少年事件 心は裁判でどう扱われるか―弁護士と児童精神科医の対話―

著者 :
制作 : 高岡 健 
  • 明石書店
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750331188

作品紹介・あらすじ

少年事件を手がける弁護士4人と少年の鑑定を行う精神科医が、2000年以降に起こった少年事件を取り上げ、加速度的に進んできた厳罰化の問題性と少年を取り巻く司法状況とともに、少年の心や生育環境にも目を向けて総合的に考えていくことの重要性を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 少年事件をセンセーショナルに報道してその後は、、、ということが気になっていた。
    最近少年の殺人事件が起き、15歳でも逆送という措置がとられたという意味がどういうことなのか調べようと思い、この本にたどり着いた。
    責任能力の有無について精神鑑定が利用されるのに違和感は最後まで残った 精神疾患への逆差別が起こるという懸念がぬぐえない
    厳罰化が望まれるなか、情状鑑定の意味は考えさせられた ここまで更生社会復帰に向けて支援されるが、被害者はほとんど補償がないのに違和感
    被害者の救済と罪の赦しは同等ではない 
    犯罪被害者を救済するしくみを今度は調べてみたい

    覚書
    少年法の改正、保護機能と管理機能、何をどう救済するのか
    非行少年の管理と精神障害者の管理に共通する思想

    14歳未満の触法少年は児童福祉法
    14歳以上20歳未満 警察や検察を経て家庭裁判所へ送致
    調査審判で 少年院、保護観察、児童施設
    逆送とは検察官送致で起訴となり刑事裁判へ

    多動性障害 アメリカとイギリスで40倍くらい診断率が違う 非白人の下層階級に属する子に対して病名をつけ薬物で管理
    イギリスでは多動程度では問題にならず校内での傷害や薬物の売買といった非行が問題 行為障害と診断
    社会の在り方で診断基準が変化
    少年事件の背景には必ずといっていいほど虐待が存在といじめの関与
    被害者であった人が加害者になるときの特徴 屈服の時も暴力をふるう時も無感覚反応が起こる
    情状鑑定の中身 社会適応性 再犯の危険性 
    行為に対する法的な責任で決められるべきという規範的責任論
    いまの刑事裁判の行動としては殺意とか責任能力を争うという風に言わないと審判をやってくれない
    弁護人としては殺意のあったかなかったかによって本人の反省の出発点が変わると思っている
    少年事件は少年の更生のために何ができるかを追求

  • ある機会に著者の高岡先生の講演を聴くことがあったのがきっかけで、本書を手に取った。
    少年事件と通常の事件では裁判方法はどう異なるのか、なぜそのような仕組みの違いが生まれたのか。その答えと、それに沿う実践活動事例が記されている。
    少年事件、という言い方だと身近に感じる人も少ないかもしれないけれど、問題行動を起こす子どもに対する時の心構え、と捉えて読むと、より内容を感じやすく、ためになった。

  • 情状鑑定などの精神鑑定を行っている「精神科医」と少年事件に多く携わっている「弁護士」×4名の対談。各実務家が日ごろから胸に持っている問題意識や疑問がたくさん散りばめられている。対談形式である上、解説が丁寧なので、少年事件や少年法をよく知らない人間でも読みやすい。

    少年事件の付添人活動を一生懸命おこなっている弁護士の方は熱い方が多い。それは、少年事件はお金にならないので、よほどの信念がない限りなかなかどっぷり浸かることは難しいからだと思われる。
    熱い弁護士のエピソードをひとつ載せておく。少年事件など「社会的弱者」の弁護や支援を多くおこなっていらっしゃる髙森裕司弁護士の話。
    -----------
    ベテラン調査官は、住所を見たらその町の匂いを思い出すという。昔は実際に調査官が少年の住む街に足を使って赴いて、いろいろ聞き取りを行っていたからだ。しかし今の調査官はデスクワークが多くてなかなかそのようなことはできない。そのため、ベテラン調査官は昔のようなことを現在できないので寂しいと感じている。
    そこで、髙森裕司弁護士は「自分が足になろう」と思った。家に赴いて、「こうだった、ああだった」という情報を手に入れ、調査官に全部提供して「そうですか、こうですよね」という答えをいっぱいもらおうと。
    -----------

    以下、メモ。

    ・保護(矯正)可能性と保護処分許容性
    ・多動性行為障害
     多動性:1年ごとに軽くなる(時間性)
         どの場所でも多動(空間性)
     行為障害:同義反復であり、どれほど意義があるか不明

    ・情状鑑定「情状鑑定は被告人を人間として理解することを意図するものである」

    ・ギャンググループ(小学生、行動による仲間意識)
    チャムグループ(中学生、考え方が共通)
    ピアグループ(高校生、考え方が異なっても)

    ・児童福祉には人間的な面での継続性がある

    ・人間関係の豊かさ・貧しさ

    ・映画「砂の上のロビンソン」

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著者プロフィール

1953年生まれ。精神科医。岐阜大学医学部卒。岐阜赤十字病院精神科部長、岐阜大学医学部精神病理学分野准教授などを経て、現在、岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター。自閉症スペクトラムの臨床研究、少年事件の精神鑑定、不登校・引きこもりの臨床社会的研究などに取り組む。日本児童青年精神医学会理事。雑誌「精神医療」(編集=「精神医療」編集委員会、発行批評社)編集委員。主な著書に『発達障害は少年事件を引き起こさない』『精神鑑定とは何か』(ともに明石書店)、『やさしい発達障害論』(批評社)、『自閉症論の原点』(雲母書房)など多数。

「2019年 『いかにして抹殺の〈思想〉は引き寄せられたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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