作品紹介・あらすじ
事故のきっかけになる人間のまちがい、ヒューマンエラー。それはときとして深刻な事故を招く。甚大な被害をもたらすヒューマンエラーは、どうやって防げばよいのか。本書では、事故の発生する過程に注目して、事故をその構造から捉え直し、ヒューマンエラー抑止の理論を考察。さらに、すぐに役立つ実践的なテクニックの一端を、問題形式で紹介する。
感想・レビュー・書評
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読み終わりました。ヒューマンエラーってよく聞くけどそもそも何なのか?どのように危険なのか?それを防止するためにはどうすればよいのか?などの様々なポイントを平易に書いてくれている一冊。
ヒューマンエラーは「深く考えずに、なんとなく行っていた」ということが多いというのは非常に納得。説明的理解に到達している事柄は間違いが起きにくい。ヒューマンエラーを直接的に防ぐ方策も必要だけれども、やはり「物事を説明的なレベルで理解する」ということがエラー防止にはとても良いのだと思った。
あと、情報共有してトンボの目で物事を多角的・複眼的に捉えること。結局、ヒューマンエラーを起こさないためにはツールもよいが「ヒューマン」そのものをしっかり育てておかないといけないのだという、割と当たり前の結論になるのだと思う。当たり前ではあるけれど、一周回って到達した当たり前だけに、深い。
良い本でした。
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着眼点を学ぶには、読み易く、かつわかりやすい解題がされており、系統的にこういう領域を学ぶには良い一冊です。個人的には、トヨタ生産方式のトレーナー研修で学んだムダトリのポイントとの共通点が多々あり(特にポカヨケ、工数削減など)、改めて勉強になった。
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ヒューマンエラーの専門書。読みやすく、わかりやすい。仕事に役立てそう。
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読む前は硬そうな本だ思っていたら、非常におもしろい本でした。
著者は人間の行動メカニズムを情報学・認知科学の観点から研究されている方で、企業のヒューマンエラーに関するコンサルタントも請け負っているようです。
著者によれば、ヒューマンエラーとは簡単に解明できない問題とのことです。
一見、人的な要因の事故であっても、そこに至るまでの原因は複数の事象が複雑に絡み合っているもので、本書では多種多様な例を挙げて、これを検証しています。
事故とは麻雀やトランプの役のようなものという例えがしっくりきました。
本書のタイトルからは連想されないような、哲学や古典からの引用も多く、非常に興味深く読ませていただきました。
純粋におもしろい本だと思います。
幅広い視点で問題を追及する実践的な方法が書かれているので、「職場でミスが多発して困っている」というような方にはヒントがあるのではないでしょうか。
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本書は、ヒューマンエラーについての入門書です。
本書では、ヒューマンエラーを「事故のきっかけになる人間のまちがい」と定義付けています。
ヒューマンエラーの例として、肺を手術する患者と心臓を手術する患者を取り違えて手術してしまった事故、飛行場の滑走路での飛行機同士の衝突事故をあげています。
ヒューマンエラーが大事故の原因になる問題点として、以下の3点を挙げています。
①ヒューマンエラーはどこでも起こりうる
②ヒューマンエラーは被害の量を予測しにくい
③ヒューマンエラーは防ぎにくい
本書では、なぜ事故が起こるのかを解説し、ヒューマンエラーの解決法、防止法、防止活動を学ぶことができます。
問題が発生したときは、最低6通りの捉え方をすべきと説明しています。
問題を妥当に捉えることが意外と難しいと言っています。
ヒューマンエラーの防止法として以下の3点を挙げています。
①作業を行いやすくする。ヒューマンエラーの発生頻度を抑制する。
②人に異常を気付かせる。損害が出る前に事故を回避できるようにする。
③被害を抑える。小さな事故が大きな事故に発展しないようにする。
ヒューマンエラー対策の問題点として、解決法が見つかったとしても、その方法で絶対にミスが起きないと証明できない、ヒューマンエラーの原因の第一位を取り除いても第二位が第一位に繰り上がるため、完全にヒューマンエラーをなくすことは難しいと説明しています。
また、事故は誰の責任かを問うと、事故予防から遠のくことを注意しています。
人間が作業するという性質から、ヒューマンエラーをゼロにすることはできなくても、限りなく少なくすることはできます。
ミスを減らすためにも、ミスそのものについて知ることは重要です。
専門的なテーマではありますが、本書は実用を目的に書かれているので、仕事にも活かせる内容となっています。
ぜひ読むべき一冊です。
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読みやすかった。
これで,私も少しはヒューマンエラーを防げるかなぁ…。
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ヒューマンエラーについての本を初めて読んだ。(他に比べるものがないので星4つはテキトウです。)
一つのエラーをとっても、見る人によって何を原因とするかが違い、何を原因をするかによって対策も違う。それを具体的に書いてくれているので、視野が広がる。
第6章の「あなただったらどうしますか」では、いくつも例題が出されており、著者の解答が添えられている。クイズ感覚で面白い!
