- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757743168
感想・レビュー・書評
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箸休めに。
お話だけ見れば、山あり谷あり、非常に残酷で理不尽な相手に仲間を集めて立ち向かふといふ、まさしく武侠そのものである。それはたとへ、さるかに合戦といふ人外の物語であつても容易に崩れるものではない。
ところが彼が手がけると、驚くほどさうした物語の枠組みが自由になる。これが完全な擬人化といふものであつたなら、かうはならなかつただらう。妙に人間臭く、そして完全に人間的ではない。さうした登場人物たちが織り成すドラマは、まじめな様でどこかふぬけてゐて、ふぬけてゐるやうで実はかなりまじめだつたりする。
さるかに合戦の結末はよく聞いて知つてゐるものであつたが、それをどのやうな武侠で仕上げるかでこんなに味が変はつてくるといふところに、作家と呼ばれる存在の可能性があるのだと思ふ。
特に視覚に大きく訴える映画や漫画と呼ばれる表現方法は、元来ことばといふ読んで感じ、考へる物語の筋書を「見せる」やり方で表現しなければならない。動物や道具をそれらしく擬人化することもやり方のひとつだらう。しかし、彼はあへて完全に擬人化してゐない。限りなくひとに近い「かに」かと思へば、さるはそのままさるである。英雄的なハチかと思へば、針はそのまま針のまま。さうしたどこかアンバランスなものであつても、彼の作品はそれはそれで成り立つていけるのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伝染るんです以外に吉田戦車の作品は知らなかったが、これは話の広げ方など面白かった。キャラクタとしては栗親分が良かった。
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ぼくのかんがえたさいきょうのさるかに合戦。
馬鹿馬鹿しくも悲しい戦いに、笑っていいのか泣いたらいいのか迷ってしまう、鬼才吉田戦車の隠れた名作。