家事は大変って気づきましたか?

著者 :
  • 亜紀書房
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本棚登録 : 428
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750517667

作品紹介・あらすじ

《村井理子さん、推薦!》

ずっと苦しかった。泣きたい気分だった。
そんな私の気持ちを受け止めてくれた一冊だ。

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──時代が変わっても、家事はラクになっていない!

なぜ家事は女性の仕事だったのか?
明治から令和まで、家事と仕事の両立を目指してきた女性たちの歴史、それぞれの時代の暮らしと流行を豊富な資料で解き明かし、家事に対する人々の意識の変遷を読みとく。

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●メディアが広げた“幸せな”性別役割分担
●「本当は自分でやるべき」に縛られる
●育児をレジャー化する「名ばかりイクメン問題」
●令和の食卓における効率化と趣味化
●一汁一菜ブームが見落とすもの……etc.

家事のモヤモヤをときほぐし、共働き時代の新しいパートナーシップのかたちを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 家事に対する人々の意識の変遷に着目して書かれた作品。
    ジェンダー観にはじまり、コロナ禍での家事に対する関わり方、丁寧な暮らしについて、過去の家事負担が現代機器によってどう変わったかなど、丁寧に説明されている。

    個人的に土井先生の本に対しての着眼点にはっとさせられた。自分には無かった発想なので読んでいて小気味よい。
    便利すぎる家電や設備によって我々は退化しているのではないか、との指摘も新しい。不便さにメリットを見出すのもまた一興だし、便利さに振り回される感覚はきっと自分がより歳をとった時に肌身に感じるのではないだろうか。
    また、家事を愛情表現と考える人は家事を人任せにして愛情を受ける側、とする考えにも納得。「愛情」とは何かも考える文章だ。
    家事や育児に対して女性側に負担を強いる社会構造そのものに意義を唱える著者の姿勢は見習いたいものがある。

    作中に読んでみたいと思った書名が満載で、今後の読書人生にいかそうとおもう。

  • ケアのもう一つの難しい点は、ケアに従事している間は細切れに時間を取られ、他の仕事への集中が難しい。ケアは、常に相手を見ていなければ十分に行き届かなくなる。そして
    長い時間を要する。食べた人が作りての思いに気づくには、食べ手が敏感でなければならない。ケアの最大の目的は相手に関心を払い、大切にすること。

  • 国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→
    https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11534747

  • 今年のベスト5の中に間違いなく入る一冊。自分は男とか女とかあまり性差を感じずに生きてきたつもりだったんだけど、社会人になって、結婚して、子供が産まれて、というライフサイクルの中で感じていた違和感の正体が見事に言語化されていて衝撃の連続だった。いろんな女性の中に無意識のレベルでまさに社会制度として組み込まれてきた今の立ち位置。世代で話が全く通じなくなる仕組みもよく分かる。自分の中のフェミニズムが呼び覚まされてしまったのか、射精責任とか、妾と妻のフェミニズムとかいろんな本を読み漁っているところ。

  • 読むのに時間を要したが、内容はほぼ毎日妻に聞かされる愚痴に酷似。つまり、これまで愚痴と感じていたことが、心からの訴えであったと理解できた。まずは自分の得意な家事からやっていこうと思う。

