- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750347325
作品紹介・あらすじ
2014年ウクライナのクリミアをロシアが併合したことは全世界を驚かせた。そもそもウクライナとはどういう国なのか。本書は、ウクライナを自然環境、歴史、民族、言語、宗教など様々な面から、ウクライナに長らくかかわってきた執筆者によって紹介する。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
世界遺産検定の学習中や、断片的に国名や地名がニュースから漏れ聞こえてくる時、それがユーラシア大陸にある国なのか、アフリカ大陸なのか、中米・南米なのか、わからなくてその都度調べることが多い。
これじゃいかんと、最終的には白地図にパッパッと国名を書き込めるようになりたいと思った。
ウクライナ、ウイグル(地名だけど)、ウガンダ、ウズベキスタンも、私にはごちゃごちゃだった。
ニュースで聞こえてくるロシアがらみがウクライナで、中国がらみがウイグルなんだな、とやっと頭の中で整理した。
その程度の知識レベルの私だが興味と好奇心だけは有るので、ヨーロッパ47ヵ国について書かれている本を購入したりして(図書館本と違い、購入本はすぐに積読になってしまうが)、ウクライナへのロシアによる軍事侵攻が始まってしまうより前に、多少はウクライナについて知識を得ていた。
本書を読むより前に、「チェルノブイリってウクライナだったんだ」「ボルシチってウクライナの料理だったのか」とか、クリミア半島の位置とか、カルパティア(山脈や地方)・キエフ・リヴィウ・オデッサの位置までは把握していた。
もっとウクライナについて知らなければ、と思ったところで2/24、ロシアが軍事侵攻を始めてしまった。
ウクライナについて知ることのできる本を、早く借りないと他の人に借りられてしまう!と慌てて図書館に行って無事借りられたのが本書だ。
しかし、2冊蔵書があるのだが、他に誰も借りないし予約待ちの人も全く現れないので、延長までできてしまい4週間借りられることになってしまって逆に驚いている。
本書は2018年10月発行。
ロシアの侵攻も、今に始まった事ではないと理解した。
私にとって難しいところは結構飛ばし読みしてしまっているのだが、読んで本当に良かった。
島国の日本人には理解しにくい背景があるのに、情報番組の芸能人コメンテーターやらが、直接ウクライナ人に対してコメントするなんてもっての外であり、本当にやめて欲しい。
(知識も無く専門家でもない人や、暇な専門家がいい加減なコメントを発することに、コロナ禍初期の頃から嫌気がさしているため情報番組は観ないようにしているのだが、「誰それがラジオやテレビ番組でこういうコメントをした」とネットニュースに出てくるので、知りたくもないのに知ってしまう)
ここに私が本書の断片的で下手な要約を書いてしまうのは良くないので、非公開メモやフレーズに沢山残しておこうと思う。
いずれにせよ本書の執筆者の皆さんの現在の心境はいかばかりか…と思わずにはいられない。
ところで今回ウクライナについての本を、と図書館の蔵書検索をして初めて知った『エリア・スタディーズ』
あれもこれも読みたいので新しくカテゴリを作った。
本当は次に「ベラルーシ」を読もうとは思ってもいなかったのだが、本書の「おわりに」に「ベラルーシという隣国を一つ介することで、ウクライナの問題がより浮き彫りとなってくるという効果があります。」と、どちらの本もお書きになった執筆者兼編集者である方が薦めていらっしゃるので、とりあえず次は「ベラルーシ」を読んでみよう。
追記 2022.06.15
カテゴリは「歴史関係」に変更。
「エリア・スタディーズ」はタグに設定。 -
<「分かつ」(クライ)を内包する国>
2月末に始まった、ロシアによるウクライナ侵攻は、多くの市民を巻き込みつつ、いまだその行方は予断を許さない。人道的観点からも早期の収束に向かうことを願う。
かの地の歴史的背景を知りたく手に取った1冊。
エリア・スタディーズ169とあるが、こちらは世界各国・各地の概要をわかりやすく解説した入門書のシリーズ。「~を知るための○○章」という体裁が共通である。現在、シリーズ186冊目の「モルディブを知るための35章」までが出ている。
1章ずつは数ページで短く、編著者を中心に、複数の専門家がそれぞれのテーマで執筆をする。最近のニュース解説で時々見かける諸氏の名前もある。
