シェニール織とか黄肉のメロンとか

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.63
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本棚登録 : 1654
感想 : 122
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758414494

作品紹介・あらすじ

かつての「三人娘」が織りなす幸福な食卓と友情と人生に乾杯!作家の民子、自由人の理枝、主婦の早希。そして彼女たちをとりまく人々の楽しく切実な日常を濃やかに描く、愛おしさに満ち満ちた物語。江國香織〝心が躍る〟熱望の長編小説。「会わずにいるあいだ、それぞれ全然べつな生活を送っているのに――。会うとたちまち昔の空気に戻る」――作家の民子は、母の薫と静かなふたり暮らし。そこに、大学からの友人・理枝が、イギリスでの仕事を辞めて帰国し、家が見つかるまで居候させてほしいとやってきた。民子と理枝と早希(夫とふたりの息子がいる主婦)は、学生時代「三人娘」と呼ばれていた大の仲良し。早速、三人で西麻布のビストロで、再会を祝しておいしい料理とワインを堪能しながら、おしゃべりに花が咲いて・・・・・・

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代「三人娘」と呼ばれていた、仲の良かった民子、理枝、早希が五十路になって。

    民子は独身の物書きとして母親の薫さんと二人暮らし。
    若い頃からの付き合いの男性の百地がいます。

    理枝は海外へ移住したりパートナーも何度か変わっていますが今は独身。
    甥の高校生、朔を可愛がっています。

    早希は義母の看病と二人の息子を育てている主婦です。


    大人になって、若い頃憧れていたものの真実がわかったときのちょっとしたがっかり感みたいな空気感。

    人物としては、民子の母の薫さんのお料理が上手で、手紙をまめに書くところなどが素敵だなあと思いました。

    理枝は一番目立つ存在でしたが、五十路の恋愛模様は悪いけど最後は笑ってしまいました。でも五十路の恋はせつないですね。
    甥の朔は可愛いんだろうなあと思いました。


    江國さんの小説は私はディティールが好きで読んでいるのですが、この本は五十路ディティール、あるあるブックみたいなお話だったと思いました。

  • 大学生の頃に「三人娘」と呼ばれていた大の仲良しの民子、理恵、早希。
    卒業後は、それぞれの人生を送っているのにも関わらず、会えばたちまちに昔と同じ空気になって…。

    作家の民子は、母の薫と2人暮らし。
    理恵は、イギリスで長く暮らしていたが、その間に結婚と離婚を二度していて、今はフリー。
    早紀は、施設にいる義母の世話をしながら2人の息子がいて、ずっと主婦である。

    理恵がイギリスから帰国後、民子と薫の暮らす家に居候することから物語は始まるのだが、何ということのない日常なのに目が離せない。

    まるっきり性格も違うのにお互いにわかり合っているというのも不思議なんだけど、これが長年続いている友だちなんだろう。

    50歳も終盤になると、刺激を求めることがなくなるのだが、自由人である理恵に関しては、嫌味に感じないし、むしろ彼女にしてはあたりまえのことで、楽しくて豊かな生活である。
    それに民子も早紀も振り回されてる感はなく、自分の思うようにしているのが自然で良い。


    それぞれの日常は、切実でもあり、楽しくもあり、驚くこともあるけれど愛おしいと感じた。

    シェニール織りとか…で昔を思いだす友人っていいなと思った。
    そんな何気ないことも覚えてるなんてね。




  • 大好きな江國香織さんの新作。楽しみに読みました。潤い溢れる瑞々しい文章に引き込まれ、一気読みでした。
    自由人の理枝、主婦の早希、作家の民子、そして民子の母、薫さん。登場人物それぞれの魅力がよく表われていました。
    タイトルの意味もお話の中でちゃんと出てきます。
    思わず笑ってしまう場面もたくさんありました。
    一押しの作品です!

