大きな嘘とだまされたい人たち

  • あすなろ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751531587

作品紹介・あらすじ

なぜ、人は大きな嘘にだまされてしまうのか?スターリン、ヒトラー、トランプ…いつの時代も嘘を活用する為政者がいた。歴史上の様々な嘘を検証。正しい判断をするための1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 軽快な語り口で、過去から現在までのさまざまな嘘が次々に暴かれていく。
    誰にでも「信じたい現実」や「自分なりの正しさ」があり、それは時として真実より強く、大切だ。
    自分と同じ嘘をつく人を見かけたら、のめりこむ前に、その人が嘘をつく理由や、嘘によって引き起こされる結果に思いをはせる力が、この世を楽しく生きるために必要な能力なのかもと思った。

  • 人間は、本能的にうそをつく・人は、真実であってほしいことをすぐに信じる・嘘は、繰り返せば真実となる・嘘には3種類ある。嘘と大嘘と統計だ・嘘は大きければ大きいほど大勢の人を惹きつける<以上は腰巻きから><以下はコラムを除く本文のゴシック部分だが、読むべきは●のみ○はアクセントのため>~●子どもは、言葉と理性が発達するにつれて、嘘をつく能力を身につける●真実が不快な場合は、嘘をつくほうが好ましいように思える。だがこれは、嘘つきにつけいる隙を与えることにもなる●政治家はほぼ全員、程度の差はあるが、嘘をつく。とくに独裁者は、独裁政権を正当化するために「嘘の真実」をでっちあげる●遅かれ早かれ、真実は表に出る。しかし熟練の嘘つきは、明日のことは考えず、今日をしのぐために嘘をつく。「だます側がだましたことを認めたくないように、だまされている側もだまされたことを認めたくない」ことを知っているので、今日さえしのげればいい●これまでも大きな嘘をつく人々はつねに、嘘を織りまぜた話をさりげなく広める方法を探してきた。ソーシャルメディアの登場により、現代ではそれがおそろしいくらい簡単にできるようになった●わざわざ言葉にすることはまずないが、我々は今も啓蒙思想を信じている。だがいっぽうで、驚くべきことに、いまだに啓蒙思想を敵視する人々もいる●啓蒙思想から取り残された人々に、「啓蒙思想の前提がまちがっている」と思いこませ、偏見を抱かされるのは簡単だ。皮肉なことに、偏見を押しつける側の人々は、押しつけられる側とは対照的に、金持ちで社会的に成功していることが多い○科学を否定する人は-ダーウィンの進化論や、炭素排出量が気候に悪影響を与えているという事実や、すでに証明されているワクチンの効果を否定する人は-啓蒙思想を拒否していいることになる○こういった陰謀論は過去の話だと思うかも知れないが、陰謀論は定期的に再浮上している○嘘つきたちは最近、「アメリカ政府は1860年代に消滅し、以来アメリカはずっとイルミナティは動かされている」などと言いだした。だがイルミナティを本気で信じている者など、ほとんどいない。イルミナティは一種の娯楽のようなものだ。とはいえ、より大がかりで、より悪質な嘘の土台となる、ささいな嘘の一つでもある●科学の強みは、ある説がまちがっている可能性を視野に入れ、疑いつづけるという姿勢だ。つねに疑い、つねに検証を重ねるからこそ、化学的思考は嘘に対抗する最強の武器となる○自然の法則は、人間の行動や信念にかかわらず、つねに同じように機能する。健康か病気かどうかを決めるのは神ではなく細菌であり、細菌の働きは予測可能なので撃退できる○科学を否定し、軽蔑する人の大多数は、「無視する科学」と「利用する科学」を使いわけている●進化論は原罪にいたるまで一部のキリスト教徒の反感を買っているが、ダーウィン自身は進化論の構想を練っていたころ、英国国教会の聖職者を目指していた○ガリレオはコペルニクスとはちがって尊大で、敵を作りやすかった。聖書のことも尊重せず、聖書が数理科学と矛盾するなら書き換えるべきだ、と言い放った。「聖書は天国に行く方法を教えてくれるが、天国のしくみについては教えてくれない」などと、ジョークまで飛ばした○科学を否定する人々はニュートンやアインシュタインに反論するだけの知識を持ち合わせていないが、ダーウィンの本なら読める○この手の反論は、デマゴーグ(民衆を扇動する政治家)や陰謀論者に活躍の場を与え、もはや事実など関係ない嘘の文化を生んでしまう。いっさいしょうめいしなくていいのなら、まさになんでもありだ。○世界屈指の理論物理学者スティーブン・ホーキング博士は「科学と宗教は、同じ疑問に答えようとしている」と述べた○実際、科学はきちんと理解するより、頭ごなしに否定するほうが、はるかに簡単だ○嘘をつくのは、嘘に反論するより手間がかからない。事実を確認するファクトチェッカーは、つねに奮闘している○魔女だと告発された女性の中には、身体を縛られ、冷たい水に投げ込まれた者もいた。そのまま溺死すれば無罪。しかし浮かび上がったら魔女と確定され、火あぶりの刑に処された○しかし「告発された女性たちは、陰謀をたくらむ魔女である」という大前提に疑問が投げかけられることはなく、いっさい検証されなかった○痙攣した二人の少女は、自分たちに妖術をかけた魔女を名指しし、村の偉い人々を満足させた。