左派ポピュリズムのために

  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750347721

作品紹介・あらすじ

私たちはまさに「ポピュリスト・モーメント」の只中にいる――。「ポスト政治」的状況において、左派ポピュリズムの可能性とは何か。「少数者支配」に対抗する「人民」を構築し、民主主義を回復・深化させるためのラディカル・デモクラシー戦略を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • マルクス主義には人間の感情的紐帯への考察が欠けている気がしており、左派思想と精神分析との接合点を探索している中で本書に出会った。
    これまでラクラウ、ムフの著書は読んだことがなかったが、まさに本書の最終章で上記のトピックが彼らの理論の中で扱われていることがわかり、思索の糧となる知見を得られた。
    自由-平等を根とする民主主義というシニフィアンにおいて様々なアクティビズムを接合すること、アクティビズムが政治的な影響を持つためには政党という形へ持ち込むことが重要など、アクティビスト必携の知見が得られる書籍と言って良いのではないだろうか。

  • 毎日新聞掲載2019812

  • 東2法経図・6F開架:311.7A/Mo96s//K

  •  サッチャリズムに代表的な新自由主義は、左右の政治的対立点を曖昧にする「ポスト政治」と、民主主義と自由主義の間の緊張関係を解消しようとする(自由主義が幅をきかせる)「ポストデモクラシー」状況を招く。しかし、リーマンショック後の緊縮財政が、社会に深刻な影響を与える中で、状況を変えるための機運が高まってくる。

     この危機の中心には、西欧社会の少数者支配(オリガーキー)があり、それを乗り越えようという機運が高まっている現在の状況を、ムフは「ポピュリスト・モーメント」と呼ぶ。ここで、左派が適切な形で人民/既得権益層の対立軸を提示できないと、結局は右派のポピュリストが台頭してしまうことになる。

     一般に、右派を中心として展開されるポピュリズムは、非理性的なものとみなされがちだが、そうした人々の心の中には、左派がすくい上げることのできていない情動があるはずである。それらを見つめて、取り込んでいくことが、いま左派に求められている戦略(左派ポピュリズム)である、ということを説いている。
     

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著者プロフィール

ベルギー生まれ。現在、ウェストミンスター大学民主主義研究所教授(政治理論)。ハーバード大学、コーネル大学、プリンストン大学先端研究所、パリ国立科学研究センター(CNRS)などでの研究職や、コロンビア国立大学、ロンドン市立大学、ロンドン大学ウェストフィールド・カレッジなどの教授を歴任。パリ国際哲学カレッジにも参画。邦訳に、『政治的なるものの再興』(千葉眞・土井美徳・田中智彦・山田竜作訳、日本経済評論社、1998)、『民主主義の逆説』(葛西弘隆訳、以文社、2006)、『政治的なものについて』(酒井隆史監訳、篠原雅武訳、明石書店、2008)、エルネスト・ラクラウとの共著『民主主義の革命』(西永亮・千葉眞訳、ちくま学芸文庫、2012)などがある。

「2019年 『左派ポピュリズムのために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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