日本に現れたオーロラの謎: 時空を超えて読み解く「赤気」の記録 (DOJIN選書)

著者 :
  • 化学同人
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759816877

作品紹介・あらすじ

太陽黒点の爆発により磁気嵐に見舞われる地球.その様子を私たちはオーロラとして目にしているが,磁気嵐の規模が大きくなるほど,現代文明に深刻なダメージを与えかねない.歴史上,そんな巨大磁気嵐が実際に発生していたのだとしたら.京都でもオーロラが観測される規模の磁気嵐があったとしたら.1度ならず何度も…….鎌倉時代の歌人,藤原定家が『明月記』に記した「赤気」の記録に導かれ,江戸時代,昭和,飛鳥時代へと続く,時空を越えたオーロラ探索の旅が始まる.

感想・レビュー・書評

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  • 推古天皇時代、日本書紀の記録を最古とする低緯度オーロラ「赤気」の古記録を、国文研と極地研の専門家の眼を以て検証していく過程を一般向けに書いた本。
    専門家ではない、各時代の人々が驚きや感動をもって残した文章、日付、方角、時間、描写、絵画の全てが現代でデータとなって解析されていくのが大変に興味深い。
    市民データで新しいものとして提示されるのは、南極調査隊がタロ・ジロらの犬を置いて帰還せざるを得なくなった磁気嵐が生んだオーロラを、高校生が水彩画で書き残したものとそのメモ。市民参加型科学の可能性を感じさせる話。

  • 歴史のロマンと科学のロマンの双極子を見事につなげた知的好奇心を刺激する本。

  • 鎌倉時代の歌人、藤原定家が明月記にオーロラの記録を残していた?

    読み始めたときは、藤原定家、明月記、オーロラというそれぞれの単語が結び付かなかったのですが、読み進めていくと、氷と氷雪の大地としか結び付かなかったオーロラが、遥か彼方、古代の日本と結び付いたように思います。

    この本で語られるオーロラが日本で見られた記録を示す時代は三つ。明月記の鎌倉時代、絵に残された江戸時代、さらには飛鳥時代にまで話は飛んでいきます。

    昔オーロラが日本でも見られた、と言葉にするのは簡単ですが、それを実証するのは至難の業。その記録は信用に値するのか、見間違いや嘘の可能性はないか、正確な記録なのか、実証するには諸外国にも同様の記録があるかまで調べなければいけません。

    そしてその記録が実証されると、古代からの文学上の記録というものが、実は科学分野での新たな発見にも寄与するという驚きにつながります。現に明月記は日本天文遺産にも認定されているそうで、古代からの記録が現代の、しかも異なる分野で役に立つというのは、歴史が今に実際につながっているというロマンを感じます。

    そして、そうした科学分野の発見から見返すと、当時のオーロラの存在を知らなかった人々がオーロラをどうとらえたのか、という文化の部分、またオーロラや赤気といった言葉の由来はどこから生まれたのか、という言葉の部分の発見にもつながっていきます。

    文学や歴史から科学の視点を持ち、科学の視点から文学や歴史を見る。著者はこれを「文理融合」だとしています。

    自分自身、文系の人間で科学や理科はハードルの高いものでしたが、こうしてみると、それぞれの分野は意外なところで隣り合っているのだな、と感じます。そうした新たな視点が思わぬ発見を生む。科学的な事象、文学や歴史的な遺物、それぞれの見方を変えると、また新たな発見が生まれるのかもしれない、と面白く感じました。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00613274

    鎌倉時代の『明月記』,江戸時代の『星解』,
    そして昭和33年の連続写真――
    日本オーロラ史をひもとく,時空を超えた旅が始まる.

    太陽黒点の爆発により磁気嵐に見舞われる地球.
    その様子を私たちはオーロラとして目にしているが,
    磁気嵐の規模が大きくなるほど,現代文明に深刻なダメージを与えかねない.
    歴史上,そんな巨大磁気嵐が実際に発生していたのだとしたら.
    京都でもオーロラが観測される規模の磁気嵐があったとしたら.
    1度ならず何度も…….
    鎌倉時代の歌人,藤原定家が『明月記』に記した「赤気」の記録に導かれ,
    江戸時代,昭和,飛鳥時代へと続く,時空を越えたオーロラ探索の旅.
    (出版社HPより)

  • タイトル通り、オーロラ研究の本ですが、文理融合という変わった切り口の本なので非常に面白い。
    藤原定家の『明月記』が第1回日本天文遺産に認められているのは知りませんでした。「赤気」はオーロラであると特定してもよいということ、そしてオーロラは空気中の酸素によって、赤くも緑にも見えることなど、オーロラ蘊蓄満載で、知的好奇心が満たされる本です。
    著者もサイエンスの結果をプレスリリースするよりも文理が融合した、今回のような発表の方が反響が大きいとのことで、斬新な研究を進めていくうえで世間の関心を集めるための重要なアプローチかと思います。『星解』の絵図の謎解きで、扇形にオーロラがなぜ見えようになるのかは、とてもワクワクして読めました。
    オーロラができる本当の仕組みは、太陽風と地磁気と大気の3つが重要で、太陽風が大気にあたって光る、という説明は間違いとのこと。太陽風が地磁気とぶつかり、地磁気がゆがむことにより電気が発生する。この発生した電気が北極または南極の一部に集中して電気を流すことで解消するとのこと。
    今後は知ったかぶりするつもりはないけど、知らない人がいたら、教えてあげてもいいかもしれない、と思いました。
    単純に知らなかったことを知れる喜びがあった、という著者の感想が素直に頷ける