  • 本の題名にひかれ、手にとった。
    シェニール織・・・私の大好きなハンカチじゃん、どんな話しなんだろうって。
    物書きの民子、海外から出戻った理恵、専業主婦の早希は学生時代三人娘と呼ばれるくらいの仲良し。
    理恵が帰国し、民子の家に居候して家を探す。
    大人になり、学生時代とは状況が変わり、おかれた環境でそれぞれに苦悩する。そしてそれぞれに関わりのある人がいて、ややこしさを増す。
    そのなかでいい味をだしてるのが、民子の母、薫だ。
    とりとめなく物語は続くが、このとりとめのなさが退屈さを増し、だべる今や女子会の臨場感を増す。私も四人目の同級生になれたような、色々理恵にいちやもんをつかながら読み進む。
    理恵が「心を許せるのは、民子、早希、薫さん、朔の、4人しかいない」と嘆く所が心に残った。
    人生は1度きり、そして一人一人、違う。
    それでいいんだと思った

  • かしましい女たちの物語を書かせたら右に出るものはいないんじゃないかと思う江國さん。

    今回は大学時代の友人同士の理枝と早希と民子の三人(多分50代)。民子の母の薫(80代)。民子のことをジョンちゃんと呼ぶ民子の友人の娘まどかちゃんとその彼氏陸斗君(20代)。理枝のちょっとジェンダーレスな甥っ子朔君と彼女のあいりちゃん(高校生)。認知症になってしまった母を見たくなくてお見舞いに行きたくない早希の夫や急に結婚すると言い出す長男やおしゃべりで和む次男がいる早希一家など、とにかく色々な人が出てくる。

    視点がそれぞれの人にかわるのでとても読みやすい。思えば男性陣だけは朔君以外一人称にならず他の人からの視点で人となりがわかるようになっている(例えば傲慢だったとか定年後おばさん化おじさんとか女たらしとか)。

    最初イギリスから帰った理枝が民子と薫親子二人で暮らす家に飛び込んできて自由奔放にふるまう様子に、ちょっとヤダな理枝はと思ったし、義母のお見舞いを妻に任せる早希の夫と早希本人もなんだかいやと思って民子にだけ好感を持って感情移入して読んでいたけれど、読んでいくうちにみんなのことを好ましく思ってくる。そして理枝がいつもワインを呑んでいるので、私もものすごくワインが呑みたくなってしまった(もちろん呑んだ)。

    民子の母の薫が孫ほどの年齢の娘の知り合いの陸斗君のことを「陸斗君が説得してくれた」「陸斗君が」「陸斗君に」と君呼びでなんだか頼りにする少女のような様子にちょっとえ、なんか怖いかもってぞっとして、でもそれにきちんと対応する陸斗君が好ましく思えたのに、こちらは最後はなんだかいやな奴に成り下がっていて、他の人の好感度アップと対照的で面白かった。薫の陸斗君へのべったりとした関係もそれを「あれっ」おかしかったのかもと薫が気づく場面がきちんと入っていて、最初のぞっとした感覚はそれへの伏線だったのかと思った。江國さんの心理描写の細かさよと感動した。

    とくにこれといったことが起こらない淡々とした日常の物語なんだけれど、いつもの通り雰囲気がとても良くて、恋愛的なことも少ししか出てこず、しみじみとじっくりと楽しい読書だった。これはまた色々な場面を反芻したくて何度も読み返すと思う。江國さんの本は単行本で購入してもその世界に入りたくて何度もリピートするのでいつも損しない。

    • oyucaさん
      サイコー❣️
      サイコー❣️
      2024/01/15
    • ましゅまろこさん
      oyucaさん レビュー拝見しました。江國さんの本へ没入するための段取りが素敵です。とても共感します。この本の世界観も最高ですよね♡
      oyucaさん レビュー拝見しました。江國さんの本へ没入するための段取りが素敵です。とても共感します。この本の世界観も最高ですよね♡
      2024/01/16
  • どこにでもいそうな 学生時代からの女友達3人のお話。どこにでもいそうだけど 現実だとここまでタイプの違う人達はお友達にならない気も。

