- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757120372
作品紹介・あらすじ
新しい文明への具体的な実践という趣旨によって、著者らは、1995年頃から、日本とドイツ、そしてアメリカの間に将来、互いの文化をつなぐ橋を架けるために、礎石となる石を一つ置く共創を企画してきました。その始まりが、1996年、97年の2年間にわたって日本とドイツの間でおこなわれた「場とシントピー」の会議でした。(シントピー syntopyとは異なった領域の人々が互いの領域を越えて共創をするという意味で、この会議の主催者の一人であるミュンヘン大学のペッペル教授が考えた新しい言葉です。著者たちは日本の後世の国際的な活躍を願って「場」と「共創」という言葉を国際語として定着させたいと考えています。)本書はこの運動の発展的成果でもあります。
感想・レビュー・書評
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響く言葉の多い思考をかき乱してくれる一冊。
場と共創をテーマに4人の異なる専門家が語るつくり。
前半がとくによい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
じっくりと呼んでほしい一冊。
たくさんの心に残る言葉がある。
人が一人で生きていないからこそ人として生きていることを
哲学的に、また科学的に示してくれている。
たとえば。。。
○普通名詞の特長は「1つ、2つ、3つ、4つ・・・」と足し算できることである。しかし、固有名詞を加え合わせることは出来ない。したがって、固有名詞の平均値というのモノは考えることが原理的に不可能である。つまり、「人間の平均値」という概念は頭の中でこしらえた抽象的な概念であって、現実には実在しないものである。したがって人間の平均値という実在と関係ない概念によって、人間を取り扱うことは、その段階では人間を人格的存在として認めていないということなのである。人間に統計理論を当てはめめて「計算する」ことは、人間を固有名詞として扱う代わりに、量産される品物と同様に普通名詞として取り扱い、「何個あるか」と数えることを意味する。これに対して、人間を人間として取り扱うことは、各人の心を実在するものとして取り扱うということである。「心を持った人間」とは、それぞれの絶対多様性を自己表現する存在なのである。それが人間が生きるということなのである。
とか・・・
場を人が共創するとは・・・・
○共同体とは、個としての生命体が1つの場所に集まって、その場所を「身体」とする集合体のことである。この場所に宿る生命のことを「共同体の生命」と呼ぶことにする。一人の人間は、細胞という多数の個が作る共同体である。そして細胞の集まりである固体には「固体としての生命」がある。これと同様に(人間という固体から見たときに)その集まりである社会的共同体が成立している場所(共同体の「身体」)にはその場所全体に偏在して宿る共同体の生命がある。
なんて感覚なのだそうだ。
また、こんな感覚もピンと来る。
○・・・コンピューターとか人工生命には、この「自己の自覚」能力はない。この「自己の自覚」とは、「空間的には場所の”ここ”に、時間的には場所の歴史の”いま”現在に、自分が実在している」という自覚である。
まさに、それこそが、人間というか、生命体とコンピューターが相いれない境界であると思うのです。
そしてまた、あり方としての言葉もある。
○共創のリーダーは、目に直接的に見えない暗在的な場所において、渾身の力を振るって働いていなければならない。そのために暗在的な面では常に人々より数歩先を歩いて人々をリードしながら、明在的な面(共創の場)では人々より一歩後から歩いて殿(しんがり)を務める。リーダーは共創に対して全責任を負い、たとえ自分ひとりになっても責任を全うするために、身を捨てて共創に臨んでいる。そのためにその徹底した日常的態度から人々は精神的な影響を受けるのである。
大きな困難にぶつかったときに、人々は思わずリーダーの顔を眺めて、その言葉を聞き漏らすまいと耳を傾ける。その時に、人々に「なるほど」と思わせる判断を示すことが出来るかどうかが共創のリーダーに求められる資格である。もしも、人々が「なるほど」と思えば、共創のエネルギーが強まり、それに失敗すれば低下してしまう。常に「なるほど」と思わせる判断が出来るということは、常に心が決定(けつじょう)しているために慌てないということである。常に超越的な場所にいることは、常に孤独であるということである。しかしこの孤独から心の決定は生まれてくるのである。リーダーの大切な資格のひとつは孤独に耐えることである。
孤独とは、とても客観的な極地なのかもすれないと思うのです。
そして、「生命コミュニケーション」や介護ロボットの開発を通して「コミュニカビリティーと共生成」といった科学的分析視点からの共創を教えてくれる。なるほどと思う客観的な視点をくれます。
自分が自分であることと、成長は人の間にあることを実感させてくれる一冊です。