ローカルメディアの仕事術:人と地域をつなぐ8つのメソッド

  • 学芸出版社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761526795

作品紹介・あらすじ

地域に根付き、多様な人をつなぎながら、継続するための考え方とノウハウ。全体像からディテールまで①プロデュース②編集③チームづくり④デザイン⑤ウェブサイト運営⑥取材&インタビュー⑦文章の書き方⑧写真の撮り方を、エキスパート達が実例で解説する。初めてつくる人にも経験者にも、必ず気づきのある現場からの学び

感想・レビュー・書評

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  • 地域課題の解決という文脈と繋がって注目されているローカルメディアは、編集者としての職人的要素だけでなく、プロデューサー的視点や、ディレクター的視点も必要である。8人の実践者がそれぞれのノウハウを語る。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704018

  • なんかしなくちゃならない、いや出来そうな気がするムズムズする本でした。数字から語る地方消滅みたいなマクロな議論がある一方で、出来る範囲でコツコツと耕すようなマイクロな事例の数々。それがプロダクトじゃなくてメディアである、というのが「目から鱗」でした。でも、果たしているのがメディア=媒体、じゃなくてメディア=媒介というのも「目から鱗2」でした。先日、「新復興論」で大佛次郎論壇賞を受賞した小松理虔が、アクテビストとして突然登場したのも、なんかワクワク。人口減少ニッポンにおける一億総クリエイター社会の提言として受け取りました。中学生の巻き込みの「ふくちのち」プロジェクトとか、写真だけでもグッと来ました。

  • 『ローカルメディアのつくりかた』の実践編みたいなもの。写真撮影やデザインなどの考え方が示されている。ただノウハウ関係だけでなく、なぜローカルメディアが必要なのか、異なるコミュニティを攪乱するには、どのような伝達処方がよいのか、考える重要性も強調されている。

  • いろんな紙モノがあるんですね…。今は一億総デザイナー社会ですね。

  • ローカルメディアの記事の作り方、運営法、デザインの仕方、写真の撮り方などのノウハウ本。幅允孝さんの名前があるのを見てすぐ読んだ。城崎のプロジェクトに関わっていたことは知っていたけれど、それが誰と、どういうキッカケで、何を目的に始まったのか知らなかったし、苦労話や結果まで知れたのが良かった。温泉マークの入ったタオル地の万城目学の本、蟹の殻のような表紙の湊かなえの本、どちらも面白そう。幅さんは最近も神戸のアイセンターでブックコーディネートをされていた。身近に幅プロデュースの場所が増えつつあって嬉しい。

    p24
    職人としての職業編集者は「よいもの」をつくるために集中するばかりで、資金繰りなどのマネジメント意識や、事業を成功させ安定させていく経営者視点が足りない場合が多い。だからこそ、ローカルメディアづくりには、これまでの出版・メディアで重宝されてきた職人的技能に頼りすぎない「プロデューサー的視点」が必要不可欠なのだ。

    p48
    だから、手に取って一文字読まれた瞬間に、人の琴線に触れる差し出し方がしたい。読み方は一〇〇人いたら一〇〇通りあるとはいえ、読者となるかもしれない誰かのことを慮り、想像しながら、最後まで脇をしめて仕事をする。
    だから、この「おせっかい」は、最初のワンアイデアだけではだめで、内容はもちろん、製本、本の置かれる場所、渡され方など最初から最後までを緻密に考える。
    編集者が校了すれば仕事が終わっていた時代とは異なり、現在はどこに並んで、何の隣におかれて、どんなサインやPOPが傍らに添えられて、どういう人がそれを手にとるのか、あるいは手に取らないのか、その結果売上はどうなるのか、そこまで凝視しなければいけない時代であることは間違いない。

    p61
    本が好きな人、本好きのコミュニティ以外の場所にいる人にもアクセスできて、ツッコミどころもあって面白がってもらえる。そんな新しいほんとの出会いをこれからもつくっていきたい。

    p84〜99
    「チームメンバーの過去の経験やそこから得た知見は必ず活かせる」
    「チームの根っこを育む"問い"を立てること」
    「それぞれの切り口で、収集できる情報を見つけること」
    「断片的なシーンをリアルに描くことで、全体を組み立てること」
    「プロジェクトに関すさわるすべての人たちの行動指針となる言葉を紡ぐこと」
    「会議の場をデザインすること」
    「体験をともにして、共通言語を紡ぐ」
    「ともにつくるための仕組みづくり」
    「自らが決めたルールを常に疑い、ベストを尽くすこと」
    「実現したい状況をメディアに託すこと」