少女たちが魔女に選んだのは、村の中で一番立場が弱く、反撃しそうにない三人の女性だった○のちに魔女裁判は違法と裁定され、1711年、被害者たちの相続人に賠償金が支払われた○憎悪する者がいるとこにでは、どこであろうと、ユダヤ人が標的にされる。歴史上、今のように偏見の気運が高まるときは、反ユダヤ主義の波も高まる。反ユダヤ主義は、偏見の最たる例だ○啓蒙運動やフランス革命で生活が向上しなかったフランス市民は、無力感を味わい、自分たちの権力をだれが奪ったのかと考えるようになった。しかし実際には、市民が権力を持ったことなど一度もなかった○ドレフュス事件は、良質なミステリー小説よりも驚きの展開を見せることになる○皮肉なことに「ユダヤ人がドイツに軍事機密を漏洩した」という告発で始まったドレフュス事件は、「反ユダヤ主義の反ドレフュス派がドイツ側につく」事態へとつながっていく○「ユダヤ人はフランスを破壊すべく、陰謀を企てている」という嘘は生き続けた。宗教改革のリーダー、マルティン・ルターは嘘を雪玉にたとえ、転がせば転がすほど大きくなると言ったが、この嘘はその典型例になる○『シオン賢者の議定書』は、科学、平等主義、報道の自由を否定する典型的な反啓蒙主義に、「すべてユダヤ人が悪い」というひねりを加えたものだ○当時、デトロイト在住のユダヤ人の間で、こんなジョークが流行った-ある占い師がフォードに「あなたは、ユダヤ教の祭日に死ぬ」と予言した。「どの祭日です?」とたずねたフォードに、占い師は答えた。「ミスター・フォード、あなたが死ねば、その日がユダヤ教の祭日になるのですよ」○ヨーロッパ人は数世紀にわたって、勝手に武力衝突を繰り返し、勝手に自滅してきたのに、すべて「ユダヤ人のせい」にした。これはアドルフ・ヒトラーにとって実に好都合な陰謀論で、ヒトラーはそれを最大限に利用した●嘘ばかり繰り返させると、人々は感覚が麻痺してきて、真実を探すのをやめてしまう●嘘をつく政府の常套手段の一つは、歴史を書き換えるとこと。実際に起きたことをなかったことにし、起きなかったことを起きたことにすることだ。スターリンは、まさにその通り、意図的に歴史を書き換えた○視察に備え、収容所の庭には花が植えられ、建物はペンキを塗りかえられ、さらに飾られて、赤十字社の視察団のために色々なイベントが催された。だが視察団が去ったあと、収容所は大虐殺という仕事を再開した○ジャーナリストたちは、放射能に汚染された土が靴につかないよう、靴を特殊なカバーで覆わなければならなかった。しかも視察中は放射能測定を持った男たちがついてまわり、記念品の持ち出しはいっさいやめろと警告された○米西戦争も、ベトナム戦争も、イラク戦争もすべて嘘から始まった。なかでも一時期ヨーロッパの大半を征服したナポレオンは、見事なまでに嘘をつき続けた○ウィリアム・ランドルフ・ハーストが発行する『ニューヨーク・ジャーナル』紙に駆り立てられ、どの新聞もこの米西戦争についてさかんに嘘を流すようになり、こうして「フェイクニュース」(嘘のニュース)というフレーズが誕生した。『セントポール・グローブ』紙は、紙面一面に「戦争のフェイクニュースは掲載せず」というモットーを載せたほどである○「国家安全保障上の利益」のために『嘘』は許されるのか。これは、つねに議論の的となっている。もし「
    政府は秘密を守る必要があり、その権利もある」と認めるならば、それは「政府は時として嘘をつく」と認めることになる○パウエルの言う通り、指導者にとって「嘘を嗅ぎつける直感」は欠かせない○近代の戦争では、民間人が危険にさらされる。第二次世界大戦を皮切りに、ほぼすべての戦争で、戦闘員よりも民間人のほうが多く犠牲になっている○数多くの陰謀論と同じく、「月面着陸は嘘」という陰謀論も、科学を無視している●その最終的な目的は、大混乱を引きおこし、民衆に真実と嘘を見分ける努力をあきらめさせることである●嘘だとしめす大量の証拠があっても、すべての人を納得させることはできない。なかには、嘘だと主張することで満足している人もいる○「印刷物によるプロパガンダ(主義や思想の宣伝)の激増」と「ラジオの発展」の間のどこかで、大きな嘘の性質が変わった○ジョージ・オーウェルも『1984年』の中で、「党は民衆に、自分の目で見て、自分の耳で聞いたことを拒絶せよ、と命じた」と書いている○「ラジオがなければ、我々が権力を握ったり、権力を今のように利用したりすることはできなかっただろう」とゲッペルスは語っている○「今ほど嘘が横行している時代はない。嘘がここまで厚かましく、組織的に、絶え間なく流された時代はない」-コレイが非難したのはラジオだが、まるで現代人がソーシャルメディアに文句を言っているみたいだ○電話をかけてきたリスナーとのおしゃべりのみで構成されるラジオトーク番組は爆発的にヒットし、後のソーシャルメディアにおける嘘の文化の土台なった○ザッカーバーグはハーバード大学の学生時代に、女子学生の容姿を格付けするという、かなり失礼な『Facenash.com』というサイトを作り、大ひんしゅくを買った。その後の2004年に、SNS,フェイスブックを立ち上げた○ウィキペディアに書かれた内容の誤りは、意図的な嘘と言うより、単純ミスであることが多い。しかし誤った内容でも、すぐにそれは事実となる。論文や報道発表が一般的にウィキペディアを出典として認めていないのは、正しい判断だ○中国政府は2018年までに、3億4900万台の監視カメラを設置した。