トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ (NTT出版ライブラリーレゾナント) (NTT出版ライブラリーレゾナント 35)

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  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757160187

作品紹介・あらすじ

"専門家にお任せ"から"社会との対話"へ。科学技術が答えられない問題にどう取り組むか。市民との協働の可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 情けないことに、iCemsでやっていることや、WWViewなど、
    身の回りでの情報はなかなか繋がらなかったのだが、ようやく繋がった。

    科学と社会のコミュニケーションというよりかは、
    社会における合意形成の技術と僕には読める。

    とても広大なフロンティアが広がっていることを感じて興奮する。

  • ☆トランス・サイエンスとは、科学と政治(社会)の交錯する領域のこと。
    トランス・サイエンスは、ワインバーグが展開した。日本では、柴谷篤弘が注目。
    素人と専門家によるデンマーク型のコンセンサス会議が重要。
    北海道では、2006,2007年にかけて、遺伝子組み換え作物の栽培等に関するコンセンサス会議が開催された。しかし、推進派の農家サイドと慎重派の対立、両論併記に終わったような気がする。参加者の意識変化や社会行動の変化について調べた事例はないのか。

  • 『文献渉猟2007』より。

  • 1701円購入2011-06-29

  • 紹介されているトランス・サイエンスの具体的な事例より、筆者が依拠している理論や概念に興味を持って読んだ。社会の中の科学技術は、科学技術と社会の領域が重なる部分を分析の対象していると解した。筆者は「科学技術のシビリアン・コントロール」(p.12)という言葉でその視座を設定している。これら二つの単語の守備範囲は今日では極めて広く、ゆえに利害関係に基づく様々な解釈や行動に発展し交錯する。本書ではそうした事象をルポ的に取り上げている。

    発刊から9年が経ち、示された事例が必ずしも定着するケースばかりでないことを感じた。例えば、サイエンスショップは一般に理解が得られずに、いつの間にか誰も語ったり企てたりすることがなくなった印象を持っている。他方サイエンスカフェはそれなりに根付いたといえるかもしれない。(例: http://www.scj.go.jp/ja/event/cafe.html )また、1章で紹介されている科学技術コミュニケーションに関連する大学・大学院のプログラムも、補助金の交付期間が終わり、当時の華々しさは感じられない。伝統的な科学史・科学哲学の講座を持っていた(いる)体力的に余裕のある大学で、当該プログラムに相当する啓蒙活動が続いているに留まっているのではないか。科学技術コミュニケーションの主たる実践の舞台は初等中等教育機関における理科教育の場であり、多くの高等教育機関では若干の関連講義科目の開設に留まったままのように思う。以上は私の印象だ。

    しかし、そうした現況であっても、筆者が主張する科学技術コミュニケーションや、科学技術のシビリアンコントロールの必要性は変わりない。むしろ重要性は高まる一方だということに異論はないだろう。今日読んでみると、もっと公共的に議論と実践がなされるべきだったのではないかと思われる事例が一つあった。それは、原発の安全装置がすべて同時に故障したときの課題である。(もちろん、本書は東日本大震災・原発事故前に著された。)著者はワインバーグの論を引き、原発とトランス・サイエンスを説明している。(関連記事 https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/44/Snet44-column.pdf )リスクと安全性の担保の兼ね合いが「工学的判断」という「現場感覚」で処理されていることを、現代に生きる私たちは痛感した。全人間はこのことを永久に肝に銘じなければならないのである。ゆえに科学技術の啓蒙は所用のコストを払い、社会においてシステムとして持続されるべきものだといえよう。

    なお、筆者はスノーの『2つの文化と科学革命』を比較的多く引用し説明を補強している。積読状態の同書を早めに読みたくなった。

    補足:欠如モデル
    http://elekitel.jp/elekitel/special/2013/21/sp_02_c.htm

  • ―理系だから社会のことはわからない、文系だから科学のことはわからない。
    そう思っている人、いませんか?
    餅は餅屋という言葉もあるけれど、異分野を学ぶこと、自分の専門領域を領域外から眺めることで新たな発見があるはずです。

    トランス・サイエンスとは政治と科学が重なり合う領域、科学のみでは解決できない問題群からなる領域を指します。例えば原子力発電所のリスク評価。運転中の原子力発電所の安全装置がすべて故障する確率は?起こりうる災厄を考えたときにその確率は無視できるほど低いとみなすことができるのでしょうか。
    餅屋の「相場感覚」は本当に正しいのか、科学技術が高度に発達し、社会に深く根付いている今、専門家と一般人がどのように社会にはびこる問題の解決に取り組んでいくのか、そこに自分はどう関わるのか、考えてみたくなる一冊です。
    (2012ラーニング・アドバイザー/生命MATSUMOTO)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1297479&lang=ja&charset=utf8

  • 「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス

  • 久しぶりに読み返してアンダーラインをしてあった箇所を再考。
    震災以降、様々な有識者が「出現」しているが、本書は2007年の著作であり、以前からこうした見識を披瀝している著者らに耳を傾けるべきだ。

    「運転中の原子力発電所の安全装置がすべて、同時に故障した場合、深刻な事故が生じる」ということに関しては、専門家の問に意見の不一致はない。これは科学的に解答可能な問題なのである。科学が問い、科学が答えることができる。他方、「すべての安全装置が同時に故障することがあるかどうか」という問いは「トランス・サイエンス」の問いなのである

  • 小林さんは、大学四年間で好きになった先生のひとり。そしてこの本は、ひとことで言えば、科学技術が社会を見る上で外せないものになった今の、そしてこれからの時代において、双方向的な科学技術コミュニケーションや、科学技術社会論の研究の必要性を、それらが生まれた背景を明らかにしつつ説いた本。受けた授業とも重複する部分があったが、読むことで整理できた。

    日本語がちょっと変なところがけっこうあるような気もしないでもないのだが、平易でわかりやすいと思う。ときにそれ言うの何回目だよと言いたくなるほど丁寧なのだが、まあわかりやすいのに越したことはないし。

    ただ、専門用語が唐突にでてくることがいくつか。たとえばp.63のGMO。文脈から判断して遺伝子組み換え作物のことだろうなとはわかったけど。p.41でプリオンが出てくるときも変。次のページで説明はされるけど。あと、一番問題なのが、テクノロジー・アセスメントとTAが混在していること(例えば、次の引用 http://booklog.jp/quote/151815)。最初に出てきたときに、以下ではTAとする、として統一すべきじゃないかな。

    ところでp.108に大阪の大学で外国人教師がジーンズをはいた女子学生をゼミから追い出したという話があるけど、これは阪大のことだよね。なんでちょっとごまかしてるんだろ(笑)

  • 四年前の出版だが、今こそ読むべき本。
    原発を含めた最新の科学技術(と思っているもの)に対するスタンスとして参考にすべき。

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著者プロフィール

1954年生まれ。大阪大学名誉教授およびCOデザインセンター特任教授。専門は、科学哲学・科学技術社会論。東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。大阪大学理事・副学長を歴任後に現職。著書に、『誰が科学技術について考えるのか』(名古屋大学出版会)、『トランス・サイエンスの時代』(NTT出版ライブラリーレゾナント)など。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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