    p124
    例えば、広告を出稿してくれる可能性のある企業の探し方の一例として、運営地域の企業ホームページを見ることをおすすめする。運営地域のどんな企業がどんな媒体に広告を出しているのかは、収益化する上で知っておくべきだろう。

    p146
    地元にできたカフェを取材するとしよう。その店の価値はどこにあるのだろう。店主の経歴なのか、コーヒーの豆の品質なのか、インテリアなのか。そしてそれら個々の要素が地域とどのようにつながっているのか。商品の産地が地元産なのか、地元の歴史をコンセプトにしているのか、社会課題の解決に役立つものなのか、魅力発信を助けてくれるものなのか、それらを吟味して取材に臨む必要がある。

    p147
    (1)情報ー情報は、記事の軸となる部分だ。構成要件は「5W1H」。いつ、どこで、何が、どのように、何のためにそれをしたのか、基本的な情報を書く。(中略)例えば、カフェがいつオープンし、店主は誰で、どのような店名で、何が提供され、価格はいくらくらいで、店内はどのような様子で、何のために店がつくられたのか。

    (2)描写ー描写は、その場面を想像できるような部分である。コーヒーから湯気が立ち上っていることや、店主がパンを焼き始める時の時計の針が午前二時であること。遠くに磐梯山が見えることや、太平洋を見渡せる高台から遠くにタンカーが見えることなど、登場人物と場所、そして風景とが結びつく部分だ。

    (3)物語ー物語は、「今」だけでなく「過去」や「未来」を提示する部分である。店主の来歴や、その場所がどのような歴史を歩んできたのかを紹介することで、記事に奥行きが生まれる。取材対象者のコメントを紹介したりするのも良い。

    (4)私見ー(前略)書き手自身がそのニュースのどこに価値をおいているのか、社会にどのような影響を与えることを期待しているのかなどを意図的に書き込むことで、尻すぼみになりがちな記事の文末に読み応えを持たせることができるはずだ。

    p150
    (前略)主述をハッキリさせること、一つの文を短くすること、接続詞の使い方を注意すること、何がポイントなのかが強調されていること、声に出してすらすらと読めることである。

    p159
    顔の向いた方向に余白をつくるだけで、目線の方向に奥行ができる。

    p162
    人の表情をアップで撮るときは、頭頂部が切れていると全体の構図が安定する。

    p169
    フレーム効果と呼ばれるものがある。例えば、ワークショップの風景を撮るとき、あえて手前に柱や角を入れると、「どこかの部屋でやっている」という意味合いが出てくる。何気なく撮っておくより「ある場所」をイメージさせやすくなる(後略)

    p210
    「ものの価値基準というのは、商品そのものだけではないという気がします。ものだけのクオリティで見れば、わたしかつくったものは淘汰されていったかもしれません。もの以外の何か。商品が生み出す空気感や、売り場全体がかもし出す世界観などの何かが作用して、お客さまか買ってくださったと思うのです」

    p233
    「例えば建物の保存とか、不動産を再生しようとするとき、周辺の地域研究をしろとまでは言わないけど、土地の歴史を調べることは大事だと思うの。古いものは古びないのよ。一〇〇年前のことを書いたものはたぶん三〇年後も残るけど、今あるまちの美味しい店を調べても、三〇年後にはなくなっているかもしれない。新しいものから早く腐っていく。だから、若い人たちはもっと歴史をやったほうが伸びるのに、と思いますね」

  • 『ローカルメディアのつくりかた』続編。
    ローカルメディアとは何か、編集術のノウハウ、地域の編集について、ローカルメディアに関わる執筆陣が事例と共に紹介。

    Standard Bookstore心斎橋での出版記念イベントで入手。話もエキサイティングだった。

    ローカルメディアと編集を広くとらえていて、デザインプロジェクトに生かせそうなアイデアが満載。
    単にアウトプットを出すということだけではなく、プロセスこそ重要というメッセージと、それを示す事例に共感。
    200ページの「地域編集」の図のように、様々な事業・ツールを組み合わせるやり方は参考になる。

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著者プロフィール

大正大学表現学部専任講師。“まちを編集する出版社”千十一編集室代表。編集者、文筆家、メディアコンサルタントとして、紙やウェブといった枠を超えさまざまな地域プロジェクトのディレクションに携わる。

「2023年 『移動縁で変える地域社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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