本書発刊自体は2018年で、現ゼレンスキー大統領が就任するよりも前である。編著者のあとがきによれば、企画は2011年に立ち上がっていたが、マイナー領域であるためになかなか刊行に至らず、2014年のクリミア危機で状況が一変したためにさらに難航、2017年に体制を立て直し、できていた原稿はなるべく生かす形で上梓に漕ぎつけたという。そのため、クリミアに関する記述も多いが、騒乱後に一から立ち上げたのであれば、章立ては変わっていたかもしれないという。だが、この地の複雑さを感じさせるという意味では逆によかったのではないかと一読者としては思う。
大きく四部に分けられ、「ウクライナのシンボルと風景」「ウクライナの民族・言語・宗教」「ウクライナの歴史」「ウクライナの芸術と文化」「現代ウクライナの諸問題」、それぞれが10~20のトピックを扱うという形である。
通読してもよいし、興味のある部分を拾い読みしてもよいという作り。
穀倉地帯を抱え、炭田も持ち、交通の要衝を擁しつつも(いや、だからこそ、なのかもしれないが)、各国に蹂躙され、長らく独立を果たすことが出来なかった地である。
「ウクライナ」の語源は定かではないようだが、この語の中の「クライ」は印欧祖語由来の「分かつ」を意味する語根であるという。これはひいては「境界」や「領域」を意味する。「分かたれた土地」≒「辺境」を意味する語が国自体を示すようになったというのはなかなか象徴的であるようにも思える。
国土面積は日本の約1.6倍、4千数百万の人口はヨーロッパで7番目の多さという。
民族構成はウクライナ人が78%、ロシア人17%、その他の5%にベラルーシ人、モルドヴァ人、クリミア・タタール人、ブルガリア人、ハンガリー人などが含まれる。原語的にはスラヴ諸語、ゲルマン諸語、ロマンス諸語、テュルク諸語などを含む。
ロシアとの結びつきは古くから強く、文化的には共通の地盤を持つ部分も多い。ロシアの文豪ゴーゴリはウクライナ生まれであり、ロシア料理の代表のように思われているボルシチはもともとウクライナ料理である。
ロシア語とウクライナ語は言語的には近縁だが異なる言語である。首都「キエフ」はロシア語読みで、ウクライナ語では「キーウ」となる(*今回のロシア侵攻を受けて、日本政府も「キーウ」表記に変更)。一般に東部・南部でロシア語ネイティブが多く、西部ではウクライナ語優勢となる。
ロシアの他、ポーランド人・ユダヤ人との関わりも深い。
ゼレンスキー大統領は、ロシア語ネイティブのユダヤ系ウクライナ人である。就任後にウクライナ語の特訓を受け、現在では演説等はウクライナ語で行うと聞いたが、それだけでも複雑さを感じさせるエピソードである。
西部のある街にはこんな小話があるという。
「私はオーストリア=ハンガリー帝国で生まれ、チェコスロヴァキアの学校に通い、ハンガリーで結婚し、ソ連で働き、ウクライナで余生を送っている。しかし私は一度も自分の村から出たことはない」
「自由な戦士」を指す「コサック」は、国歌に歌われ、紙幣にその指導者の肖像が描かれるなど、ウクライナの一種の象徴となっている。
古くはタタール軍を撃退し、ヨーロッパ諸国で傭兵としても働いた。17世紀には、コサックを中心とする国家の建設も成し遂げたが、18世紀末、ロシア帝国による完全併合でその歴史は一度途切れる。
その後は、ある種、民族統合の精神的な拠り所のような存在となっているようだ。
キエフ独立広場の像(「ベレヒーニャ(竈の女神)」)や日本文化の受容、伝統工芸など、興味深い話題も数多い。
複雑な歴史を背負う地は、豊かな文化も内包する。
まずは何より戦闘が止み、現地に平和が戻ることを祈る。 -
ウクライナ侵攻があってから、ウクライナのことをほとんど知らないと思い手に取った。「ロシアの」「ソビエトの」人、と思っていた人がウクライナ出身だったことがわかった。
またウクライナという呼び名も、語源が「分かつ」という意味の印欧祖語由来の「クライ」という語根を含んでおり、分かつという意味が、「境界」という意味で、区切る、という意味と、区切ったまとまりという意味で「国」という相反する二つの概念の意味を含む、というのが興味深い。
その「クライ」が「ウクラヤーティ(分かつ)」、「ウクラーヤナ(分かたれた)」となる。
また、黒海北岸のステップ地帯は歴史的に「荒野」と呼ばれていた。これは、ロシアの南、リトアニア・ポーランドの東、トルコの北、という感じでこの3地域の先、諸国間の係争の絶えない危険な国境地帯であり、3地域から見れば最果ての「辺境の地」であり、「荒野」とならざるを得ない地政学的な地、というのも今の状況につながっている・・
