陰謀のスペクタクル 〈覚醒〉をめぐる映画論的考察

著者 :
  • 以文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753102983

作品紹介・あらすじ

なぜ、陰謀論は消えないのか?

世界的な新自由主義政策の席巻のもと、その裏面として多くの陰謀論が蔓延る現在、陰謀論的な言説・作品の限界およびその可能性を原理的=映画論的に考察し、さまざまな形に姿を変えながら広まる「シニシズムの物語」の戦略を徹底的に読み砕く。映画・アメリカ・民主主義・市場への根源的分析から「闘争の時代」の幕開けを告げる、新しい時代の批評の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 確認先:品川区立大崎図書館

    巷に存在する陰謀論。その陰謀論を「単なる妄想」と切り捨てるのはたやすい。特にアカデミシャンや陰謀論のバックヤードに存在する問題の基礎知識を有する人にその傾向が見て取れる。

    吉本が本書で指摘するのは、そうした切捨ての行為が陰謀論の存続と延命を幇助する結果になっていることに自覚するべきであろうという指摘である。換言すれば「陰謀論を否定することそれ自体が陰謀論に回収される」というメカニズムなのである。吉本はそれを説明するために『JFK』などといった映画をツールに、そうした映画に寄せられたさまざまな批評の言説それ自体を陰謀論が転用するタームに捉えなおすことによって、陰謀論がなぜ持続し、一定の支持を得てしまうのかについて逆説的な説明を試みている。

    この試みは、ある部分では成功している。というのも、吉本が援用するアメリカ映画は映画批評の現場では酷評の憂き目に会った作品、それも「あてずっぽうな」酷評を受けた映画が中心にすえられている。つまり、その「あてずっぽう」な酷評の出所として位置づけられている陰謀論を丹念に因数分解した、ということなのである。
    もちろん、この試みはアメリカ映画の文法に多大に影響されており、欧州映画やボリウッド、あるいは映画で無いもの(例:お笑いの舞台、テレビのセット、脚本家の脳みそなど)といった影響はあるが自我の強い文法たちにはどのように転じるのかという課題は指摘せざるを得ないだろう。

    とにもかくにも、陰謀論とどのように付き合うのかという冷静にして当たり前の問いに真摯に答える、という最低限の知の営みを放棄しやすい地の存在とは何か―評者はおそらく数日、この問いに悶々とすることは決定である。

  • さらっと読んでしまったが、重要な話が含まれていた気がする。とりあえず挙がってた映画を見てみるか。

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著者プロフィール

1961年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で修士号(テレビ・映画研究)、同大学サンディエゴ校で博士号(比較文学)を取得。
ニューヨーク大学東アジア学科准教授を経て、現在、早稲田大学国際学術院教授。
著書にKurosawa: Film Studies and Japanese Cinema(Duke University Press, 2000)、『イメージの帝国/映画の終り』(以文社、2007年)。
マサオ・ミヨシとの共著に『抵抗の場へ――あらゆる境界を越えるためにマサオ・ミヨシ自らを語る』(洛北出版、2007年)

「2012年 『陰謀のスペクタクル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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