星空病院 キッチン花 (ハルキ文庫 わ)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.22
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本棚登録 : 221
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758443135

作品紹介・あらすじ

半熟とろりのスコッチエッグ、春の豆ご飯とふきのとうの天ぷら、母の味の水餃子、絶品のハンバーガー
──星空病院の新人看護師・高貝志穂は、患者にふりまわされ、先輩からはキツイ注意を受ける日々。
そんなある日、今度こそ辞めよう、と落ちこんで寮に帰る途中、ふらりと病院の別館へと吸いこまれた。
そこには、名誉院長が特別な患者や客をもてなす食堂・キッチン花があった……。
悲しいとき、不安なとき、もちろん嬉しいときにも、美味しくて温かい料理を頂きたい。
病院の中の食堂を舞台に描く、心に沁みいる物語。

感想・レビュー・書評

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  • 星空病院の別館には、名誉院長がもてなす『開店日時不定。招待客だけが食事のできる特別なレストラン』〈キッチン花〉がある。

    仕事に行き詰まった看護師、介護に行き詰まった夫、余命僅かの父と仲直りしたい娘、そしてリハビリをやりたくないが退院もしたくない患者。

    本筋としては後ろ向きになっていたり行き詰まって思考が凝り固まってしまっている人々を、名誉院長の半下石(はんげいし)が<キッチン花>でもてなしたことをきっかけに前向きな気持ちになるというありがちな話なのだが、こういうご時世、日本中どころか世界中が不安で不満ではちきれそうになっている状況の中で読む本としてはちょうど良かった。

    ちょっとトボけたおじいちゃん風情の半下石が特に天啓のような言葉を与えてくれるわけでもない、<キッチン花>で出される料理は高級な食材でも特殊な献立でもない。
    ただ行き詰まったり後ろ向きになったりしている人々を見出し、タイミング良く声を掛け、<キッチン花>に招待しお馴染みの献立ながらきちんと手を掛けた料理でもてなす、その「ここぞ」の機会を逃さないその鋭い感覚は半下石の能力といえるかも知れない。

    半下石に振り回されつつもきちんとフォローする管理施設課の綿貫や、何かと出てくる派手な掃除婦のおばちゃんも気になる存在。今後シリーズ化されるのだろうか。

  • 「星空病院」の、今は使われていない別館の4階にサンルームにつながる「キッチン花」がある。
    シェフは、手術と料理が得意の元消化器外科医にして、名誉院長・半下石安喜良(はんげいしあきら)
    お供も連れずに勝手に回診して歩き、看護師たちに嫌がられているが、もしかしたら料理で治す患者を捜しまわっているのかもしれない。
    治すのは体の病気ではなく…

    家族の入院、という非常事態に浮上するさまざまな“非日常”に翻弄される家族たちを、経験豊かな老先生がオペ以外の方法で助ける。
    サンルームに置かれた花々に降り注ぐ光と、星空、あるいは雨。
    美味しい匂いが漂ってくる。


    第一話 A8病棟のバカ貝
    もうすぐ一年になる新人看護師・高貝志穂(たかがいしほ)は、何をやっても要領が悪く、叱られてばかり。
    ある日、文句ばかり言ってくる入院患者の担当になって…

    第二話 水餃子の君に
    印刷会社を経営していた斎藤洋一郎(さいとうよういちろう)は、胆石の手術で入院した妻の桃子を、家族と交代で付き添い看護している。
    認知症の桃子は、目の前に夫がいるのに、「主人はどこに行ったの?」と繰り返す。

    第三話 もう一度ハンバーガー
    弥生は、父・京河昭夫(きょうかわあきお)の具合が悪くなったとの連絡で、12年ぶりに家族を連れてアメリカから帰国した。
    国際結婚に反対した父には、「二度と顔を見せるな」と言われていた。
    差別意識の強い父が、肌の黒い家族に心ないことを言って傷つけることを恐れる。

    第四話 トモダチ・チャンプルー
    上田秀太(うえだしゅうた)46歳は、22年間引きこもって、77歳の母のパート収入と年金で養ってもらっていた。
    ある日、脳梗塞で倒れ、右半身麻痺に。
    もう、俺の人生終わった。
    そこへ、困っている人を助ける気満々の小学生・大河内晴臣が現れて…


    お掃除のおばちゃんの名前、今だ明かされず。
    これから何かあるに違いない。

  • 星空病院の別館にあるキッチン花、そこには名誉院長が特別な患者さんやお客様を特別なメニューでもてなしていた。その温かい料理を食べてそれぞれみんなが前向きに生きようと本来の自分を取り戻していく、心に沁みる物語でした。

  • 舞台は病院の食堂。
    風変わりなのはそこが今はもう使われなくなった病棟の一室で、そこを必要とする人がお客。料理人は名誉院長。
    設定も話も面白かったけど、大好きな東京近江寮食堂のシリーズと比べてしまったからかなんだか薄味で終わってしまった感じ。
    意味ありげに登場する掃除のおばちゃんの正体が明かされていないので続編が出るものと思われる。
    期待したい。

  • 最後涙目

  • シェフこと、半下石院長‼️がいい。
    前を向かなくちゃ。と、元気がわいてくる話でした。

  • 星空食堂の別館にある「キッチン花」
    変わり者の名誉院長がもてなす
    特別な食堂。

    看護師、患者、家族・・・
    美味しい料理は心をほぐしてくれます

    水餃子がめちゃ美味しそう

  • 半熟卵のスコッチエッグ…美味しそう…

  • 連作短編集4編
    患者とナース、患者と家族それぞれの関係を修復するキッチン花の丁寧な料理の数々。美味しそうでした。

  • さくさく読めて、ほっこりして、私は結構好きな作品です。

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著者プロフィール

滋賀県生まれ。看護師として病院等に勤務。2009年第3回小説宝石新人賞を受賞し『もじゃもじゃ』にてデビュー。滋賀県の食をモチーフに描いた『東京近江寮食堂』が話題に。そのほかの著書に『GIプリン』『星空病院 キッチン花』『東京近江寮食堂 宮崎編 家族のレシピ』などがある。

「2021年 『おでん屋ふみ おいしい占いはじめました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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