辺境は大国の取り合いの領地となる。紀元前にはギリシャの植民都市が沿岸地域に多く作られ、スキタイが入り、キエフ大公国ができるも、東から遊牧民のキプチャク・ハン国が入り、中世には西部はポーランド、リトアニア、クリミアはオスマン・トルコの支配下に、さらにはロシア帝国下では「小ロシア地方」、そしてソビエト連邦の自治共和国となる。
第二次世界大戦のクリミア半島のヤルタ会談で、領地の議論がされ、ポーランド、ルーマニア、チェコスロバキアとの境界部分がソ連のものとなる。(たぶんこれが現在のウクライナ国境線なのだと理解した)ここで初めてウクライナ人の居住地域は、「クリミアの地でスターリンによって」、ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国の名に統一した、とある。
1954年、クリミア半島は、ソビエト・ロシア連邦共和国からウクライナ共和国に移管。1654年に締結されたロシア帝国とウクライナ・コサック国家の同盟から300周年の記念として、ウクライナとロシアの永遠の友好の証として。ウクライナ出身のフルシチョフが主導。
2014年 60年後、プーチンはクリミア併合。
ウクライナ出身の人
〇イリヤ・メチコフ(1845-1916) ハルキフ生。ユダヤ系細菌学者。1908年ノーベル医学生理学賞受賞。ブルガリアヨーグルトが長寿によいと推奨。
〇ワックスマン(1888-1973) キエフ生。ストレプトマイシンを発見 1952年ノーベル医学生理学賞受賞。
〇シコルスキー(1889-1972) キエフ生。ヘリコプターの実用化に貢献。
〇ジョージ・ガモフ(1904-1968) オデッサ生。宇宙のビッグ・バン理論提唱。DNAの先駆的研究。
〇ゴーゴリ(1809-52)キエフ州東ポリタヴァ州生。 1835年「隊長ブーリバ」17世紀を舞台にコサックとポーランドとの闘争を描く
〇トロツキー(1879-1940) ウクライナ南部生。オデッサのドイツ人学校で学ぶ。
〇フルシチョフ(1894-1971)ハリコフの北クルクス県生。15才でドンバス地方で鉛管工として働き始める。
<コサック>
隷属・抑圧からの解放を求める者たちが周辺諸国から、この権力の空白地帯に集い、軍事能力を備えた自治共同体を形成するに至る。
<屋根の上のバイオリン弾き>
オデッサはユダヤ人が多く住み、オデッサのジャーナリスト、ショーレム・アイヘムの原作が1964年にブロードウェイでミュージカル化。「ポクロム」と呼ばれるユダヤ人排斥が描かれる。
<第二次世界大戦での日本人捕虜>
シベリア抑留、ではウクライナに6555名。うち死亡者227名。ハルキフ・ドンバス地方、沿ドニプロ地区、沿アゾフ海地区の3地区。・・今回の侵攻があったのでドンバスがすぐ分かった・・ 抑留者が飢えをしのいだ食べ物はシベリアでは松の実だが、ここウクライナではひまわりの種だったという。
2018.10.25初版第1版 図書館 -
目下、戦争中のウクライナの本。
図書館で借りた。
黒土の広がる肥沃な穀物地帯、ドネツクを中心とした製鉄産業、コサックの末裔。
独立したのはまだ最近で1991年。
地名などは馴染みのないものばかりで、キエフくらいしか知らない。
内容は馴染みがないことばかりで難しかったが、1冊読んだことで少しは理解したこともあると考えよう。 -
2022年2月上旬現在、ロシアのウクライナ侵攻への現実性が高まる中、ロシアやヨーロッパ諸国、アメリカの動きはニュースである程度知ることができますが、肝心のウクライナのことは、直接の当事国にも関わらず、その報道量が驚くほど少なくよくわかりません。
そんなウクライナについて、特に歴史や政治的なことを知りたいと思い本書を手に取りました。
本書はテーマが様々で、テーマ毎に執筆者は異なっています。気になったところをパラパラと読んでいます。
ボルシチはロシアではなくウクライナ料理だということも本書で初めて知りました。あと愛のトンネルも。
ウクライナの歴史は複雑で、現在の様々な出来事や多民族多言語である背景を知るにはそれを紐解かなければいけないのですが、いかんせん歴史の知識が乏しく、知らないことばかりで理解するにも時間がかかってしまいます。
