香港の甘い豆腐

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652077474

作品紹介・あらすじ

出生の秘密が、私を香港へと運んだ。孤独を初めて抱きしめた十七歳の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 高校をさぼりがちになっていた高校3年生の彩美は、
    夏休みに母親とふとしたことから口論に。
    彩美が生まれたことも知らないであろう父親に会うために、
    彩美は母親と二人で香港へ向かった。

    香港に上陸した後も、母親の旧友たちと食事をすることはあっても
    結局父親には会わないまま、母親だけ日本に戻る。
    彩美は母親の友人であるマリイのマンションにホームステイし、
    香港での生活を楽しむことに。
    マリイの姪のエミリー、同居人のテツヤとの生活を通して、
    日本ではのびやかに生活できなかった彩美は徐々に解放され、
    ついに父親ロイとの対面も果たす。


    彩美はロイと食事をしていて、素直な気持ちで父親を受け入れている自分に気付き、そのことを伝えた。それを受けて、ロイは

    「僕はうれしいよ、こんな縁があって。」(P137)
    「小さなきみにに会えなかったのが残念だ」(P138)


    香港には行ったことはないけれど、猥雑さとゆったりした時間の流れが同居している街なのではないかと想像している。
    美味しいものをたらふく食べ、いい香りのするお茶を楽しむ。
    おせっかいそうな年配の人。今どきの若者たち。
    混沌としていながら居心地の良い、懐かしさも感じそうなイメージ。

    そんな中で、彩美が生き生きと毎日を楽しみだす後半がいい。
    大人になれば、自分の中の割り切れない気持ちにもなんとか折り合いをつけて、
    毎日を過ごしていく。
    高校生の頃は納得できない毎日に嫌気がさして、
    あるとき不意に耐えられなくなることもあるかも。
    そこまでおおごとでなくても、疑問に思うことぐらいなら度々あるでしょう。
    そんなとき、周りの人といっぱい話したり一緒の時間を過ごす中で、
    自分が思い込んでいるほど危機的ではなく、
    誰もが似たような気持ちを抱いていると知り、
    もっとおおらかになれたら、ずい分楽になれるよね。
    (大人になっても、あまり変わらないか。)

    大人になって出会った大切な友達に
    ああ、あなたに会えて本当によかった!
    でも、もっと早くから親しくしていればよかったね。
    などと思うことがあった私は、ロイの言葉に激しく同意しつつ、
    それでも、今、そう気づけたことが最善なのかも、と思ったのでした。

  • 私の知っている香港よりも前の様子が描かれているけど、広東語のやかましさとかがすごくよく分かる表現で、なんだか懐かしい。
    これ読んだら香港に行きたくなってきた!!

  • 香港の甘い豆腐
    著作者:大島真寿美
    発行者:倫理社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    何もかも上手く行かないとき、手にとって欲しい一冊。

  • 父親がいないと思って生活していた17歳の少女。
    急に母親に連れられて香港へ。
    実は父親が香港にいると知らされて・・・

    なんか母と娘の関係。
    父親はいなくても生きてこれた17年。
    なんとなく自分と重なって、不思議な感じでした。
    香港で自分の存在を改めて見つめ直す事が出来た時間。
    とても穏やかな気分になりました。

    豆腐花が食べたくなります。

  • 主人公と同じく香港をぶらぶらしているような感覚
    麺、美味しそうだなー

  • 今の香港で同じことはできるのだろうか。
    自分の足で、自分自身の意思で生きる経験、『西の魔女が死んだ』にも通じるところがあるような気がする。
    多分は母自分の足で立って生きてきたんだろう。
    当然娘もそうだと思っていたんだろう。
    でも違って、焦ったのかもしれない。
    母のやり方は必ずしも正しかったわけではないと思うけど、娘は自分で立ってくれた。

  • 軽快で小気味よい。高校生の彩ちゃんが香港にホームステイするストーリー。
    「地に足が着く瞬間」が自覚できるってうらやましい。自分の気持ちをちゃんと向き合って感じる。それだけでいいのに、自分で自分をちゃんと生きるっていう感覚を掴めてる人ってそう多くないと思う。
    作中の「親切」についての話が好き。相手を慮りすぎてわかんなくなっちゃうことある。日本人のいいところでもあると思う。
    でももっとシンプルでいい。
    生きることも親切にすることも、案外シンプルなものなのかもしれない。

  • 豆腐花って美味しそうですね。思わず作り方をググってしまいましたが、にがりじゃなくて石膏をつかうと知って、あの石膏なのかと驚いています。食べれるんや。 主人公の心の壁が、香港の熱風によって取り払われ、父親を、そして自分自身を受け入れていくところは小説の山場でもあり、こちらの気分も盛り上がりました。香港の町の匂いを嗅いでみたり、麺をすすってみたくてたまりません。油まみれになってわたしもダックが食べたい。
    全部読んだ後に本の題名を見返すと、やっぱりこれしかないかなって感じです。以前読んだ「ピエタ」とはまた違った趣ですが、引き出しの多い作家さんだな、とまだ2冊しか読んでないけど思いました。
    場面転換や主人公の心情変化の度に美味しい食べ物が登場して、お腹いっぱい大満足のほかほか小説でした。

  • 大きくは17歳の女子高校生の自我屹立がテーマだと思いましたが
    自分が生まれた場所が自分の居場所とはかぎらない、
    自己ルーツを辿るテーマ性も感じられ、とても共感出来る
    部分が多々ありました。

