。
    完全な解明は絶対的にできないものが歴史ですが、常識が覆る面白さがありますね。

  • 鎌倉幕府成立期までの武士達がいかに京都を中心とした広域活動を行っていたかを著した内容。九州における事例の紹介が今まで知識があまり無かったこともあって興味深かった。

  • 学校で教わった「御恩と奉公」が鎌倉武士のイメージ
    具体的な御恩とは土地を与えて(認めて)もらったと
    単純に思っていたが、具体的に何かかを知り得たのが
    本書である(理解は低いので再読は必須w)

    鎌倉体制は、現代で言えば「特区」のようなものかと
    思う、だんだん体制を整備する中で権益も増えたと
    平安時代は、近代で言えば「占領軍無しの敗戦日本」
    であり、一応政府に従うが、火事場泥棒ならぬ戦後の
    無法地帯で、うまい事やる筋目の良い暴力集団である

    最初に驚いたのは立派な貴族と思っていた藤原保昌が
    ソコソコ乱暴な利権追及者に思えたこと、軍事貴族も
    普通にいたし、成果を上げた血筋は周囲も認め、次の
    活躍の場が与えられる(承平・天慶の乱、刀伊の入寇
    、平忠常の乱、前九年の役、源義親の乱、保元の乱)

    地方に読み書きも出来ず、武芸を磨き、争いだけを行
    うのが武士ではなく、都で朝廷とのつながりを大事に
    して地方で在庁官人としてうま味にありつく
    軍事的にも家政機能的にも有能で有る事を見せつけ、
    地方と京を行き来して、主に安定した収益をもたらす
    (鎌倉中盤は坂東武士が現地で地頭を行うことができ
     たのも、これらの仕組みが前提にある社会だから)

    この数年で歴史興味が湧き、現在は中世の社会とかが
    面白く感じているが、そもそも鎌倉武士が何故誕生し
    たのか、平安時代と何が違うのか、武士という新たな
    権力側の社会が生まれるには、何がキッカケとなり、
    積み重なってできたのかが、じわりと見えてきた

  • 裏表紙の内容紹介より「中世前期の武士は所領に根を下ろして土着するイメージが強いが、実際は列島を広く移動した。京都に出仕することで傍輩とのネットワークを築き、様々な情報を得て列島各地に活動の幅を広げていった彼らの実態に迫る」藤原保昌・大宰府の武者、源為朝や摂関・南島貿易、九州に進出した幕府の御家人、地方に散った彼らの中央や他の地方との繋がりなど、実例を挙げてその実態に迫る。

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著者プロフィール

1951年、千葉県生まれ。1973年、青山学院大学文学部史学科卒業。1981年、青山学院大学大学院文学研究科史学専攻博士課程修了。現在、京都女子大学名誉教授 ※2022年6月現在
【主要著書】『伝説の将軍 藤原秀郷』(吉川弘文館、2001年)、『源氏と坂東武士』(吉川弘文館、2007年)、『源義家―天下第一の武勇の士―』(山川出版社、2012年)、『東国武士と京都』(同成社、2015年)、『源氏の血脈』(講談社学術文庫,2022年)

「2022年 『公武政権の競合と協調』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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