新宿末広亭のネタ帳

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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757215085

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  • 落語家という仕事が、寄席という場所が、新宿末廣亭のネタ帳(=寄席の「セトリ」)7年分を紐解くことで見えてくる。

    毎日20人を超える芸人が登場する寄席。よって、ひとりあたりの持ち時間はせいぜい15分といったところ。その短い出番に、誰がどんなネタを掛けたのかを淡々と書き留めたものが寄席の「ネタ帳」である。

    「我々の商売は、15分座って独り言を喋ったらそれで業務終了」とは瀧川鯉昇師のマクラだが、そのわずか15分の出番のために、落語家は「ネタ帳」でその日すでにどんなネタが掛かっているのかを確認し、噺が重複しないよう、全体の流れを損なわないよう配慮した上でみずからの高座に挑む。つまり、それなくしては寄席という場じたいが成立しないくらい重要な、いわば《羅針盤》、それが寄席にとっての「ネタ帳」なのだ。

    寄席はまた、落語家にとって大切な修練の場でもある。長い噺をエッセンスはそのままに寄席で演じられるサイズにまで刈り込む創意工夫、演じなれたネタにさらなる磨きをかけるための試行錯誤、それらは寄席という《ホーム》なくしてはなしえないと、インタビューに答える噺家たちは異口同音に語る。なかには、そうした日々の鍛錬の積み重ねから、寄席専用の「勝負」ネタを編み出した落語家も。

    寄席を出るとき、思わず「あぁ、楽しかった」と口に出るのは、芸人ひとりひとりのネタよりも、むしろ全体の流れ(グルーヴ)が気持ちよかった日であることを、この本を読みながらあらためて思い出した。

  • 新宿末広亭のネタ帳 : 新宿末広亭のネタ帳(その日出演した芸人さんが演じた演目を記した帳面)を7年分データとして集計。その分析したデータからどの演目が高座で一番かけられているかなどを読み解いている。

    データは2001年から2008年までの7年間。私自身が初めて寄席に行ったのが2001年の夏なので(末広亭ではなく浅草だったが)、ちょうど期間がぴったり合う。その間に亡くなり、懐かしくなった噺家の話もあるが、現役の噺家のインタビューも載っているし、楽屋的な話もあるので楽しめる一冊だった。

    欲をいえば、もっとネタ帳の写真を見てみたかった。でもそうなるとページ数が膨大になってしまうか・・・。

  • 365日落語が聴ける寄席。その中でも、落語協会と芸術協会が交代で出演する新宿末広亭。一体寄席ではどんなネタがかけられているのか? 志ん朝末広亭最後の十席は? 一番かけられてるネタって何? かけられてないのって何? ネタ帳の書き方って? 門外不出!のネタ帳を徹底的に調べてみた一冊!

    寄席に行ったことがない&それなのに落語ネタの小説を書こうとしている、という自分なので、この本の情報は非常に役に立つかと思います。というか実際なっていると思いたい。あとまだまだ私の知らない噺があってやっぱり勉強になりました。漫談も結構かけられているんですね寄席って。やっぱ行きたいのう。
    こうして落語を、実のある・数値化したデータで見ることってなかなか出来ないんじゃないかなあと。でも個人的には「二つ目がかけるネタ」もデータにしてほしかったです。意外とわかんないんですヨ、二つ目のネタって……。トリネタと前座ネタについては書いてあるんだけど…
    第五章はトリをよく務める真打達のインタビュー。寄席とは彼らにとってどういう場所か、そこでかけるネタについて、今後どうしていくか……そして意外と師匠についての話が多い。やっぱり落語ってつきつめていくと師弟関係になるのかなあ…となんかしみじみしてしまいました。あー私も寄席にいきたい!いきたいっ!

  • 他の定席のネタ帳データも合わせて、「落語寄席年鑑」として毎年刊行してほしい。

  • 読売新聞記者である著者が、過去7年間に寄席(末広亭)で演じられたネタを調査。多いネタや演じられていないネタはもちろんのこと、誰がどのネタを多く演じているのかなどを示している。もちろん噺家のインタビューや、面白エピソードが満載。
    第一章には「志ん朝『最後』の十日間」として、2001年二之席を解説。
    志ん朝師匠、生で聴いてみたかった。

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著者プロフィール

一九五五年、東京・江東区生まれ。読売新聞編集委員。都民寄席実行委員長。浅草芸能大賞専門審査員。「よみうり時事川柳」五代目選者。著書に『新宿末広亭のネタ帳』『使ってみたい落語の言葉』『落語と川柳』『噺家と歩く「江戸・東京」こだわり落語散歩ガイド』、編著に『落語家魂! 爆笑派・柳家権太楼の了見』など。

「2018年 『歌丸 不死鳥ひとり語り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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