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ヒューマンエラー(人為ミス)の原因を探り、防ぐための方法に言及する
ヒューマンエラーは、「しょうがない」と捉えることもできるが、その原因をさぐることで、起こる確率を減らすことができる。(原因を除去するという発想)
つまり捉え方次第。
すべてのことに通じると思う。
例えば、警報が鳴ったのに火災気づかずに地下鉄を降りなかった乗客のようなことも、自分自身という人間による自分の命に対する「ヒューマンエラー」といえるのではないか。
危険を察知するすべを身につけておくべきだと思う。
「洪水を予言するだけでは不十分である。箱舟を作ってこそである」 byルイス・ガースナー
ヒューマンエラーの原因と思われる場合
技量不足ー作業が難しすぎた
記憶力不足ー覚えるべきことが多すぎた
慢心ー慣れた作業員が慢心し、手を抜いた
不注意ー作業員の緊張が足らずに、見逃がした
緊張過剰ー締め切りに追われた作業員が短絡的な行動をした
自己顕示欲ー恰好をつけようとして、わざと危ない行為をした
機械の問題ー機械がまぎらわしいのが悪い
実はヒューマンエラーの原因はわからないこともある
問題の捉え方と解決策
前提条件の問題ーしなくてすむ方法を考える
やり方の問題ー計画の改良、作業手順の改良 ソフトウエアの改良
道具装置の問題ーハードウエアの改良
やり直せばよいー回復手段の設置 採算計画
致命的でなければ可ー非常用装備
認識の問題ー問題現象の有効活用
小さなミスこそ重要、見逃がさないようにするために表面化する必要がある
1)小さなミスの発見
頻発するミスは事故の予兆、芽である認識を麻痺させる
ありふれた不効率現象ではないと思うこと
→事故当事者以外からの指摘
2)ミスの報告者が不利益にならないようにして
事故はだれの責任かを問うと、事故予防から遠のく
【本】淮南子・説苑(抄) 中国古典文学大系 (6)
説苑(ぜいえん) 劉向が作った組織論の教科書というべきもの
ヒューマンエラーの防止法
1)作業を行いやすくする~発生頻度の抑制
2)人に異常を気付かせる~損害が出る前に事故回避
3)被害を抑える~小さな事故が大きな事故に発展しないようにする
【本】徒然草
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著者プロフィール
1972年神奈川県生まれ。国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副連携室長。中央大学大学院 客員教授。内閣府消費者安全調査委員会専門委員などを兼務。専門は、ヒューマンエラー(人間の間違い)、安全工学、認知心理学。カリフォルニア大学サンタバーバラ校への交換留学を経て、東京大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。著書に『「事務ミス」をナメるな!』『「マニュアル」をナメるな!』(ともに光文社新書)、『ヒューマンエラーを防ぐ知恵』『防げ! 現場のヒューマンエラー』(ともに朝日文庫)、『多様性工学』(日科技連出版)など。
「2023年 『テストに強い人は知っている ミスを味方にする方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」
中田亨の作品