うみねこのなく頃に散 Episode8:Twilight of the golden witch(6) (ガンガンコミックスJOKER)

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  • スクウェア・エニックス
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・マンガ
  • / ISBN・EAN: 9784757544970

感想・レビュー・書評

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  • 販売当日に購入、その日に読了しました。
    読み終えてどうしても感想を書きたくなったので、ネタバレ全開で行こうと思います。
    正直この巻の表紙だけでネタバレだとは思うんですけど…(笑

    Ep8、6巻にして、ミステリの王道、犯人『ベアトリーチェ』の明確な動機、境遇、犯行が明らかになる巻です。Ep7でも犯人の自供はあると言えばあるのですが、7時点での自供は、かなりファンタジックな装飾をされています。しかし今回は完全にミステリとしての世界、現実として、一切の虚飾を許していない物語となります。

    私はうみねこのゲームを全編プレイしていて、犯人も犯行も動機も一応知っていたのですが、この巻を読んでコミックスを購入し続けてよかったと改めて思いました。
    それというのも、ゲームでのこの巻にあたる明確な動機に当たるシーンは、こう…その衝撃具合を表すために、映像にして瞬間的に流れてしまう演出を取られています。それだけでもなんとなく犯行動機は理解できるのですが、それらが夏海先生の美麗な絵でじっくりと読み解けるのは本当に良かったです。

    この巻を読んで犯人『ベアトリーチェ』=『安田紗代』のホワイダニット、つまり犯行動機が本当によく理解できました。犯人はEp7での自供で「この犯行は自分にとって必然だった」という旨の事を喋っていますが、確かにこれは必然だったように思います…。彼女の運命は本当に重い。そして残酷だ。

    この巻の序盤で幼い彼女が「大好きな人の子供を産んで、家族を作りたい」というささやかな夢を語っています。それはそれは明るい表情で。天涯孤独の上、幼い頃から同世代の友人を作る環境にも恵まれず、孤独に生きていた彼女にとって、その夢はどれ程の想いだったのか。そしてその彼女が抱いた戦人への初恋がどれだけ支えになっていたのか。
    そう考えると、戦人が六年間、彼女との約束を忘れてしまっていたのは、本当に残酷な仕打ちだったと思いますね。彼の境遇を考えると仕方がないことなのだと思います。それは彼一人の責任ではないけど、それでも犯人を追いつめる大きな要因の一つとして、十分に罪深い事でもあります。
    同時に彼女は、自分自身の体の変化にも戸惑いを感じています。胸が膨らまず、初潮がこない。つまり、女としての二次性徴がこない。それは、自分の夢を叶えるための成長ができていないという事です。境遇や悩みのデリケートさから、ひとりぼっちで悩み、他人にもなかなか相談できない。
    そんな彼女が、生み出したのが、『嘉音』として生きる、男の子としての自分に逃避するという生き方でした。
    そういう逃避の仕方をしながら、彼女はようやく、朱志香との友情を深め、ベアトとして真里亞との親愛を育み、譲治との新しい恋を育んで、ぎりぎりの均衡を保ちながら、やっと幸せな場所を会得していきます。

    そしてそこへきて、興味本位で碑文を解いてしまった事による自分の出生の秘密を知ってしまう。

    自分は金蔵と、金蔵の娘の九羽鳥庵でのベアトリーチェとの近親相姦の上に生まれた子。
    つまり、譲治とは従兄弟でありながら叔母甥の関係であるわけです。その上、初恋の人、戦人が一族を去った理由は父親の浮気…、つまり、自分自身が初恋の人が嫌悪していた不義の子だと理解する。
    その上、自分が赤ん坊の頃に、夏妃に突き落とされたことで、もう子供が作れない体になっているのだと打ち明けられてしまう。

    …もうなんか、ここに書いた理由だけで犯行理由には十分すぎると思うわけですよ…。

    彼女の「こんな身体で生きていたくなんてなかった」という絶叫と、大好きな人と幸せになれないなんてうそ、という独白が本当に胸に突き刺さります。
    過酷な運命でようやく得た、ささやかな幸せからの急転直下。その絶望が彼女を狂気に走らせるには充分でした。


    …序盤だけの感想でこの量ですよ…。ちょっと長くなりそうなので、後半の感想はまた後日

  • うみねこの世界のwhyダニットが明らかに。
    魔法での装飾なく、現実世界での種明かしをどんどんしてくれる。
    原作ゲームやアニメでトリックに置いてけぼりにされた人たちには漫画を読んで欲しい。

    (ネタバレあり)
    紗音のささやかだけど子どもの頃からの大きな夢、「家族がほしい。いつか大好きな人と結婚して子供を産んで、本当の家族をつくりたい」。
    しかしその思いとは裏腹に、紗音の体には二次性徴が来ない。
    実は男の子だったという話だったと思ったら、事態はもっと複雑だった。
    今度は男の子としての人生を歩もうと嘉音を作り出す。
    ジェシカやマリアとも仲良くなり、譲治とも新しい恋をして、順調な生活を始められると思いきや・・・
    碑文の謎を解いてベアトになった紗音。
    そこで紗音が知る残酷な真実。
    戦人や譲治とも近親婚で結婚できない、そして、紗音は崖から落ちたケガで子供の作れない体になっていた・・・。
    紗音は、大好きな人と結婚することも、子どもを産むこともできないのだった・・・。

    紗音の悲惨な運命は辛すぎる…。
    紗音と嘉音のいう「自分たちは家具なんだ」という言葉の意味がこんなに重いとは。
    ジェシカが嘉音のことを気になると知った紗音。
    嬉しさとおぞましさが混然一体となって押し寄せ、譲治とジェシカに同時に愛され、紗音の心はどんどんゆがんでいく。
    真実の自分を受け入れてもらった経験がない紗音は、誰にも話すことが出来ず、どんどん心が苛まれる。
    そのような最中、6年ぶりに戦人が帰ってきて、「初恋」の紗音まで現れ、紗音の心は壊れていく。
    『しがらみだらけのこの肉の器から解放されて みんなと魂で結ばれることができたら・・・』
    ふと思った紗音の突飛な考え。
    しかし、不幸なことに、紗音にはそれを可能にする道具と手段があった・・・。

    ベアトの犯行の動機がすごく説得的。
    一家心中のことを聞いた源次が、紗音の心の痛みを知り、最期まで仕えると答えるシーンはすごく切なく、良いシーンだ。
    親族を皆殺しにしたい、だけど、大好きな人たちには生きていてほしい、という相反する感情。
    だからこそ、こんな惨劇を起こしておきながら、ベアトは「解いて欲しい」と思い、実際に解かれたら無抵抗だったのだね。
    惨劇の元凶はベアトだけど、あの惨劇を防ぐことは皆に出来たはず。
    黄金郷だからこそ、お互いの過ちを認められる。
    皆の願いは、縁寿に生きてほしい、ということ。
    whyダニットを解き明かす素晴らしい巻です。

  • 祖母や母親同様の容姿でimageが固定されているので、紗音の姿で物語が進展しているので頭がこんがらがります。
    紗音が身体の悩みで嘉音として振る舞い始めた事は衝撃でした。
    初見で似ているとは感じていましたが、いやはや。

    ベアトリーチェの一言で、縁寿はどの様な答えを出すのか。次巻が待ち遠しいです。

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