- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642077873
作品紹介・あらすじ
世を震撼させた保元・平治の二つの事件には、不可解な疑問がいくつも残されている。『兵範記』『愚管抄』などをもとに、乱の経過を克明にたどり、複雑に絡み合う人間模様を描写。事件の真相に迫り、時代情勢を解き明かす。
感想・レビュー・書評
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よくある『平家物語』や『保元物語』『平治物語』ではなくメイン当事者の1人である関白藤原忠通家の家司だった平信範さんが記録した『兵範記』や同じく忠通さんの子である慈円さんの『愚管抄』を中心に保元の乱と平治の乱を考察した1冊。
我田引水な論拠は研究者としては当然の話なので客観的に読むとしても、ちょっと人間の機微に欠ける説が多いかな~という印象。
例えば、鳥羽法皇が崇徳上皇を嫌っていた説に崇徳さんが鳥羽法皇と待賢門院さんの間の子ではなく鳥羽さんからすると祖父にあたる白河さんと待賢門院さんの子だったからという「叔父子説」があるけれど、筆者の河内祥輔さんはその説を取らない理由として特に亡くなる直前までの間(表面的には)普通に接していたから…とある。
でも、鳥羽さんは待賢門院さんとの間にたくさんの実子(崇徳さんはいちおう二人の間の長男)がいることから仲は悪くなかったと思うし、むしと嫁いできてすぐにどのような事情があったにせよ愛する女性を悲しませないためにも崇徳さんに対して「普通に」接していたのかもしれないし、天皇という立場で親も生きている間に皇太子ポジションの「実子」をいたぶることもできないだろうから、亡くなる直前に本音が出ただけで、元々自分の子じゃないと思ってうとんでいた可能性はあるわけで…。
こういう考察もあるのだな…という形で読ませてもらったけれど、違うんじゃないかな~と思う部分がやたらと多く感じた1冊でした。
いずれにしても棚ぼた天皇の後白河さんの人間性は微妙なところだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
学術書のポジションだと思うので、素人(私)が気軽に手に取る…本としては結構難易度高かったです、結構難しい。保元の乱と平治の乱を、「物語」ではなく、関連する資料を紐解きながら「リアル」な部分を解説する本なので、保元物語・平治物語を先に読んで、尚且つ人物がある程度把握できていないと理解しにくいと思います…まぁ、いきなりこの本から入る人はいないと思いますが。「物語」では想像しにくい、人物の年齢や背景などはわかりやすく理解できました。人物の関係図が結構シンプルに最後のページにあるのですが、ここはもうちょっとわかりやすくして欲しかったです…個人的に。天皇の皇位継承者問題が主軸なので、その辺の背景や流れがわかるので、コレを呼んだ後に保元物語・平治物語や平清盛関連書籍を読むと面白さが増すと思います。ただ、やっぱり素人が読むには結構難しい本でした、面白いけど難しい。
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面白い本でした。
いわゆる、通説、軍記ものの作るイメージによって、理解していた保元・平治の乱。
著者の示す可能性はとても面白い説。
鳥羽・崇徳、後白河・二条の対立の根幹が、嫡流をどうするか、という可能性は、なるほどーと思いました。
平治の乱の、信頼の理解も、これなら納得できる。
通説だと、寵臣だったんじゃ?と思うところが、すんなりと。 -
先に本書を厳しく批判した元木泰雄氏の著書を読み、そのいささか感情的な河内氏批判の文言に違和感をもっていたが、実際に読んでみて、なるほどこれは元木氏が怒るのも無理はないと理解した。複雑な政争を皇位継承問題に一元化しすぎている。朝廷の密室の政局だけに着目し、当時の政治構造全体への目配りがない。軍記物を排して『愚管抄』を重視しているのは良いとして、随所に根拠不明な仮定が目立つ。以上のような欠陥はあるが、保元・平治の乱を一応の筋の通った構想で描ききっているのは確かで、註が充実していることも含めて有用な本ではある。
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題名の通り。