2014年2月のユーロマイダン革命(尊厳の革命)について、最近これをテーマにしたNetflix のドキュメンタリー「ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い」を見ました。この作品は当時の反体制派と政府側(親ロシア)の衝突がリアルに描かれているのですが(暴力、出血、死の生々しい描写があるので注意)、なぜこの革命が起きたのか、デモ参加者はどのような人達なのか、などの背景的な説明は全くありません。反体制派が明らかに善として描かれていますが、それを鵜呑みにしていいのか判断できません。
本書では、この運動は単に親EUの願いというわけではなく、経済不振、政治の腐敗への不満もあり、反体制派には極右も含め多様な人達が合流していた、との記載がありますが、なぜこれほど大きな運動になったのかの詳細な分析はありませんでした。ちょっと残念。
いずれにしてもユーロマイダン革命により親ロ政権は倒れて新政権が発足。ヨーロッパ化とともにウクライナ民族主義的な運動が進み、親ロシア派やロシアとの関係がどんどん悪化し、ドンバス紛争、クリミア併合が起こっています。
ちなみに本書の出版は2018年10月。
本書の出版後、ウクライナは2019年2月に憲法改正を行い、将来的なEU、NATO加盟を目指す方針を明記、2019年5月に親EU派のゼレンスキーの大統領就任(元コメディアンで、就任前にドラマで大統領を演じている)、ロシアはますます反発を強めています。
現在、ロシアは軍隊をウクライナ国境に配備、NATOも東欧に軍備を増強、情勢の緊迫が強くなっています。 -
国名の由来から始まり、シンボル、民族・言語・宗教、歴史、藝術と文化、現代の政治・経済・社会・軍事・欧州との関係など広範囲について充実の1冊。1992年のソ連からの独立以来のこの国の右往左往が悲劇を招いている可能性を強く感じさせられた。隣国ポーランドとは複雑な歴史があり、リヴィウはかつてはポーランド領だったとか、ポーランドからは格下としての差別意識があるなどの事情を知ると、この国の不幸な歴史を思わざるを得ない。そのポーランドが今は良好な外交関係にあり、ウクライナを支えているのは喜ばしい出来事だと思った。文豪ゴーゴリは実はウクライナの人だったとか、詩人シェフチェンコはロシアでも愛されているなど…。ロシアと分離しづらい深い関係はシャム双生児のように見えて、それがむしろプーチンの憎悪に繋がっているように思う。そしてウクライナ料理の代表は実はボルシチ!これもロシアと誤解されているものの一つ。
ウクライナの東西はロシア、オーストリアに分割統治されていた時代が長いとのことで、日本のように一つの国としての一体感が自明ではなかった国であることを改めて知ったが、今回のロシアとの戦争でむしろ一つになったという皮肉な結果に思える。
日本の武士道とコサック魂。これが同国からの日本への親密感に繋がっている。ぜひこの国の今後の復興を応援していきたい。
「ウクライナの栄光も自由も未だ死なず / 若き兄弟たちよ 運命はきっと我らに微笑むだろう / 我らの敵は日の下の露の如く滅びるだろう / 兄弟たちよ 我らは我らの地を治めよう/ 我ら自由のために心と体を捧げ 示そう / 兄弟たちよ 我らコサックの一族であることを」(ウクライナ国歌) -
2022.02.28 ウクライナ本
2022.03.11 読書開始
2022.03.12 朝活読書サロンで紹介を受ける
2022.03.26 社内読書部で紹介する -
図書館で借りた。
国際関係では今話題のウクライナ。日本人の印象は薄いが、実はヨーロッパ第二の大国。国旗が表す地平線まで続く小麦畑の農業国でもあり、そういう面ではフランスに近い。また最新のIT含め科学技術のレベルもとても高い。
されど旧ソ連や他民族の支配が長かったことも有り「歴史なき民」とも言われる。旧ソ連解体・独立後、核兵器を世界で3番目に持っていたものの、それを全て廃棄した過去がある。その事実を見ると、平和的な政策に見える。
しかし、2022年現在、ロシアから侵攻されようとしている。 -
エリアスタディーズシリーズからようやくウクライナが出版されたので、早速買ってみた。ウクライナの歴史や言語、現在社会問題として注目されているチェルノブイリやユーロマイダン革命、ドンバス紛争、クリミア併合までウクライナの周辺知識を広く知ることができる。ソフトな面でウクライナの観光やポップカルチャー、日本との交流の話も盛り込んであり、読み物としても面白く読むことができる。参考文献もしっかり記載されているので、ウクライナについて研究したいと思う初学者にうってつけの入門書だと思う。