蘇我の娘の古事記

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 217
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413015

作品紹介・あらすじ

許されぬ恋、王位継承の争い…激動の時代をみずみずしく描く、書き下ろし長篇小説!

感想・レビュー・書評

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  • 飛鳥時代の朝廷を取り巻く物語。
    蘇我蝦夷に蘇我入鹿、斉明天皇、中大兄皇子、中臣鎌足…。この時代の、日本史の教科書に登場する人物名や事柄などはなんとなく覚えてはいるけれど、それぞれの関係性はあまり知らなかった、という程度の知識で読んだ。
    素直に、面白い。
    みなさん、裏で密かにこんな血みどろの駆け引きを繰り広げていたなんて。
    名声を得るためなら、血を分けた兄弟、親子、親戚なんて関係ない。裏で…なんてのは序の口で陰謀がだだ漏れしようとお構いなし。騙し騙され呪い呪われ…、と映画を観ているような展開でワクワクした。

    各章に挟まれる神話も、物語と巧くリンクされていて面白いし分かりやすい。
    兄妹の許されぬ恋なんて、なんとも雅で素敵。現代ならあり得ない設定もこの時代だからこそ。優雅な気分を存分に楽しめた。
    周防さんの作品はこれからも追いかけたい。

  • 飛鳥、蘇我、古事記と好きなもの三連コンボのご本。大元の古事記を借りようと思い検索をかけた時、引っかかったので一緒借りてみたのですが、大変面白かったです。語り部の語る古事記の話と主人公の娘の物語が交互に、しかし違和感なく紡がれています。娘の物語は歴史の裏をつく壮大なフィクションなのですが、もしかしたらこんなこともあったかもと思う物語でした。この辺りの歴史物語が好きな方にはオススメです。

  • 『高天原ーー厩戸皇子の神話』の後に読んだのでその続編として読め、「古事記」が完成されて良かったなと思えた。まぁ1300年も昔の話なので、のちに「序文」が書き加えられた経緯も”然もありなん”で面白かったし、そもそも古典文学全般にそういったことがあったのだろうに現在まで脈々と受け継がれてきたのは本当に素晴らしいことだと思う。にしても当時、渡来人の存在感て今思う以上に大きかったのだろうなぁ…私が大和和紀の名作『天の果て地の限り』を読んでいた頃より学術的研究も進んだのだろうし。おかげで近頃じゃ、中大兄皇子や大海人皇子のイメージ像が随分変わりましたよ(^^; ヤマドリとコダマの物語は美しくも哀しかったけど、古代の人々が生き生きと感じられて良かったです。また奈良に行きたくなった~。

  • この時代、何と言っても額田王。子供の頃に読んだ、大和和紀「天の果て地の限り」と里中満智子「天上の虹」で刷り込まれちゃってますw。それらに比べると、登場人物がいずれも印象薄い。それなりの物語なのになあ〜。地味な話だった。

  • 歴史物は好きでよく読むが、乙巳の変(大化の改新)から壬申の乱のあたりの話は読んだことがなかったので新鮮だった。古事記のなりたちを絡めた斬新な話ではあったが、登場人物を含めなんとなくほんのりと柔らかく、面白かった。

  • 教科書でしか知らなかった登場人物が
    いきいきとその時代を生きる。

    ヤマドリとコダマの切ない恋物語。

    1300年以上前の時代に
    壮大なロマンを思う。

  • 乙巳の変から壬申の乱と政情穏やかならざる時代を、百済人の家族の視点から描いています。仕えていた蘇我入鹿から生まれたばかりの女児を託されたことで、時代の激動に飲み込まれます。コダマが愛らしいキャラなので感情移入してしまい、物語の展開に一喜一憂します。虚実を自在に織りまぜていて、だれずに一気読みできます。古代史入門としても高校生くらいから広く手に取られるのもいいですね。

  • 雨だから1日読書。家にこもって読んだからこそ、余計に際立つ壮大さだった。物語は語り手のものであり、聞き手のものであり、両者に受け入れられたものが今に残ったのだと思う。伝えたい気持ちが、何かを残す。1000年以上も前の物語が今に残ることの素晴らしさを思う。

  • 本当に近年、古代史が熱い!
     これも思わぬ掘り出しものだった。特に奈良県出身の自分には舞台の飛鳥の里などが手に取るように分かり、自分の知る故郷の風景の中に1000年以上も前の人たちが生き生きと蘇る様が目に浮かぶようだ。

