きみはにんげんだから: 大岡信詩集 (詩と歩こう)

  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652038451

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    朝の頌歌

    朝は 白い服を着た少女である
    朝は 
    谷間から
    泉から
    大空から
    野末のささやかな流れから
    朽ちた木橋のたもとから
    その純白の姿を
    風に匂わせながら静かに現れる

    霧が無数の水滴となって
    静かに静かに降りそそぐ
    黒い柔らかな土に
    冬を蹴とばして萌え出た薄緑の若菜に
    朝のしじまに籠る家々の屋根に
    しづしづと降っては
    新鮮な色に映える

    その時 霧の中には
    清らかな髪の少女が微笑み
    やがて地上は朝の歓びに溢れる
    歓びは
    朝の巻毛にしたたる
    すっきりとすきとほった
    清い髪の中に宿るニンフである

    日が霧の彼方に
    羞じらひつつ 紅らみながら昇って来ると
    地上にはほのかな弦の音が響いて
    やがて 人々は
    霧のひそかな手に目覚めつつ
    今日も生命の歓喜に満ちて
    無限の歴史の連鎖の一環を作り出す

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著者プロフィール

昭和6年、静岡県三島市生まれ。詩人。東京芸術大学名誉教授。日本芸術院会員。昭和28年、東京大学国文学科卒業。『読売新聞』外報部記者を経て昭和45年、明治大学教授、63年東京芸大教授。平成2年、芸術選奨文部大臣賞受賞。平成7年恩賜賞・日本芸術院賞、8年、1996年度朝日賞受賞。平成 9年文化功労者。平成15年、文化勲章受章。著書に『大岡信詩集』(平16 岩波書店)、『折々のうた』(昭55〜平4 岩波書店)など多数。

「2012年 『久保田淳座談集 空ゆく雲 王朝から中世へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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