にほんの詩集 吉野弘詩集

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758414012

作品紹介・あらすじ

働く人の暮らし、家族の営みや自然の移り変わりを、飾らない眼差しでとらえ、深く、やわらかくうたいあげた詩人・吉野弘。
多くの人に愛される「祝婚歌」をはじめ「I was born」「奈々子に」など、誠実な者たちの魂の重力を探った選りすぐりの名詩集。

感想・レビュー・書評

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  • お正月の3日にNHK・Eテレで映画『桜色の風が咲く』を観ました。福島智さんの幼少期から大学入学までを描いた作品。その映画のなかで挿入されていた詩が強く印象にのこりました。エンドロールで確認すると、それは吉野弘「生命は」。

    福島さんが愛読している詩なのか、制作者がこの映画の主題としてもってきたのかは定かではありませんが、詩の言葉がじんわりと心に響きました。

    詩集って、それを読む時の自分の気持ちにピタッとくる詩が必ず2、3ありますね。それがいつも同じとは限らないのですが。

  • 詩集としてしっかり吉野弘さんを読むのは初めてだったけれど、選び抜かれた言葉たちが滋味深く、行間に詩の世界を遥か遠くまで広げていくようで、何度も読み返したいと思った。詩集、今年は時々読みたいな。
    以下、特に好きな詩と、その一節。

    『奈々子に』
    お前にあげたいものは
    香りのよい健康と
    かちとるにむづかしく
    はぐくむにむづかしい
    自分を愛する心だ。

    『香水 グッド・ラック』
    その戦場に帰ろうとする君の背に
    グッド・ラック

    祝福を与えようとして手に取り
    ー落として砕いてしまった
    小さな高貴な香水瓶
    の叫びのようだった言葉

    『祝婚歌』
    互いに非難することがあっても
    非難できる資格が自分にあったかどうか
    あとで
    疑わしくなるほうがいい
    正しいことを言うときは
    少しひかえめにするほうがいい
    正しいことを言うときは
    相手を傷つけやすいものだと
    気づいているほうがいい

    ものすごく私事なんですが、先々週結婚式を挙げまして…人前式だったので、誓いの言葉として『祝婚歌』を読み、いい詩だと大反響でした。

    『素直な疑問符』
    時に
    風の如く
    耳もとで鳴る
    意味不明な訪れに
    私もまた
    素直にかしぐ、小鳥の首でありたい。

    『生命は』
    生命は
    その中に欠如を抱き
    それを他者から満たしてもらうのだ
    世界は多分
    他社の総和

    • まことさん
      ロッキーさん、こんばんは♪

      ご結婚おめでとうございます!
      『祝婚歌』を誓いの言葉としての、結婚式、素敵ですね!
      『祝婚歌』は結婚式の、定番...
      ロッキーさん、こんばんは♪

      ご結婚おめでとうございます!
      『祝婚歌』を誓いの言葉としての、結婚式、素敵ですね!
      『祝婚歌』は結婚式の、定番らしいですが、私が呼ばれたお式では、一度も、使われたことが、まだありません。
      どうぞ、これからずっとお幸せな毎日を過ごされますように!
      2023/06/03
    • akikobbさん
      ロッキーさん、おめでとうございます!
      祝婚歌で結婚式とは、すてき!
      『二人が睦まじくいるためには』がタイトルになっている吉野弘のアンソロジー...
      ロッキーさん、おめでとうございます!
      祝婚歌で結婚式とは、すてき!
      『二人が睦まじくいるためには』がタイトルになっている吉野弘のアンソロジーが我が家にはあります。新婚のころに買ったような…笑 でも、かなり初心を忘れているなと、はっとしました。
      お幸せに…♪
      2023/06/03
    • ロッキーさん
      111108さん
      ありがとうございますー!!
      旦那と交互に読みました!素敵な詩に、式の手助けをしてもらいました笑

      まことさん
      結婚式の定番...
      111108さん
      ありがとうございますー!!
      旦那と交互に読みました!素敵な詩に、式の手助けをしてもらいました笑

      まことさん
      結婚式の定番になるのも頷ける、良い詩ですよね…。
      ありがとうございます!!幸せな毎日を過ごしていきたいものです。

      akikobbさん
      そんなアンソロジーもあるんですね!読んでみたい!
      わたしも早速誓いを守れてない!と思うこともしばしばです…初心の維持は難しいですね笑
      ありがとうございます〜!!
      2023/06/04
  • 『奈々子に』
     唐突だが
     奈々子
     お父さんは お前に
     多くを期待しないだろう。
     ひとが
     ほかからの期待に応えようとして
     どんなに
     自分を駄目にしてしまうか
     お父さんは はっきり
     知ってしまったから。
     …

    『祝婚歌』
     二人が睦まじくいるためには
     愚かでいるほうがいい
     立派すぎないほうがいい
     立派すぎることは
     長持ちしないことだと気付いているほうがいい
     完璧をめざさないほうがいい
     完璧なんて不自然なことだと
     うそぶいているほうがいい
     二人のうちどちらかが
     ふざけているほうがいい
     ずっこけているほうがいい
     互いに非難することがあっても
     非難できる資格が自分にあったかどうか
     あとで
     疑わしくなるほうがいい
     正しいことを言うときは
     少しひかえめにするほうがいい
     正しいことを言うときは
     相手を傷つけやすいものだと
     気付いているほうがいい
     …

    『生命は』
     花も
     めしべとおしべが揃っているだけでは
     不充分で
     虫や風が訪れて
     めしべとおしべを仲立ちする
     生命は
     その中に欠如を抱き
     それを他者から満たしてもらうのだ
     世界は多分
     他者の総和
     しかし
     互いに
     欠如を満たすなどとは
     知りもせず
     知らされもせず
     ばらまかれている者同士
     無関心でいられる間柄
     ときに
     うとましく思うことさえも許されている間柄
     そのように
     世界がゆるやかに構成されているのは
     なぜ?
     …

  • 個人的には今ひとつ響かず…
    好きな詩は、「樹」「生命は」「最も鈍い者が」でした。
    特に「最も鈍い者が」はここ最近自分が思っていたというか、ふと気づいてしまったことが書かれていて、もしかしたら、吉野さんも、同じような心境でこの詩を書かれたのかな、なんて思いました。
    茨木のり子や谷川俊太郎らの「櫂」に参加されたりして、間近に才能ある人々を感じ、自分がなかなか思うような地点まで詩人として行きつかない嘆き、諦め、でもそこにしか道はなく、なんとか自分を鼓舞して、まだ花開く時が来るかもと騙し騙し進む。あっているかわからないけれど、そんな苦悩を感じ取りました。

  • 比較的わかりやすい詩が多かった。

    印象に残った作品
    ●奈々子に
    ●祝婚歌
    ●樹
    ●ぬけぬけと自分を励ますまじめ歌
    ●生命は

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著者プロフィール

1926-2014 詩人。山形県酒田市生まれ。代表作は「夕焼け」「祝婚歌」など多数。校歌・社歌も多く作詞。詩集に『贈るうた』『夢焼け』『吉野弘全詩集』など。読売文学賞詩歌俳句賞、詩歌文学館賞受賞。

「2015年 『吉野弘エッセイ集 詩の一歩手前で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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