    (気になったこと)
    620/12/30・・・日本書紀の赤気の記載と、雉の尾の関係について。
    1204/2/21・・・明月記 定家43歳。23日にも連続イベント。仁和寺の『御室相承記』には三日連続と記載。『中国古代天象記録全集』には黒点の巨大化の記載あり。
    1770/9/17・・・日本でもオーロラ(赤気)の記録多数。クック船長の第1回世界航海の記録に赤道近くで見えたとの記録(バンクスの日記)。伏見稲荷の一角にある東丸(あずままろ)神社の今まであまり知られていない、羽倉信郷の日記に「白気一筋銀河を貫き」が重要な記述(白気(オーロラが白くみえることもある)が銀河(天の川)を貫くほど、夜天に一面に見えたことを表す)だった。そこから計算により、日本で見られた赤気が扇型になることは理にかなっていると結論。
    1859/9/1・・・キャリントン・フレア
    1958/2/11・・・日本初のオーロラ観測データ。当時の普通のフィルムは657nmより波長の長い光は映らない。現在は700nmまでの感度の高いものを使うのが太陽観測している人には常識。過去のアナログフィルムを解析する際には当時の常識をしっておくことも重要。
    2003/10末・・・ハロウィン・イベント

    ・磁気嵐が発生しているときには、緯度の低いところまでオーロラが見えること、それをどこまで見れるのか等をオーロラ研究者は知りたがっている
    ・2017/9/10に太陽の側面に100年に一度の超高速のコロナ質量放出があり、地球は直撃しなかったので損害はあまりなかったが、火星が直撃を受け全体が紫外線で発光した
    ・カラー写真で撮影した色が緑であったとしても、現地で肉眼でみると白色に見える。
    ・オーロラの色。グリーンラインは557.7nmの波長、レッドラインは630.0nm。酸素原子への刺激によってこのように見える。木星や土星は水素なのでピンク色にみえる。

  • とても読みやすく、面白かった。全体の流れが心地良い。オーロラへの興味がより大きくなったし、古典籍にも興味が湧いた。
    何かを研究することの情熱や純粋な喜びが伝わってきて、知識欲が刺激される。
    タロとジロと、たけし。

  • 面白かった。昔は磁北が今より日本よりだったんだね。
    もうちょっと文理とも専門的な内容があってもよかった。

  • 古典籍に現れたオーロラと自然科学の知見をあわせて、文理融合的研究としてまとめたのが本書。第1章は藤原定家の『明月記』の記載から、和歌で知られる定家が自然を観察するいわば文理融合的人物であったことがわかる。第2章は江戸時代に書かれた『星解』からグラフィカルな表現のオーロラの謎を解く。第3章は1958年のタロ・ジロの置き去りが歴史的な磁気嵐のタイミングで宗谷との通信が途絶え、同時に北日本にオーロラが現れたことがえがかれる。小学校に入ったばかりの頃で、タロ・ジロのこととか南極観測船の宗谷のことはもちろん記憶にあり、新聞をスクラップしたような気がするが、オーロラの記事は記憶がなかった。第4章は日本書紀に現れたオーロラで、その姿がキジの尾のようであるとの記載についての研究が興味深い。

    いずれも文理融合だけでなく、複合的な領域の共同研究の成果として記されたようで大変興味深く読んだ。このプロジェクトは「オーロラ4D」というらしく、現在でも市民を巻き込んだプロジェクトとして進んでいるようだ。

    オーロラ4D+プロジェクト:https://lab.nijl.ac.jp/aurora4d/

  • 非常に面白い本でした!
    日本に現れたオーロラについて、藤原定家が明月記に記した赤気、江戸時代に京都に現れた赤気(扇型で、一般にイメージするオーロラとは違う姿)を描いて文献の読み解きなどなど、本当に知的好奇心が揺さぶられる本でした。私は、文系ですが、文理の連携によるこの研究成果、非常に印象深かったです。
    オススメの一冊。

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著者プロフィール

1976年、宮城県仙台市生まれ。2004年、東北大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。情報通信研究機構、NASAゴダード宇宙飛行センター、名古屋大学太陽地球環境研究所、理化学研究所、東京工業大学を経て、2013年から国立極地研究所 准教授。専門は宇宙空間物理学。2015年、文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。著書に『オーロラ!』(岩波書店)、『宇宙災害』(化学同人)などがある。

「2019年 『オーロラみつけた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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