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- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784753102402
作品紹介・あらすじ
ミナマタ:ジェノサイドから「存在」の現れへ
九州の不知火海全域を巻き込んだ水俣病が1956年に公式確認されてから来年で半世紀になろうとしています。昨年10月に「水俣病関西訴訟」の最高裁の判決が出ましたが、その後未認定の水俣病者から認定申請が相次いでおり、水俣病はまだ終わっていません。
本書はこの水俣病の50年の歴史をふまえつつ、この問題を戦後日本の政治構造のなかに位置づけようという画期的な試みです。フーコー以来、近代社会における〈生政治〉が指摘されてきましたが、近年では、ジョルジョ・アガンベンによって〈剥き出しの生〉として形象化されています。不知火海全域で10万~30万ともいわれる発症は、アウシュヴィッツ、ヒロシマ、ナガサキにならぶミナマタというジェノサイドで、まさに〈生政治的現実〉です。この現実を生き抜いてきた一人の漁師の極限思考から、著者は「存在」が現れる「新しい人間像」を描いていきます。法理から言えば、チッソと行政の「加害責任」は問わなければならない。しかし、人間のこととしての水俣病という地平に立つとき、加害と被害の別は溶け合って灰色の領域を構成する。この出口なしの八方塞りのグレイゾーンに踏みとどまって、これを内破する身体の運動こそが「新しい人間」としての生を踏み出すことができる。他者を支配する権力位置を離脱して、あるがままの人間として肩を並べて加害と被害のグレイゾーンを突破していく企て:「課題責任」。ここに〈生政治〉を乗り越える可能性を見出しています。