兵士は戦場で何を見たのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750514376

作品紹介・あらすじ

戦争は兵士たちの身体を無慈悲にかつ無意味に破壊する。失明、火傷、四肢切断……本書はイラクで米軍兵士たちの身体がどう破壊されたかを詳細に描いている。自衛隊の派兵の可能性について語る人たちにまず読んで欲しい――内田樹氏・推薦

心臓が止まるような作品――ミチコ・カクタニ(「ニューヨーク・タイムズ」紙)

『イーリアス』以降、もっとも素晴らしい戦争の本――ジェラルディン・ブルックス(ピュリツァー賞作家)

2015年の話題作『帰還兵はなぜ自殺するのか』の前編、ついに翻訳!

2007年、カンザス州フォート・ライリーを拠点にしていた第16歩兵連隊第2大隊がイラク

に派遣される。勇猛な指揮官カウズラリッチ中佐は任務に邁進するが、やがて配下の兵士たちは攻撃を受けて四肢を失い、不眠に悩まされ、不意に体が震えてくる……

ピュリッツァー賞ジャーナリストが、イラク戦争に従軍したアメリカ陸軍歩兵連隊に密着。
若き兵士たちが次々に破壊され殺されていく姿を、目をそらさず見つめる。
兵士たちの心の病に迫った話題作『帰還兵はなぜ自殺するのか』をもしのぐ衝撃のノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • バクダッドで

  • 勇ましい戦闘シーンはほぼなし。イラク戦争における米軍一大隊の被害がドキュメンタリータッチで描かれる。
    最後に大隊所属兵士の名前一覧を掲載。当たり前だけど全員生身の人間であることを思い知る。

  • 死が間近にある戦地イラクでの緊張状態の中、実際に砲撃を受け続け米兵は精神も身体もぶっ壊されていく。生きて帰還してもPTSDで自死を選ぶ者も。入隊者が少なければ犯罪者を免責して取り込む。その犯罪者も極度のストレスに狂っていく。

  • 「帰還兵はなぜ自殺するのか」の前に読むべき。

    ノンフィクションだが、第三者目線ではなく当事者目線で語られるのでまるで映画を見ているよう。
    米本土と戦地の兵士たちの温度差を感じる場面の度にやりきれない思いを感じた。
    訳者あとがきにあった
    " 本書の原題「The Good Soldiers」直訳すれば、よい兵士、善良な兵士、立派な兵士、忠実な兵士、といった言葉になる。確かにここに登場する兵ひとりひとりはそういう兵士である。この言葉にフィンケルはまったく皮肉を込めてはいない。国のために戦っている若い兵士、遠い国で命を賭けている兵士はgood soldier以外の何者でもない。しかし、目を閉じれば脳裏には死んだ戦友の姿やいイラクの女の子の姿がスライド・ショーのように映り、不眠に苦しみ、不意に体が震えてくる。そこにいるのは兵士である前に、紛れもなく普通の若者である。"
    という文章は全ての兵士のことを指していると思った。この本に登場するアメリカ兵はもちろん、全ての戦争で戦ったほとんど全ての兵士が「普通の若者」だったはずだ。そんな普通の若者を戦地に送り込み「goid soldier」にすることの意味を全ての人間がよく考えなければならない。

  • なんで翻訳版では出版順ではなかったのだろう。『帰還兵は
    なぜ自殺するのか』の前作が本書である。原書ではこちらが
    先に発行されているのに。

    「バグダッドの治安維持とイラクの自由のために」。そんな
    大義名分を掲げて、子ブッシュ大統領が行ったイラクへの
    2万人の追加派兵。この時に派兵されたある大隊に密着取材
    して、戦場で何が起きてるかを伝えている。

    いつ、どこで、誰に狙撃されるか分からない恐怖。隣にいた
    兵士が次の瞬間には無惨な死体になっている現実。誰がテロ
    リストか、誰が一般人なのか、判断する基準のない混乱。

    恐怖が、焦りが、怒りが、兵士を暴虐に駆り立てる。そうして、
    繰り返される現地の市井の人々への虐殺。これが、アメリカへ
    の、アメリカ兵への憎しみを増殖させる。

    平均年齢19歳の兵士たちが、どこが前線とも分からぬ戦場へ
    送り込まれる。いくら訓練を積んでいようとも、戦場のリアル
    は実際にその場に立たなければ実感は出来ないのに。

    戦争は人間を壊す。それは、戦場となった国の人々は勿論の
    こと、戦場に駆り出された兵士をも壊すのだ。だから、命を
    失わずに故郷に帰還した兵士さえ、助かった命を自ら捨てる
    ことになるのだ。

