剣と魔法の世界の、社会の最下層でかろうじて生きていた少年が、ある日エルフから貰った一枚の金貨を機に、冒険者となって生きていく、という感じの導入。
丁寧な展開と、成長の仕組みがロジカルに組まれていることが興味深い作品。
◆「人間」ですらない最底辺
1話では、厳しい世界の在り様が示されます。
主人公イストファが、ろくに道具が無くても危険なく行える「薬草採集」で、かろうじて食いつなぐ様が描かれます。
街にはダンジョンがあり、冒険者になれば生活も変わる、しかしナイフを買う金すらない。
それでも腐らずひたむきに生きてきた少年が、エルフの女ステラから、一枚の金貨を受け取ることで、物語が駆動していきます。
そこで出てくる台詞がまた印象的で、「僕は お金があったから「人間」になれた 人でい続けるにはお金がいるんだ」と。
物語なのであからさまに描いているだけで、まぁ現実もそういうところあるよね、ということではあるんですが、これを13歳の少年が当たり前のこととして言っているということが、重く感じます。
◆ステラと魔力
逆光源氏計画だぁーっ!
まぁそれはいいとして、魔力周りの設定がなかなか興味深い。
「魔力が高すぎるためなのか同族同士では子供が生まれないの」
エルフ同士だと子供が生まれないということで、イストファの性質と性格を見極め、求婚するステラ。
魔力の強い存在ってどちらかというと特権階級的なイメージがあったので、魔力の強い者同士で血を濃くしていこう、という流れが一般的と認識していました。
魔力の高低差に価値があるという観点は、なんだか興味深いですね。
さらに魔力ゼロなら身体能力に成長補正がかかると。
主人公の成長しやすさにロジカルな設定がされていて、面白いですね。
上手い設定だと感じたので、これが今後どのように機能していくか楽しみです。
◆優しくて厳しい世界
初めてのダンジョンで、早速他の冒険者から洗礼を受けるイストファ。
展開が丁寧ですね。
「要は選択を誤るなという話ね あくまで私がするのは「提案」 だから決めるのは君自身よ」
後のステラのこの台詞も、とても丁寧ですよね。
それと優しい。
そして、「選択を誤ると死ぬ」とも言っているわけなので、世界はとても厳しいw
ステラと師弟関係を結んだとはいえ、次巻はまず一人で頑張るところからのようなので、世界の厳しさと生き方を学んだイストファがどう成長していくか、楽しみです。
◆余談とか
・イストファが終盤二本差しをしていて、「おぉ、洋風の武装でも二本差しってありなのか」と思いました。今まで自分が意識していなかっただけで、普通なのかな。
・まずは師弟関係からと、意外と悠長なことを言うステラ。エルフの時間感覚はわからん……。求婚に対する考え方もよくわからん。(多分違うけど)子供が作りたいだけなら、イストファ13歳だし、なんとかいけるで!(下衆)