     作者の、まだ3冊目?の作品らしい。ソフトなタッチの筆致はいかにも女性らしい。『恋歌』『阿蘭陀西鶴』をものした朝井まかてか、『小さなお家』の中島京子を思い出す。

     「古事記」の謎は昔から良く聞かされていた。 国史といわれる「日本書紀」が時の天皇の勅で編まれたと伝えられるに対し、作者不詳だったり、後世の創作とされたりと諸説フンプンだった。
     中学か高校の頃に「古事記」の編者と言われる太安万侶の墓が茶畑の中から見つかったと話題にもなったものだ。あの頃は、なんでそんなに大騒ぎしてるのか、まったく理解できてなかった(後で記憶をたどると、太安万侶の実在が証明されたとかの話だった)。

     そんな多くの謎の残る「古事記」の成立譚を、本書は皇極四年(六四五)の乙巳の変(我々は大化の改新として覚えた、中大兄皇子、中臣鎌足のクーデーター)から、壬申の乱の後までの時代を通し描く。
     実在したという百済からの渡来人船恵尺とその一族、そして息子ヤマドリ、娘のコダマの生涯が、時の政変、時代の要請に翻弄されながらも朝廷の記録を司る「史」(ふひと)という立場で謎の裏国史とも言える「古事記」に深く関わっていくという筋書きだ。
     「古事記」の作者とされる稗田阿礼、太安万侶の存在すらうっちゃって自由奔放に走る筆が、実に活き活きとあの時代を描き出す。
     まさに恵尺が最初に国史に取りかかった折に語るこの言葉のように。

    「自分が求めていたのは、遠い昔からこの国に連綿としていきつづけてきた人間たちの、なまなましい喜怒哀楽の物語だ。絵空事ではない、生身の人間としての物語。」

     遠いあの時代の様子が、生々しく蘇る。

     また、章ごとに語り部が子ども時代のヤマドリ、コダマに語って聞かせる神代の物語が挿入される構成も楽しい。あぁ、まさにこうして語り継がれて、やがて「古事記」に結実していったというのが分かる仕掛けになっている。

     最終的に、稗田阿礼でもない太安万侶でもない者が「古事記(ふることぶみ)」を編むことになるのだが、その者が語る言葉が実に素敵だ;

    「私は、歴史というのは、滅びた人たちの歴史のことだと思うのよ」(中略)「そこからこぼれ落ちた人たちの歴史を、私はすくい取っていきたいの。そうでなければ、彼らの魂が消えてしまうもの」

     古代史という謎多き時代に見事に編み出された歴史フィクションだ。
     著者の前作『逢坂の六人』も是非読んでみよう。

  • 書き下ろし

     百済系渡来人「舟」氏が直面した大化の改新から壬申の乱までの激動の物語で、豪族連合のヤマト政権から天皇中心の中央集権国家に変化していく過程で否定され滅ぼされた蘇我氏の赤ん坊を、舟氏の長が極秘に救い自分の娘として育てるのだが、その盲目の娘コダマの波乱の半生記でもあり、古事記のなりたちの物語でもある。

     税吏の舟氏は、文書吏としても「大王記国記臣連伴造国造百八十部并公民等本記」(すめらみことのき・くにのき・おみむらじ・とものみやつこ・くにのみやつこ・ももあまりやそべならびにおおみたかららのもとつふみ:本文中では音読みになっているが、なつかしい!)を編纂した(と描かれる)が、盲目の娘はこれをそらんじ、聞いた神々の説話を結びつけて生き生きとした物語として語るようになる。

     史学概論の最初の講義で「歴史」を意味するドイツ語には”Geschichte”(記録されたできごと)と”Historie”(物語られた歴史)があると教わったが、さしずめ後者としての古事記の成立を、物語を担った人々の人生に想いを寄せて描いてみせた著者の視点に、なるほどとうなずかされる。

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著者プロフィール

1964年生まれ。作家。早稲田大学第一文学部卒業。編集者・ライターを経て、『八月の青い蝶』で第26回小説すばる新人賞、第5回広島本大賞を受賞。『身もこがれつつ』で第28回中山義秀文学賞を受賞。日本史を扱った他の小説に『高天原』『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』『うきよの恋花』などがある。

「2023年 『小説で読みとく古代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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