    最高司令官は戦場のリアルを知らない。だから、国の、自身の
    メンツの為にやすやすと兵士を戦場へ送り出す。その兵士の
    なかから「英雄」が生まれれば、プロパガンダとして利用する
    ことが出来るのだから。

    全編が読んでいて苦しい。なかでも第5章で鷺池挙げられている
    ロイター通信の記者・カメラマンへのアメリカ軍の誤爆事件は、
    パレスチナ。ホテル砲撃事件を思い出し、暗澹たる気持ちに
    なった。

    朝鮮戦争の昔から、アメリカが介入すると碌なことがない。
    朝鮮半島は分断されたまま、イラクもアフガニスタンもいつ
    まで経っても治安が安定しない。

    そうして、心と体に深い傷を負った兵士たちと、アメリカへの
    憎しみを募らせる人々だけを増やして行くのだ。

  • このノンフィクションはかなりの衝撃。
    戦争の悲惨さをテレビなどとは違うアプローチで表現されている。
    ページ数も多く読み切るのも大変だが、読み進めるとのめり込み、凄惨さがひしひしと伝わる。
    アメリカ国内の政治利用と、現場のギャップは今も昔も変わらないのか。。

  • 戦争

  • 原題:The Good Soldiers (2009)
    著者:David Finkel (ジャーナリスト)
    訳者:古屋美登里 (翻訳家)


    【書誌情報と内容紹介】
    価格 2,300円(税別)
    発売日 2016年2月10日
    判型 四六判
    製本 上製
    頁数 384頁
    ISBN 978-4-7505-1437-6
    Cコード C0036

     2015年の話題作『帰還兵はなぜ自殺するのか』の前編、ついに翻訳!
     2007年、カンザス州フォート・ライリーを拠点にしていた第16歩兵連隊第2大隊がイラクに派遣される。勇猛な指揮官カウズラリッチ中佐は任務に邁進するが、やがて配下の兵士たちは攻撃を受けて四肢を失い、不眠に悩まされ、不意に体が震えてくる……
     ピューリツァー賞ジャーナリストが、イラク戦争に従軍したアメリカ陸軍歩兵連隊に密着。若き兵士たちが次々に破壊され殺されていく姿を、目をそらさず見つめる。兵士たちの心の病に迫った話題作『帰還兵はなぜ自殺するのか』をもしのぐ衝撃のノンフィクション!
    http://www.akishobo.com/book/detail.html?id=748


    【目次】
    目次 [002ー003]
    献辞 [005]

    第1章 007
    第2章 040
    第3章 064
    第4章 092
    第5章 119
    第6章 153
    第7章 178
    第8章 212
    第9章 247
    第10章 284
    第11章 314
    第12章 346
    第13章 379

    兵士名簿 [395ー403]
    附記 [404ー405]
    訳者あとがき(二〇一六年一月六日 古屋美登里) [406-412]

  • 戦争するって決めたエライ人が、戦場に行けばいいのだ。
    「帰還兵はなぜ自殺するのか」もいずれ読む。

  • 「兵士は戦場で何を見たのか」それは、足先のない手の指のない体から分離された頭(顔には銃弾の穴が空いていた)が浄化槽の中に浮かんでいたり、戦闘服の上に脳内の一部が零れ落ちたり、EFP(自己鍛造弾)が爆発し右腕が切断され顎が砕かれ歯が無くなり顔が引き裂かれ頭が砲塔にぶつかって割れたり、脚が大腿の真ん中あたりからなくなっていたり、ジャーナリストや民間人がアパッチ・ヘリの誤爆によって殺されたり、ハンヴィー(軍用車両)がIED(致死型の即製爆弾)によって地上数メートル吹き飛ばされたり、テロリストを射殺するところを少女に見られたりとキリがない。このように死は常態化するとともに死を免れた者は「人を殺してその後普通に生きられる奴なんていねえよ。殺されそうになってその後普通に生きられる奴を見たことあるか?人間はそんなふうにできていねえよ」のとおりPTSDに苦しめられる。PTSDに苦しめられる何十万人もの兵士の治療費のほうが、戦争自体で使われる費用より大きくなりかねないという。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。「ワシントン・ポスト」紙で23年にわたり記者として働き、2006年ピュリッツァー賞受賞。
その後イラク戦争に従軍する兵士たちを取材するために新聞社を辞めバグダッドに赴く。2009年に本作『TheGood Soldiers』を上梓。

「2016年 『兵士は戦場で何を見たのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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