- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758443364
作品紹介・あらすじ
先代・吉宗の遺命で幕政の中心を米から金へ転換する改革を進めるお側御用取次・田沼主殿頭意次。
その手伝いをしている両替商・分銅屋仁左衛門。二人は腹を立てていた。
分銅屋の用心棒・諫山左馬介を御家人殺しの下手人として、会津藩の留守居役高橋外記に売った人物がいる
──田沼意次は高橋外記に牙を剝き、分銅屋は南町奉行所の御用聞きを呼び付けた。
左馬介は日々実直に務めを果たすが、柳橋芸者・加壽美こと御庭番の村垣伊勢と分銅屋の女中・喜代との間で板挟みに。
真面目で正直な主人公が大人気、シリーズ第九作。
感想・レビュー・書評
-
金の色彩 ― 日雇い浪人生活録シリーズの9作目
2020.05発行。字の大きさは…小。
親の代からの浪人・諫山左馬介を通して江戸時代後期の「お金」について書いた物語です。
前作で御側御用取次の田沼意次を怒らした会津藩留守居役・高橋外記が、脱藩して御三家水戸徳川家に会津藩の秘事を売った。その代償として、分銅屋仁左衛門と用心棒の諫山左馬介を懲らしめてほしいと。そこで水戸家の留守居役・但馬久佐が、仁左衛門を試しに向かうことになった。
また、仁左衛門が手に入れた鐚銭を意次に見せると、意次は、鐚銭がどこから出てきたか調べを依頼される。それを左馬介が調べる。
【読後】
どんどん話を広げていく、ついて行くのが大変です。
公儀お庭番で人気の美人芸者・加壽美と、分銅屋の嫉妬深い美人年増女中・お喜代の二人が、左馬介に絡んでくり広げる女の戦いが物語を少し華やかにしています。
【豆知識】
「鐚銭(びたぜに)」は、粗悪な銭。銭が摩耗して小さくなったもの。各藩が作った藩札、銭(幕府は、藩内の流通は認めるが、藩外では価値がない)。
此度は、この鐚銭が江戸の博打場から大量に出て、分銅屋に持ち込まれる。
幕府としては、貨幣は、幕府が作るのが決まりである。
現在、日本では、日銀だけが貨幣を発行している。
たまに、コピー機で作って捕まる人がいるが(笑)
2021.01.10読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
田沼様に関わると、どんどん大物が登場しますね。
-
諌山左馬助の父が放逐されたのは、会津藩であった。
それをいいことに、江戸屋敷留守居役の高橋外記は、分銅屋や田沼意次にモーションをかけるがことごとく失敗することになる。
高橋劇は、失態をし蟄居を命ぜられるが抜け出し、水戸藩に近づく。
諸藩の懐事情は火の車であったらしい。
その点ではすでに武士の世界も金に支配されてたと言っていい。 -
この小説では田沼意次は改革の士である。それを手助けする分銅屋仁左衛門とその用心棒の諌山左馬之助。雇い主を守るためとはいえ刺客を殺めてしまった左馬之助を追求する同心佐藤伊之助と岡っ引きを、名沼の権力でもみ消し、それでも追及する同心と岡っ引きを解雇・死にまで追いやった展開にいささか嫌悪を覚える。