月の番人

  • 亜紀書房
3.85
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本棚登録 : 499
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750517070

作品紹介・あらすじ

「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラー・リストに選出された、世界で大人気のマンガ家による、不思議で、愛おしくて、切ない、SFマンガの新境地!

オール2色刷り!


谷川俊太郎さん推薦!
「無人の月の寂寥がホントで地球の賑わいがウソみたい」



【あらすじ】

「子どもの頃、警官になって月面で暮らすことが夢だったんだ」
主人公は月のコロニーの安全を守る警察官。
しかし、過疎化が進み、事件らしい事件はなにひとつ起こらない。
最近の重大事件といえば、迷子の犬の捜索だ。
やがて住人は、彼を残してつぎつぎと地球に戻っていき、あたりは月の静寂に包まれていく。

感想・レビュー・書評

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  • 人類は一旦月に移住したものの、やっぱり地球が良くて次々と帰還していく、そんな状況を設定したディストピア小説のような絵本。
    主人公は月面移住者コミュニティの警察官という設定。
    セリフは少なめ、紺色と白の2色しか使われない、そして登場人物は常に横顔だけ描くという独特のスタイルだが、創造力を大いに掻き立てられる。

    効率化や過疎化について何度も考えさせられた。
    モジュール状のパーツを組み合わせた簡易的なつくりのマンションが、ある日突然縮小して、自分の部屋のフロアが変わってしまい、部屋からの眺めも変わってしまう場面は印象的だった。居住者の意志は無視され、合理化が優先されている。
    また、自販機が故障したり、ポンコツなセラピーロボが登場するなど、技術が中途半端で、充分なサービスが提供されない点は、まさに過疎化問題を連想させる。

    そして、最後のシーンは寂しくも美しさを感じる結末だった。主人公は月に残り続けるのだろうか?

  • コマ割り漫画風。月に駐在するお巡りさんの日常。夜色の世界が静かで落ち着く。これは月の話だけど、かつて小さな島々に住んでいた島民たちが、時代の流れで本土に移り住むさまを思い起こさせた。お茶を濁すように派遣されたセラピーロボが、どうにもポンコツでちょっと笑える。カフェのお姉さんみたいな人もいるし、いつかまた、月に移り住みたいという人は現れるんじゃないかと思う。その頃、お巡りさんは地球に戻っているかも。

  • 棒人形よりはぷっくり、シンプルな漫画。
    月での日々を紹介している話
    うーん?

    子どものころ、警察官になって月面で暮らすことが夢だった、主人公。月のコロニーを守り、日々パトロールする。
    静かな月には2人しかいなくなり、他の人はどんどん地球に移っていく、帰っていく。
    ドーナッツとコーヒーを買うスタンドがカフェになりもう1人の住民がいる。

  • こころがザワザワとさわぐ夜、この本の世界の静けさに何度も救われた。表紙を開けば現実世界のなにもかもが鎮まり、月の上の音のない平和と絶望とあたたかさが心を満たしてくれる。友人に贈るくらいにだいすきな一冊。

  • 7/5の夜。
    仕事で遅くなって1時間も取れず。そんな中手に取ったのが、トム・ゴールド『月の番人』。絵本です。
    本を開いた瞬間に、芳しいインクの香り。月が舞台で、空に広がる宇宙と散りばめられた星が目に飛び込んでくる。月で警官をつとめる主人公は、閑散とした街と、どんどん去っていく住民を見送る側にいる。コンビニが無人化し、住居ユニットがどんどん減っていき、主人公も耐えきれなくなりとうとう異動を願い出るが、受け入れられない。そんなとき、テイクアウト専門の無人ドーナツ屋がドーナツカフェに改装されることを知る。