これは、アメリカの監視カメラの実に5倍の数にあたる。さらにその後もずっと、中国の監視カメラの数は増えている○ころころと名前を変えても、ロシアの秘密警察のアプローチとテクニックは不変で、嘘の威力に対する意識も変わらない。その意識とは「政府が偽の種をまけばまくほど、世間は惑わされて混乱する」というものだ○フェイスブックは2017年に、「過去二年間の大統領選挙期間中に、フェイスブックのアメリカ人ユーザーの約三分の一にあたる1億2600万人が、知らないうちにロシアのプロパガンダをフェイスブックで読んでいた」ことを認めた○ボットにだまされ、恥ずかしい思いをした人は、主要メディアでさえだまされると知って、安心するにちがいない●たいていの嘘は真実よりも刺激的なので、マスコミも「嘘が引き起こした大騒ぎ」ばかりを報道するようになる。その結果、2016年の大統領選挙戦では、「各候補者の政治思想」に関する報道は、全報道のわずか10パーセントにすぎなかった○019年に『サイエンス』誌に掲載された、ニール・グリンバーグや多の社会科学者たちの調査によると、ツイッターのフェイスブックニュースの80パーセントに影響を受けたのは、ツイッターのユーザーのわずか1パーセントんじあたる、主に保守的な有権者たちだった○だが「アメリカで広まった嘘の情報源は、すべてロシアだ」と決めつけるのは、これまた典型的な嘘だ。いかにもアメリカらしい国産の嘘も、山ほどある。○Qはリスクを負って機密情報をリークしている。まちがっていると証明されても、そんなのは大したことじゃない。すくなくとも退屈な情報ではない。だからこそ、Qは注目を浴びている●マスコミを「民衆の敵」と呼ぶのも、デマゴーグ(民衆を扇動する政治家)の古典的な戦略だ。「民衆の敵」というフレーズは、レーニンがよく使っていた○ナチ党の宣伝大臣のゲッペルスが1945年に自害したあと、ゲッペルスの日記には、プロパガンダと同じく、嘘八百が並べてあったことが判明した。ゲッペルスは同時代の大衆だけでなく、自分自身にも嘘をつき、後世の人々にも嘘を残そうとしたのだった○二枚の写真は、写真家に鑑定してもらうこととなった。一人目の写真家は捏造だと鑑定したが、二人目の写真家は本物だと鑑定した○話を捏造した動機は、ずばり“金”だった。ハリスを始めとするフェイクニュースの発信者たちが、「クリントンを応援し、トランプを攻撃してもかまわなかったが、それだとあまり儲からない」と語っている○写真の加工技術は急速に向上しているが、偽造写真による詐欺を摘発する科学捜査の技術も、日々進歩している○セレブのホームページに嘘の主張を投稿すると、嘘の主張より目立たせ、嘘を広めることができる。そのセレブがアドレノクロムを使った証拠はないし、これまで実際にアドレノクロムを採取したというヒトする藍内が、それでも嘘の拡散は止められない。●しかしここまでバカげた中傷になると、まともに否定したらそれこそバカに見えるので、防ぎようがない。まともに否定したら、バカげた嘘を認識し、相手にしていると認めることになり、かえって嘘に信憑性を与えてしまう●事実という縛りがなくなったとたん-あるいは「情報が完全にそろっていない」とき-作り話は驚異的に早く、驚異的に長い期間、驚異的に遠くまで拡散しうる○血圧の上昇は「意識的にだましているかどうかを測る、ぜったい確実な検査方法である」と、マーストンは主張した。これは、嘘発見器の基本原理でもある●特定の主張をする団体は、そうすることでどんな利益を得られるのか? つねにそれを考えてほしい。嘘にはたいてい動機があり、その動機は見つけやすい○紀元前500年ごろ、中国の春秋戦国時代の兵法家、孫武は『孫子』の中で「敵を混乱させよ」と説いている。嘘による混乱は、権力をにぎるチャンスともなる○ソーシャルメディアの創設者たちは、誰でも参加できる意見交換において、言論の自由をいっさい制約しないと約束した。しかしソーシャルメディアは、情報空間に実体のない人々が集まっているにすぎない●科学的方法とは、この説は正しいはずとか、まちがっているはずとか、そういう前提には立たない。ただ、その説に可能性があることだけを認め、そこからあらゆる方法を使って説を検証し、正しいかまちがっているかを見極める。すべての検証が、同じ答えや結論にたどりついているか? もしそうであれば、その説は正しいのかもしれない●「情報というものは、インターネットですばやく簡単に手に入る」というのは大嘘だ。まともな情報を手に入れたければ、ゆっくり慎重に調べるしかない。インターネットを利用すれば、埃っぽい保管所で一つ一つ資料をめるくより、正確に早くたどりつけるかもしれないが、やはりそれなりの手順をふむ必要がある。クリティカル・シンキング-物事を客観的に分析し、正確に理解すること-とは、前提を疑うだけでなく、真実をつきとめることも意味している○ホームズ判事の徴兵制に対する判決は、現代では賛成しない人のほうが多いかもしれない。しかしその人たちも、混みあった劇場で火事でもないのに「火事だ!」と大声で嘘をついて、観客が出口に殺到するような危険な事態を招くのは-ソーシャルメディアで連邦議会議事堂襲撃をほのめかし、実際に5人の死者が出たのと同じように-憲法で認められた言論の自由にはあたらない、という意見には、誰もが賛成するだろう~アクセントを入れるために字体を変えないでほしいけど、退屈に感じる部分も多いから仕方ないかな

