性差別の損失 なぜ経済は男性に支配され、女性は排除されるのか

  • 柏書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760155132

作品紹介・あらすじ

 男女賃金格差、ジェンダー平等、少子化など、今話題のテーマ、緊急に解決しなければならない問題、それらの本当の原因とは何か。小手先の政策だけを振り回す政治の問題も含めて、根本的に解決したいのなら、その真の原因に対処しなければならないことが明確にわかる。そう、男性には耳が痛いが、片方の性がすべてを牛耳ってきたため、女性が不利な立場に置かれているのだ。既得権も含めて、女性に権利を渡そうとしない男性側の問題が大きく影響している。しかも女性でさえも男性に依存する権利を主張し、これらの問題解決に抵抗さえしているのだ。はたしてフェミニズムはあらゆる女性の価値観を包含できているのだろうか。そして、家父長制のことを甘く見すぎていないだろうか。

 本書はこうした問題について世界規模で実地に体験、研究してきた著者により真の原因を明らかにし、それによる巨額の損失が起きている事実をデータを基に突きつける。

●女性に高等教育を受けさせないことで、世界経済は30兆ドルの損失を被る
●地球上の耕作可能地の80%は男性が所有し、富の独占を行っている
●男女の賃金格差は市場が偶然にもたらしたものではなく、1970年代に子どもを持つ母を家庭に留めようとした保守的な社会政策に起因する(イギリスの平等賃金法など)
●子どもをもうけると平均して10年にわたり収入が40%ダウンする(働くアメリカの母親、母親ペナルティ)
●イギリスには1年間の有給休暇があるが、出産から10年後に40%の減給となる(イギリス)
●長期の産休制度があっても、伝統的に子どもは家庭で育てるものだと考え、子どもを預ける施設を作らないから、それを利用できず、「ヨーロッパの老人ホーム」「子どものいない国」となった(ドイツ)
●育児支援政策があるデンマークとスウェーデンでも、出産から10年後に給料が約21%と27%下がっている(デンマークとスウェーデン)
●なぜ長期の育休は女性に不利益になりかねないか?(昇進させない)
●なぜ男女平等を推進する政策はまったく役に立たないのか? 
●「男性の連帯」がいかに根強いか(採用、育成、人事管理、昇進、給与慣行に関して)

 こうした経済的な障壁が、通常は女性に課せられた文化的な制約と結びついて、女性特有のシャドウ・エコノミーを作り出している。それを著者はダブルXエコノミーと呼んでいる。これは発展途上国だけの問題ではなく、先進的と思われているアメリカ、ドイツなどでも状況は変わらない。世界的な規模で男女差別が起こっており、それゆえその損失は莫大なものとなっている。地球上から貧困をなくすにはどうすればよいのか。現地に学校や設備を作るだけではだめで、それを活かすための文化的フォローが必要になる。この文化的問題こそが男性中心の価値判断に基づくものであり、一方的に壊すのではなく、意識を変えるべく、男女ともに問題点を理解しつつ、この巨大な壁に立ち向かう必要があることを明らかにしていく。

感想・レビュー・書評

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  • どう向き合う?「大黒柱バイアス」:日経xwoman(会員記事)
    https://woman.nikkei.com/atcl/column/22/021500012/

    Linda Scott | The Double X Economy
    https://www.doublexeconomy.com/linda-scott

    性差別の損失 | 柏書房株式会社
    https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760155132

  • 格差を学ぼうシリーズ第3弾。世界中に存在する性差別が、如何に経済損失を生んでいるかの考察。もちろん、女性が稼働することによって付加価値が生まれ、家庭の収入が上がり、GDP等の経済指標もよくなるということはあると思うが、問題は、なぜそれがわかっているのに実現していないかということ。アフリカや中東、アジアの一部では、いまだに女性は男性の「所有物」であり、女の子は父親によって結婚相手に売り飛ばされる商品。男性の「所有物」である以上、お金はもちろん、土地や家など財産を持つことができないので、夫に頼るしかないが、一夫多妻制の存在やレイプの横行など、身の安全を図ることすら難しい。こういう状況が長く続いているので、女性の間でも、男性から自立しようというアイディアさえ浮かばない。これは、他にもたくさんある性差別の原因の一つ。宗教、伝統的価値観、家族の形など、考えるべき事柄はたくさんある。「格差をなくすアイディアを考えよう」とかやりがちだけど、根本原因を考え抜かなければ、解消には程遠いことを実感。

  • 女性を経済的に平等に扱うことが、世界で最も犠牲の大きい悪を断ち、同時に誰もが享受できる繁栄を築くという主張が本書の核心。著者のリンダ・スコット氏は国際的に著名な女性の経済開発の専門家である。
    経済を中心に、女性差別の事例が多数収録、これがとんでもないことを説得的に語る。
    その結果として、ダブルXエコノミー(女性の染色体がXXであることによる)を主張。

  • 人間が一番怖い。そりゃ戦争もなくならないだろう。
    とばかり言って何もしないままでは何も変わらない。何かをしようとしている著者さんはかっこいい。

  • 2023.11.22(水)図書館。
    「ダブルXエコノミー」
    女の子の早すぎる結婚。嫁入りさせると、お金がもらえる文化があり、貧困層には貴重な財源。
    逆に嫁入りさせるために持参金が必要な文化のある国では、貧困家庭では準備できないので、女の子が生まれると、殺されてしまうことがあるそうだ、、、
    なんてこと、、、
    女の子はモノ扱い。人権も何もない。出生の記録もない。低年齢出産率と乳児死亡率が高い。男尊女卑が酷い国ほど、貧困で、争いが絶えないのは、今の世界が実証してる。
    生理用ナプキン配布事業には賛同する。

    プラン・インターナショナル・ジャパンのガールズプロジェクトには寄付してたけど、もっと継続的な支援をしたくなり、スポンサーシップの方も追加で申し込んだ。

    12/14読了

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000260402

  • レビューはブログにて
    https://ameblo.jp/w92-3/entry-12824498389.html

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著者プロフィール

国際的に著名な女性の経済開発の専門家、オックスフォード大学起業とイノベーション・DPワールド名誉教授。さまざまなセクターのリーダーを集めるパワー・シフト・フォーラム・フォー・ウィメン・イン・ザ・ワールド・エコノミーと、開発途上国の女性たちのエンパワーメントに取り組む大手多国籍企業のコンソーシアムであるグローバル・ビジネス・コアリション・フォー・ウィメンズ・エコノミック・エンパワーメント(GBC4WEE)を立ち上げ、GBC4WEEではシニアアドバイザーを務めている。チャタムハウスのシニア・コンサルティング・フェローで、世界銀行グループでもジェンダー経済学に関してたびたびコンサルタントを務める。

「2023年 『性差別の損失』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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