現代フィリピンを知るための61章【第2版】 (エリア・スタディーズ 11)

制作 : 大野 拓司  寺田 勇文 
  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750330563

作品紹介・あらすじ

わが国との500年に及ぶ交流の歴史をもち、いっそうその絆を深めるフィリピン。本書は、歴史、政治、経済、社会の仕組み、そして多様な文化や人々の暮らしを、最新のトピックスを交え紹介する。より深く知りたい人のために、巻末に詳細な読書ガイドを付す。

感想・レビュー・書評

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  • 最近は入管でフィリピン出身の人とよく会うので読んでみた。もっと歴史を学びたい。

    16世紀から17世紀の豊臣秀吉、徳川家康から家光にかけての時代には、日本の御朱印船などがスペイン統治下のフィリピンに出入りした。当時のマニラには3000人規模の南洋最大の日本人町が存在した。日本の権力者にとってフィリピンはいずれ「征討」すべき地だった。しかし鎖国政策がはじまり実現しなかった。

    19世紀半ばに鎖国が終わると、多くの日本人移民がアメリカ統治下のフィリピンへ正規の、または非正規のルートで向かい、昭和初期頃までには東南アジア最大の邦人社会を形成した。また、ルソン征討に再び人々の関心が向くようにもなった。

    日本は日清日露戦争を経て軍事大国になった。その隆盛は民衆の犠牲のうえに成立していた。日本人労働者の境遇は、当時の中国人移民やインド人苦力と変わらなかった。その一員である「からゆきさん」は貴重な外貨を稼ぎ、危険なスパイ活動に従事し国家に貢献したが、第一次世界大戦中にアジア市場からヨーロッパ製品が消えたのを商機として成功し、経済大国になった日本は彼女たちを国辱的存在として追放した。

    マニラの日本人は独力で成功した自負を持っているが、フィリピン人の目に日本という国家と国民が一体に見えるほど、日本領事館が商売の便宜を図っていた影響が大きい。戦争突入後、日本人商人は国家に忠実な愛国者として日本軍の先頭を切ってフィリピン人の面前に現れたため、その印象はさらに強まった。そして日本軍に占領されたフィリピンは、太平洋戦争最大の激戦地となった。

    1956年の日比国交正常化以降は、多くの人々が両国を行きかうようになる。1970年前後から日比間の経済関係が拡大するのと並行して、フィリピンへ渡航する日本人が増えた。その7~8割が日本人男性で、やがてその買春観光が社会的な非難の的になった。そのため70年代末からは、フィリピン人女性が日本に「ジャパユキさん」として出稼ぎに来るようになり、日本に渡航するフィリピン人の男女比は逆転した。この頃から四谷にある聖イグナチオ教会のミサにフィリピン人が集うようにもなった。2008年末には在日フィリピン人は20万人に達した。その7割が女性だ。在日フィリピン人は、韓国・朝鮮人、中国人、ブラジル人に次いで4番目に大きなコミュニティを形成している。

    80年代後半のバブル期にはアジア諸国から労働者が入ってきた。しかし日本政府は「単純労働者は受け入れない」という建前を保ち、彼ら彼女たちが日本で生きていくための法整備は後手に回ってきた。そのためフィリピン人を含む多くの外国人労働者が、法的に不安定な立場に置かれている。

  • 2015年のAPEC開催国であるフィリピン。長くスペインやアメリカによる植民地支配を受け、第二次世界大戦期には日本軍の侵攻を受けた歴史もあります。
    また高い教育水準を誇る一方で、国内の給与水準は十分でないことから、高等教育を受けた人材が海外へ職を求める「頭脳流出」が問題にもなっています。
    この明石書店「エリア・スタディーズ」シリーズは特定の国の政治や文化についての概要を専門家が紹介するもので、現在までに100冊以上が刊行されています。
    旅行や出張で海外に出かける際に目を通しておくと、その国について考える際のヒントになります。『地球の歩き方』よりもちょっと詳しいことが知りたい、という時におすすめです。
    (ラーニング・アドバイザー/図情 KOMINAMI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1359456

  • オムニバスで書くということがうまくいっている

  • フィリピンの政治、経済、歴史、文化の概要を一冊にまとめた本。各章は大学教授やジャーナリストによって担当されているため、筆致はバラバラだが、寄せ集めのエピソードというより、一冊を読み終えたときにはフィリピンの概要がなんとなくわかった気がする簡易な入門書である。特にフィリピンの政治や歴史などは専門書を除いてなかなか気楽に読めるものがない中、フィリピン以外にも100を越える国についてシリーズとなっているため、パナマ、マラウィなど単独でテーマになりにくい国も網羅されているので、ある国に関心をもったら、同シリーズの本を手にとってみたい。

  • 歴史、経済、文化、政治など、多様な面からフィリピンについて語られている。各項目ごとにその分野の研究者が執筆しているので、内容は濃い。
    ただし、改訂版とはいえ、記載内容が2000年前後の視点で描かれているので、現在の成長著しいフィリピンとは状況がかい離しているものがあるのは否めない。

  • 3週間ほどフィリピンに行っていたのですが、行く前に読んどけばよかったです。

  • フィリピンの地方自治制度について研修を受けることになったので、渡比に際して早急にフィリピンの概略をつかむ必要があって購入した。

    歴史、社会・文化、政治、経済、国際関係といった枠組みの章立てで構成されており、重要な事柄が専門家の手によって短く簡潔にまとめられている本書は、表題どおり、エッセンスをポイントできっちり押さえられる。

    わたしのケースだが、渡比前に一読・飛行機の機内で再読しただけであるが、フィリピン国内の滞在期間中、地方政府関係者らとの交流に際して、文化的背景を解って会話が出来たので、彼らと非常に良好な関係を作ってくることができた。

    海外勤務者や留学生はもとより、リゾート観光客からフィリピンパブ愛好者まで、幅広くお勧めしたい1冊。

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