  • 大島さんのみずみずしい文章が読みやすくて
    彼女の物語のなかでいちばん好きな本

    登場人物も食べものも風景も空気も全部がきらきらしてる

    そんな本です

  • アジアンな異国情緒大島先生作品って初めてかも分からん
    穏やか~~~~な空気なのは独特な世界観ならでは

  • 遠くへ行って、色んな知らないものを見たり聞いたりしたくなった

  • 青春小説。母子家庭の設定を悪い意味で強調した殺伐さはなく、爽やかでからにほのぼのしていて読みやすかった。清々しい香港の風を感じられる描写で本当に香港にいるような気分で主人公に感情移入して読めました。また読み返したいと思います。

  • さくさく読み終わり。

    17歳という多感な時期に、
    顔も知らない自分の父親(というか母の愛した人)に会うため香港で生活する主人公。

    香港、一回だけ、しかもすごく短期間でまわったぐらいなので、竹で組んだ足場がある描写ぐらいしか、具体的に「あぁ、あれね。」とならなく悔しい。

    この本の中での香港は、人々がとてもすなおなのだ。
    人間関係がはっきりしている。複雑に絡み合ってない。どろどろしていない。
    きっと主人公がこれまで暮らしてきた、日本の、学校での閉鎖的な縦社会とはえらく違ったんだろうなぁ。
    行くまえと、帰るときでは別人のようにどこか人が違うようにみえる。
    学校での英語の授業はあんなに嫌だったのに、広東語は自ら覚えたいと思う、この気持ちの変化は素晴らしい成長。
    どこかの言語を吸収してくというのは、たぶんこういうプロセスがあってのことなんだろうな。
    海外いきたい。

  • 読み初めてすぐに何度も読み返す本になると予感しました。
    香港の美味しそうなごはん、ぶっきらぼうなようで優しい人々がたまらなかったです。

  • 香港に1度いったことがあるだけですが、私も香港大好きなのでタイトルだけを見てふと手に取った一冊。
    香港では生きる術を自分で見つけて生きていかなければならない雰囲気は街全体から伝わってきます。
    読みやすく、青春時代の葛藤も重苦しく書かれてなくてサクッと読むのにちょうどいい。
    香港の人たちの人柄、料理、街の雰囲気...外国にいったら世界観が変わるというのが嫌いな私ですが、外国にいって新しいなにかを見つけれた彩美は幸せなんだろーな。

  • 読みやすい文体でさくさく読めました。
    出てくる香港の食べ物がどれも美味しそうで香港に行きたくなります。
    文章中の( )が多いのが最初はちょっと気になりました。

  • 母親の麻也子さんに心を寄せてしまいました。そうだよね、わかるなぁ…、うなずいている、自分がおもしろかった。多分、YAが共感しそうな小説なんだろうと思う。でも、母親のわたしが読んでも、十分おもしろい。そこに作者の力量を、感じました。香港の雑多な喧騒に飛び込んでいきたくなりますね♪

  • ほわほわとした感じ。
    高校生はすきなんだろな。軽く読める系

  • ちょうど、思春期の出口ぐらいのときに読みました。
    自分ていうものが自分でも分かってなくてこんな自分でいいのか不安で周りの評価を気にしてしまう感じ。
    でも香港で、マイペースな人達に出会って、自分らしくしていいんだって分かっていく。
    この本を読んでみんなそうなんだって思った気がします。

  • ふっと、ちょっと小休憩みたいな、肩が軽くなる。
    ゆる~い気持ちになる話

  • 身の置き場のない17歳の、香港へのトリップを通じた成長物語。
    これ短篇にした方がよかったんじゃないかなあ。

  • 家族のつながり。
    親の、みたことない一面。
    のびのびと生活する自由。
    あたたかい周りの人々。
    読んでて気持ちがあたたかくもなり、途中で泣ける部分もあり。
    やわらかく、さわやかで、気持ちのいい小説だった。

  • 主人公が話が進むにつれてしっかりしていくところが好きです。物語のいいたいことではないと思いますが、とりあえず本気で留学したいと思いました。

  • 香港行きたくなった

  • タイトルが、すてきだな〜と、思って。

    内容は、軽くて、物足りなかったけど、
    主人公と同い年くらいの子が、
    さくっと読むのには、いいんじゃないかな?

    得られるものも、あると思います。


    知らない街、わたしも、行きたーい!

  • 借りた日に読み始め、4時間くらいで読めちゃいました。
    サクサク読めるけど、物足りない。。

     子ども性を持つ母親と、そうした母親から自立していく高校生。
     その構図は江國香織の『神様のボート』と似てるなーと思った。うーん、そう思うと江國香織の文章はスゴイなと思う。

     それぞれの人物、作品の中の空気を書き込んでいる感じがします。キャラクターが立っているというか。

     
     
     

  •  学校をさぼっていて、このままだと留年だと知った母と言い合いになった彩美。突然、パスポートとエアチケットを握らされ、香港へ行くことに。顔も、名前すら知らなかった父親に会うために・・・。
     タイトル「香港の甘い豆腐」は、“豆腐花”のこと。香港で対面した父・ロイとの食事のシーンや日本に帰国後、母や祖母に作って食べさせるシーンに出てきた。

  • タイトルに惹かれて読みました。主人公が香港で段々ぼんやりした感じの性格から積極的ではっきりした性格になっていくのが個人的に好きでした。豆花食べたくなりました。香港の人達の描写が良いです。

  • 香港にひさびさに行きたくなった。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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