販売当日に購入、その日に読了しました。
読み終えてどうしても感想を書きたくなったので、ネタバレ全開で行こうと思います。
正直この巻の表紙だけでネタバレだとは思うんですけど…(笑
Ep8、6巻にして、ミステリの王道、犯人『ベアトリーチェ』の明確な動機、境遇、犯行が明らかになる巻です。Ep7でも犯人の自供はあると言えばあるのですが、7時点での自供は、かなりファンタジックな装飾をされています。しかし今回は完全にミステリとしての世界、現実として、一切の虚飾を許していない物語となります。
私はうみねこのゲームを全編プレイしていて、犯人も犯行も動機も一応知っていたのですが、この巻を読んでコミックスを購入し続けてよかったと改めて思いました。
それというのも、ゲームでのこの巻にあたる明確な動機に当たるシーンは、こう…その衝撃具合を表すために、映像にして瞬間的に流れてしまう演出を取られています。それだけでもなんとなく犯行動機は理解できるのですが、それらが夏海先生の美麗な絵でじっくりと読み解けるのは本当に良かったです。
この巻を読んで犯人『ベアトリーチェ』=『安田紗代』のホワイダニット、つまり犯行動機が本当によく理解できました。犯人はEp7での自供で「この犯行は自分にとって必然だった」という旨の事を喋っていますが、確かにこれは必然だったように思います…。彼女の運命は本当に重い。そして残酷だ。
この巻の序盤で幼い彼女が「大好きな人の子供を産んで、家族を作りたい」というささやかな夢を語っています。それはそれは明るい表情で。天涯孤独の上、幼い頃から同世代の友人を作る環境にも恵まれず、孤独に生きていた彼女にとって、その夢はどれ程の想いだったのか。そしてその彼女が抱いた戦人への初恋がどれだけ支えになっていたのか。
そう考えると、戦人が六年間、彼女との約束を忘れてしまっていたのは、本当に残酷な仕打ちだったと思いますね。彼の境遇を考えると仕方がないことなのだと思います。それは彼一人の責任ではないけど、それでも犯人を追いつめる大きな要因の一つとして、十分に罪深い事でもあります。
同時に彼女は、自分自身の体の変化にも戸惑いを感じています。胸が膨らまず、初潮がこない。つまり、女としての二次性徴がこない。それは、自分の夢を叶えるための成長ができていないという事です。境遇や悩みのデリケートさから、ひとりぼっちで悩み、他人にもなかなか相談できない。
そんな彼女が、生み出したのが、『嘉音』として生きる、男の子としての自分に逃避するという生き方でした。
そういう逃避の仕方をしながら、彼女はようやく、朱志香との友情を深め、ベアトとして真里亞との親愛を育み、譲治との新しい恋を育んで、ぎりぎりの均衡を保ちながら、やっと幸せな場所を会得していきます。
そしてそこへきて、興味本位で碑文を解いてしまった事による自分の出生の秘密を知ってしまう。
自分は金蔵と、金蔵の娘の九羽鳥庵でのベアトリーチェとの近親相姦の上に生まれた子。
つまり、譲治とは従兄弟でありながら叔母甥の関係であるわけです。その上、初恋の人、戦人が一族を去った理由は父親の浮気…、つまり、自分自身が初恋の人が嫌悪していた不義の子だと理解する。
その上、自分が赤ん坊の頃に、夏妃に突き落とされたことで、もう子供が作れない体になっているのだと打ち明けられてしまう。
…もうなんか、ここに書いた理由だけで犯行理由には十分すぎると思うわけですよ…。
彼女の「こんな身体で生きていたくなんてなかった」という絶叫と、大好きな人と幸せになれないなんてうそ、という独白が本当に胸に突き刺さります。
過酷な運命でようやく得た、ささやかな幸せからの急転直下。その絶望が彼女を狂気に走らせるには充分でした。
…序盤だけの感想でこの量ですよ…。ちょっと長くなりそうなので、後半の感想はまた後日