  • 第108回アワヒニビブリオバトル「年越しビブリオバトル2023→2024」で紹介された本です。4ゲーム目。オンライン開催。
    2023.12.31

  • なんか期待していたのと違った。歴史上の様々な嘘を羅列しているだけで、深みのある考察が全くされていない。知らないエピソードもあり、それは勉強になったが、まあそれだけ。

  • AI全盛期の世の中には嘘を暴く能力は必須である。たいていの戦争は嘘の上に成り立っている。平和のために私達ができることは見たこときいたことを鵜呑みにせずまずは自分の頭で考えることだ。魔女狩りの話からトランプに至るまで過去のいろんな事例を掲載している。身近な事例で考えるとより理解が深まることだろう。

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著者プロフィール

マーク・カーランスキーはアメリカのコネチカット州ハートフォードで生まれ育ち、マイアミ、フィラデルフィア、パリ、メキシコなどを拠点にジャーナリストとして活動した後、1992年に「A Continent of Islands」で作家デビューした。その後、1998年に「鱈 世界を変えた魚の歴史」でジェームス・ピアード賞を受賞し、15カ国以上に翻訳され、(日本では飛鳥新社から刊行されている)世界的なベストセラーになった。

「2023年 『サーモン ―人と鮭の物語—』 で使われていた紹介文から引用しています。」

マーク・カーランスキーの作品

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