近代の〈物神事実〉崇拝について ―ならびに「聖像衝突」

  • 以文社
3.17
  • (2)
  • (0)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 108
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753103423

作品紹介・あらすじ

「事実」とは何か? 「物神」とは何か? そして、なぜ聖像/偶像は破壊されるのか? こうした認識の根本的なテーマをめぐって、本書の著者ブリュノ(ブルーノ)・ラトゥールは、「事実」と「物神」を区別する西洋近代の存在論をフェティシズムにまつわる概念を用いて、批判的に検討する。
 そして、白人宣教師と黒人物神崇拝者の植民地状況下における歴史的な出会いや9.11の貿易センタービルの崩壊といった現代的な出来事を通じて、いかに近代人が「物神」とその「破壊」に囚われていたかを明らかにして、「憎悪と狂信の考古学」を描出する。
 ラトゥールの著作はすでに日本では紹介されているが、本書は難解とされるラトゥールの方法論が簡潔に展開されており、科学論や文化人類学という多面的な読者へのまとまった案内書でもある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  中盤のニコチン中毒者の話に引き込まれた。ニコチン中毒者がたばこをやめるために、持っているたばこを切り刻むシーンが描かれているのだが、自分もそれに近い経験があったので印象に残った。物に対する依存を断ち切り、真の自由を手に入れる、こんな現代人の考えがいかに幻想であるかということを思わされる。我々は物によって生かされている、そんな考えをもつことが大事なのだと思った。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

人間・非人間に拘らず、あらゆる物理的・抽象的・概念的存在を行為者と見做し、無数の行為者の関係としてのこの世界の構築的・被構築的性質を捉えようとしたフランスの哲学者。科学と政治の関係を問い、両者を分離して制御しようとした近代特有の構造では捉え切れないものとして、地球環境問題に注目した。主な邦訳文献として『ラボラトリー・ライフ――科学的事実の構築』(スティーヴ・ウールガーとの共著、立石裕二/森下翔監訳、ナカニシヤ出版)、『科学が作られているとき――人類学的考察』(川崎勝/紀代志訳、産業図書)、『虚構の「近代」――科学人類学は警告する』(川村久美子訳、新評論)、『科学論の実在――パンドラの希望』(川崎勝/平川秀幸訳、産業図書)、『社会的なものを組み直す――アクターネットワーク理論入門』(伊藤嘉高訳、法政大学出版局)、『近代の〈物神事実〉崇拝について――ならびに「聖像衝突」』(荒金直人訳、以文社)、『諸世界の戦争――平和はいかが?』(工藤晋訳、以文社)、『地球に降り立つ――新気候体制を生き抜くための政治』(川村久美子訳、新評論)など。

「2023年 『パストゥールあるいは微生物の戦争と平和、ならびに「非還元」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブリュノ・ラトゥールの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×