  • 367.21/ア

  • もうひとつ。
    私の興味外だった。

  •  小説家の滝口悠生さんにポッドキャストでおすすめいただいて読んだ。家事について改めて議題設定して、一つ一つ丁寧に議論している1冊でとても勉強になった。女性が家事を担っているケースが大半なので男性が家事をしない問題についてクリティカルなワードでビシバシとエグられるので自分としては一生懸命取り組んでいるつもりでもまだまだ甘いところもあると気付かされた。
     家事に関する書籍では、時短などのHow toやエッセイなどが主流だと思うが、本著は定性的そして定量的に家事を考察している点が一番興味深かった。料理本、片付け本などの歴史や具体的な統計の数値を駆使しながら、家事が大変にも関わらず現在まで軽視され女性に一方的に押し付けられてきたか語られている。性別による役割分担で成長を遂げた時代を忘れられない人が多いし、その姿を見て育った人も刷り込みで当然だと思ってしまう部分もあり抜本的に何かを変えるのは難しく感じた。各当事者が当たり前を更新していくことで社会が変わっていくことを期待したい。(遠い目)
     特に「名前のない家事」という概念が衝撃だった。「風呂掃除」「昼食作り」のように決まったフレームの中で取り進めて完了する家事ではなく、「買ってきた野菜を冷蔵庫に入れる」「肉や米を小分けにして冷凍保存する」「洗剤を詰め替える」といった生活する中でフローのように存在する家事の多くを女性が担当しているケースが多い。結果、分担がイーブンに見えたとしても女性の負担が多いというのはぐうの音も出なかった。気づいたら対応しているけど、気づくかどうかはシステム化されてなくて自分次第なので、これからは意識していきたい。
     また個人的に気になっていた一汁一菜についても取り上げられていた。食事を作るハードルを下げる意味で機能はしているが、土井善晴本人の意図としては手作りかつ母の愛情といった旧来然とした家的な価値観のアプローチらしく、そこでギャップが出た話はオモシロかった。著者も食事の重要性については主張しており、食べたいものを料理をすることで自分の家事に対する主体性を取り戻す話が興味深かった。自分も一汁一菜というより食事を楽しみたい勢なので、そう考える自分が積極的に菜を作らねば…とも思った。
     近年話題のケアについても家事の観点から1章丸ごと使って語られている。フェミニズム、資本主義、家父長制などの社会的背景と家事を踏まえながらケアの必要性を説いており、中でも以下のラインが刺さった。

    *無駄な時間や労力を使わないことは、一般的なビジネスの場では生産性が高いと評価されるが、ケアで時間を惜しめば十分な目的を果たせない。なぜなら、ケアの最大の目的は、相手に関心を払い大切にすることだから。それはつまり、愛である。「生産性の高い愛」なんて要求したら、恋人は怒って去ってしまいそうだ。*

     一事が万事、家事に対する主体性を持つことが何よりも重要だという主張で至極真っ当だと思う。終盤にかけては著者から見た問題点がつるべ打ちされ強い言葉で現状について疑問を呈していた。各人の努力も必要だけど、それには限界がありシステムの変化こそが最大の解決策なのは間違いない。今の政権のままでは社会構造は何も変わらないので選挙に行って自分の意思を示す必要がある。現状維持していても明るい未来は絶対来ないから。

  • 家事やケアが女性に押し付けられてきた歴史や社会構造を紐とき、あるべきパートナーシップのかたちを展望。
    男性の意識改革をはじめ、社会的な状況の改善には前途多難だと思ったが、個人的には、家事をシェアしていく上でのヒントや他山の石となるような話がいろいろあり、参考になった。
    既発表の文章を複数収録しているということもあるかもしれないが、本書の構成としては、同じような話が何回も出てきたり、内容があっちへ行ったりこっちへ行ったりという感じで、ちょっと読みづらかった。

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著者プロフィール

作家・生活史研究家。1968年兵庫県生まれ。食のトレンドと生活史、ジェンダー、写真などのジャンルで執筆。
著書に『日本外食全史』『家事は大変って気づきましたか?』(以上、亜紀書房)、『ラクしておいしい令和のごはん革命』(主婦の友社)、『昭和育ちのおいしい記憶』『うちのご飯の60年 祖母・母・娘の食卓』『「和食」って何?』『昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年』(以上、筑摩書房)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)、『料理は女の義務ですか』『小林カツ代と栗原はるみ』(以上、新潮社)、『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』(NHK出版)など。

「2023年 『大胆推理! ケンミン食のなぜ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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