日本に現れたオーロラの謎: 時空を超えて読み解く「赤気」の記録 (DOJIN選書)
- 化学同人 (2020年10月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784759816877
作品紹介・あらすじ
太陽黒点の爆発により磁気嵐に見舞われる地球.その様子を私たちはオーロラとして目にしているが,磁気嵐の規模が大きくなるほど,現代文明に深刻なダメージを与えかねない.歴史上,そんな巨大磁気嵐が実際に発生していたのだとしたら.京都でもオーロラが観測される規模の磁気嵐があったとしたら.1度ならず何度も…….鎌倉時代の歌人,藤原定家が『明月記』に記した「赤気」の記録に導かれ,江戸時代,昭和,飛鳥時代へと続く,時空を越えたオーロラ探索の旅が始まる.
感想・レビュー・書評
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推古天皇時代、日本書紀の記録を最古とする低緯度オーロラ「赤気」の古記録を、国文研と極地研の専門家の眼を以て検証していく過程を一般向けに書いた本。
専門家ではない、各時代の人々が驚きや感動をもって残した文章、日付、方角、時間、描写、絵画の全てが現代でデータとなって解析されていくのが大変に興味深い。
市民データで新しいものとして提示されるのは、南極調査隊がタロ・ジロらの犬を置いて帰還せざるを得なくなった磁気嵐が生んだオーロラを、高校生が水彩画で書き残したものとそのメモ。市民参加型科学の可能性を感じさせる話。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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歴史のロマンと科学のロマンの双極子を見事につなげた知的好奇心を刺激する本。
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鎌倉時代の歌人、藤原定家が明月記にオーロラの記録を残していた?
読み始めたときは、藤原定家、明月記、オーロラというそれぞれの単語が結び付かなかったのですが、読み進めていくと、氷と氷雪の大地としか結び付かなかったオーロラが、遥か彼方、古代の日本と結び付いたように思います。
この本で語られるオーロラが日本で見られた記録を示す時代は三つ。明月記の鎌倉時代、絵に残された江戸時代、さらには飛鳥時代にまで話は飛んでいきます。
昔オーロラが日本でも見られた、と言葉にするのは簡単ですが、それを実証するのは至難の業。その記録は信用に値するのか、見間違いや嘘の可能性はないか、正確な記録なのか、実証するには諸外国にも同様の記録があるかまで調べなければいけません。
そしてその記録が実証されると、古代からの文学上の記録というものが、実は科学分野での新たな発見にも寄与するという驚きにつながります。現に明月記は日本天文遺産にも認定されているそうで、古代からの記録が現代の、しかも異なる分野で役に立つというのは、歴史が今に実際につながっているというロマンを感じます。
そして、そうした科学分野の発見から見返すと、当時のオーロラの存在を知らなかった人々がオーロラをどうとらえたのか、という文化の部分、またオーロラや赤気といった言葉の由来はどこから生まれたのか、という言葉の部分の発見にもつながっていきます。
文学や歴史から科学の視点を持ち、科学の視点から文学や歴史を見る。著者はこれを「文理融合」だとしています。
自分自身、文系の人間で科学や理科はハードルの高いものでしたが、こうしてみると、それぞれの分野は意外なところで隣り合っているのだな、と感じます。そうした新たな視点が思わぬ発見を生む。科学的な事象、文学や歴史的な遺物、それぞれの見方を変えると、また新たな発見が生まれるのかもしれない、と面白く感じました。 -
岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00613274
鎌倉時代の『明月記』,江戸時代の『星解』,
そして昭和33年の連続写真――
日本オーロラ史をひもとく,時空を超えた旅が始まる.
太陽黒点の爆発により磁気嵐に見舞われる地球.
その様子を私たちはオーロラとして目にしているが,
磁気嵐の規模が大きくなるほど,現代文明に深刻なダメージを与えかねない.
歴史上,そんな巨大磁気嵐が実際に発生していたのだとしたら.
京都でもオーロラが観測される規模の磁気嵐があったとしたら.
1度ならず何度も…….
鎌倉時代の歌人,藤原定家が『明月記』に記した「赤気」の記録に導かれ,
江戸時代,昭和,飛鳥時代へと続く,時空を越えたオーロラ探索の旅.
(出版社HPより) -
とても読みやすく、面白かった。全体の流れが心地良い。オーロラへの興味がより大きくなったし、古典籍にも興味が湧いた。
何かを研究することの情熱や純粋な喜びが伝わってきて、知識欲が刺激される。
タロとジロと、たけし。 -
面白かった。昔は磁北が今より日本よりだったんだね。
もうちょっと文理とも専門的な内容があってもよかった。 -
古典籍に現れたオーロラと自然科学の知見をあわせて、文理融合的研究としてまとめたのが本書。第1章は藤原定家の『明月記』の記載から、和歌で知られる定家が自然を観察するいわば文理融合的人物であったことがわかる。第2章は江戸時代に書かれた『星解』からグラフィカルな表現のオーロラの謎を解く。第3章は1958年のタロ・ジロの置き去りが歴史的な磁気嵐のタイミングで宗谷との通信が途絶え、同時に北日本にオーロラが現れたことがえがかれる。小学校に入ったばかりの頃で、タロ・ジロのこととか南極観測船の宗谷のことはもちろん記憶にあり、新聞をスクラップしたような気がするが、オーロラの記事は記憶がなかった。第4章は日本書紀に現れたオーロラで、その姿がキジの尾のようであるとの記載についての研究が興味深い。
いずれも文理融合だけでなく、複合的な領域の共同研究の成果として記されたようで大変興味深く読んだ。このプロジェクトは「オーロラ4D」というらしく、現在でも市民を巻き込んだプロジェクトとして進んでいるようだ。
オーロラ4D+プロジェクト:https://lab.nijl.ac.jp/aurora4d/ -
非常に面白い本でした!
日本に現れたオーロラについて、藤原定家が明月記に記した赤気、江戸時代に京都に現れた赤気(扇型で、一般にイメージするオーロラとは違う姿)を描いて文献の読み解きなどなど、本当に知的好奇心が揺さぶられる本でした。私は、文系ですが、文理の連携によるこの研究成果、非常に印象深かったです。
オススメの一冊。