    読み始めは語り手が 3人➕何人かが いきなりコロコロ変わるので えっ?誰?みたいな感じだったけど慣れてくると すぐわかるようになりました。とにかく 何も事件も起こらずラスト迄 ひたすら 淡々と 物語が進んで 逆にこの人達この後どうなるの?って気になってしまいました。

  • 初めて江國香織さんの作品を読んだ。
    有名な作品が多く、逆に読むことはないだろうなぁなんて思っていたら。ジャケ買い&タイトル買いで。たまにはミステリ以外を。

    ストーリーは50を過ぎた3人の女性の日常を描いたもの。職業も生き方も何もかもが違う3人だけど、揃うと一気に学生時代に戻る、そんな友人同士。正直、すんごい羨ましいなぁと。
    学生時代と働いてからの交友関係って、結構違ってて。時代時代に応じた交友関係にならざるを得ないよなぁって感じてたけど。この本を読むと、たまにしか会えなくても、あの頃に戻れる友情って良いなぁと。ただただ、羨ましいって思いながら読みました。

    少ないエピソードの中にその登場人物の特徴が詰まっている文章で。全体の空気感もいいけど、登場人物の魅せ方が好きだった。

    タイトルも良く。シェニール織と黄肉のメロンて、3人からしたら勝手に誤解してた代表格でもあり、学生時代を思い起こすアイテムでもあり。本当にサラッとしか触れられないけど、読んだ後はもうこのタイトルしかないだろうって感じになる。
    本当に好きな作風だったので、違う作品も読んでみたい。

  • 学生時代から40年ほど、仲良しの友達関係を続けているアラ還女性3人の日々を描いた作品。3人のうち1人は長く英国で働いた後日本に戻ってきた離婚経験者、1人は家庭に入って育児に忙しく、もう1人は未婚のまま物書きの仕事をしていて、性格も生活環境もバラバラなのに、長く付き合いを続けてきた彼女たちの関係は、たいへん風通しが良くて気持ちがよい。私自身、幼稚園時代からの友達とも頻繁ではないけれどたまに会って遊んだりするので、お互いの性格や歴史・背景を知っている人は一緒にいてラクだし居心地が良いというのはよくわかる。
    江國さんの描く人物は豊かな人が多い印象があるのだけれど、本作の登場人物も、経済的に余裕があり、きちんと教育を受けて教養も良識もあって、でもどこか若いころの雰囲気を保って純粋な部分のある大人ばかりで、魅力的。
    読んでいると、あたたかい日光や澄んだ空気を感じるような作品で、素敵だった。

  • 共感はし合えないけれど、自分の一番の理解者であり、味方でいてくれる女友達。性格もライフスタイルも全く異なるのに、ひとたび会えば話が尽きなくなってしまう3人が愛おしい。友情を続かせるのに必要なのは相性とお互いの努力で、こんな風に一緒に歳を重ねられる友人がいたら幸せだなと思う。
    平穏な日常を大事にし、「自分の心身は、断固、自分だけのものにしておきたかった。(p.198)」という早希の考えに最も共感するけれど、民子と百地のような関係がとても理想的な気がする。そして理枝ぐらいアクティブに動けたら、人生って楽しいだろうな。

    未来は、今自分がいる場所から地続きの場所にあるのだと、改めて気づくきっかけとなった。自分が50代になるまでに欲しいもの、絶対に失いたくないものは何か、考えてみたくなった。

  • 久しぶりの江國香織さん。

    かつての(そして今も)仲良し三人娘のそれぞれの日々が穏やかに綴られるまるで本当にそこにあるかのような物語。

    視点が細切れに変わっていくのに誰なのか迷いなくわかるのがさすがだなあと。民子と百地の関係もいいし、自由な理枝も素敵だし、でも個人的に一番好きだったのは長男の婚約者に犬を飼わされることになって怒り心頭だったのに、すっかり馴染んでしまった早希のシーン。

    昔はどこか不穏さがつきまとうお話が多い印象だったけど今作はすごくすうっと染み込んでくるようなお話でとても良かった!

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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