    遅れてやってきた者の取り残された感触。警官という職業を考えれば、住人が最後の一人になってでも必要な存在。そもそも、最後の一人ってその警官自身なのでは、とも思えるけれども。人の小ささと圧倒的に大きな宇宙と閑散とした月のイメージが何度も何度も見せられ、孤独な警官を見守る我々読者までも悲観的な気分にさせる。
    でも。
    そんなステロタイプな感想をひらりとかわし、じんわりさせてくれるのが、この作品なのだろう。意外な展開に驚いたけれども、とてもすんなりと受け入れることができた。それは、我々ももしかしたら同じ選択をするかも知れなく、その可能性を見たからだろう。それでも、ちょっと現実的なところを見ると、このまま忘れ去られてしまう危険もあるので、手放しで喜べないものではあるけれども。
    トム・ゴールドの絵は淡々としていて、でも温かみがある。そして、人の顔はほぼ横顔しか描かれていない。だから、感情をはっきり見る機会がなく、半分は我々読者が補う余地を残してくれているのではないかと感じた。
    上司から派遣されるポンコツのセラピーロボットもなんの役にも立たないままに送り返されるが、段差も感知できず転んで起き上がれなくなったり、すぐに充電切れを起こすなど、お約束すぎるドジっ子ぶりを発揮し、実に愛らしい。
    月の最初の入植者の一人である老婦人による、月にあったかも知れない輝かしい未来像をおぼろげに感じつつ、本を閉じた。
    翻訳を担われた古屋美登里さんの塩加減も絶妙で、この世界観に合った、過剰さの無い、素敵なお仕事でした。

  • p74
    パーティが終わってみんなが家に帰っていくのを見てるみたいな感じだ


    ある意味、何か起きそうで何も起きていない内容。
    主人公の現在地は変わっていなくて、それは同じ場所に浮かぶ地球のよう。月を地球から見上げるように、月から地球を見上げる。
    あとがきにも書かれていましたが、横顔を多く描かれる作家らしく、表情に大きな変化はないものの色も相まって寂寥が演出されています。
    アポロに感銘を受けたのかなと思ったけど、生まれはそれ以降なので、月で暮らすという浪漫や憧れもない。だからこそ地球から移住した人々は地球に帰っていくという流れもどこか現代的に感じました。

  • なんとなく寂しい本。紺の二色刷がいい。まんがというより絵本って感じがする。個人的には一人でいてほしかった。

  • 谷川俊太郎の推薦文にホイホイされた。「無人の月の寂寥がホントで地球の賑わいがウソみたい」……。

    帯のフォントがかわいいな、と思ったら中身のフォントもおおむねこれだった。太字はまるでピクセルアートだし、絵とあいまってレトロなコンピュータゲームを思わせる。レトロでありつつ、こういったものに本として触れるのはなかなか新鮮かも。
    絵は主人公の生活と同じく代り映えのしない、ごくシンプルで表情の動きさえまったくないほどなのに、台詞の端々や小さな間から、ごく静かな哀感が伝わってくる。気づけば読んでいる自分まで息を殺して、作中の静寂を破らないようにと恐れていたみたいで、それもまた面白かった。
    時おり描かれる地球が印象的。8階の住まいから見えていた地球、4階の住まいから見えない地球、残されたたった2人で独占する地球。お互いに、相手がいるのなら悪くないと思えたんじゃないかなと。

  • 今ここにいると、パーティーが終わってみんなが帰るのを見てるような感じなんだ

    さみしさの表現が素敵だと思った

    月は美しいけれど、月から見る地球の方が美しい

    人が少ないと安心安全だけど、だれもいないのはやっぱりつまらなくてさみしい

    がんばったとき褒めてくれるひとがいてほしい

    機械のミスなら、人より許せるけれど、
    本当にすべて機械化するのがいいのかな

    効率化して、8階から4階立てになって、
    8階からの景色が見られなくなった
    大切なのは効率だけじゃないと思った

  • 主人公は月のコロニーの安全を守る警察官。
    しかし、過疎化が進み、事件らしい事件はなにひとつ起こらない。
    最近の重大事件といえば、迷子の犬の捜索だ。
    やがて住人は、彼を残してつぎつぎと地球に戻っていき、あたりは月の静寂に包まれていく。(e-honより)

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著者プロフィール

1976年、スコットランドのアバディーンシャー生まれ。漫画家、イラストレーター。彼の作品は「ガーディアン」「ニューヨーク・タイムズ」「ニュー・サイエンティスト」などに定期的に掲載される。漫画本に『ゴリアテ』『You're All Just Jealous of My Jetpack』『Baking with Kafka』などがある。家族とともにロンドンで暮らしている。

「2021年 『月の番人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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