日本中世の国家と仏教 (歴史文化セレクション)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642063661

作品紹介・あらすじ

「国家と仏教」という視座に立ち、十世紀から十六世紀までの広い期間を展望。その中世的特質を浮き彫りにし、新旧仏教を含めた中世仏教の全体像を再構築する。仏教を抽象的な思想レベルで把える傾向に一石を投じた書。

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  • 中世の仏教→鎌倉仏教

    鎌倉仏教
    平安時代末期から鎌倉時代にかけて興起した仏教変革の動き。特に浄土思想の普及や禅宗の伝来の影響によって新しく成立した仏教宗派のことを「鎌倉新仏教」(かまくらしんぶっきょう)と呼称する場合がある。
    →つまり、鎌倉時代に出てきたベンチャー仏教。鎌倉時代に輸入され、鎌倉時代に出来上がった仏教を鎌倉仏教といい基本的にはその変革運動のことを指す。日蓮宗や真宗などの鎌倉時代のベンチャー仏教は現在の仏教界でもかなりの存在感を持っている。

    鎌倉仏教の特徴
    「選択」「専修」「易行」といった言葉に示されるところの「民衆的性格」。鎌倉仏教以前は民衆の存在を視野に入れることがなかったが、鎌倉仏教はあらゆる人々の平等の救済を第一義の目的としたという。ただ、ベンチャーのため社会に根付くのはなかなか難しかった(どれだけいい考えでも新しいというだけで人々に受け入れられるのは難しい)。鎌倉時代を通しても、在地の民衆に対して圧倒的な影響力を行使していたのは伝統仏教。

    国家との関係
    中世において国家権力の一翼を担ったのは旧仏教。旧仏教は国家支配のイデオロギー部門を担当。つまり、統治ツールとしての宗教。

    中央集権化には官僚システムや法律といった統治機構だけでは不十分であり、国民の心を懐柔するようなイデオロギーを必要とする。その役割を仏教が担った。
    →仏教発祥の理由はもちろん国家統治のツールとしてではない。一切が苦しみの人生から救われるためにブッダが一人で勝手に発明したメンタルトレーニング。この順番を間違えてはいけない。「国家がブッダの発明品を統治の道具として使った」と考えるのが道理。

    鎌倉期に出現した法然・親鸞・日蓮の思想は世俗の支配権力(旧仏教)を相対化しうるだけの視座と論理を持っており、実際に民衆が国家支配の呪縛から離脱しようとする闘いを支える役割を果たした。しかし地上の権威(旧仏教)に対する宗教的権威の優位を説くそうした理念は、西欧の場合とは異なり中世を通じてついに異端の域を脱することはできなかった。
    →つまり、旧仏教が実際に民衆を国家的に支配していたということ。法然・親鸞・日蓮ら改革派である鎌倉仏教はそれを打ちのめすことはできなかった。既得権益に勝てなかった。

    鎌倉仏教から現代政治へのアナロジーが次同じような状況に立ち会った時の教訓となる。

    「いいアイデア」というだけでは人々(とりわけ保守層)には受け入れられない。

    改革の肝は人心を知ること。

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著者プロフィール

東北大学大学院教授

「2009年 『日本文化論キーワード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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