オ-ダ-・メイドの街づくり: パリの保全的刷新型「界隈プラン」

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761531201

作品紹介・あらすじ

パリの大部分を占める身近な界隈の魅力を再生したのは、詳細で柔軟性に富んだパリ独自の都市計画の力だ。建物の形の規制や緑地の保護、駐車場から商業・居住用途の効果的な配分までに踏み込んだ地域環境制御の創意と工夫に迫る。

感想・レビュー・書評

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  •  図書館で、タイトルには違和感を感じつつ借りてきた。

     序で、国家的な歴史的施設、建築物にあたらないまでも保存の価値のある街並みの保存に焦点をあてた本と書かれていて、自分の問題意識と同じと思った。

     日本でも古都保存法、文化財法、歴史まちづくり法など、国家として守るべき文化財を核として、その保全を図る仕組みはあるが、もう少し普通のでも地域が大事にしている街並みを保全するのは、都市計画の役目だと思う。地区計画、景観地区の出番だろう。

     正直いって、パリの具体の都市計画、建物保存については、観光でパリにいった程度でよくわからない。ただ、具体の規制内容などについて、興味をもった。

    (1)防火性を確保しつつ壁面の位置をそろえることの重要性。(p221)

     これは、『路地からのまちづくり』でも感じたことだが、防火性能をきちんとソフト、ハードで確保すれば、蛇タマ道路をつくりだす、2項道路の制度は見直しが可能だと思うし、見直したい。

     また、レベルはもうちょっと高容積を前提にするが、特定街区や総合設計のつくりだす、足下の風の強い、裏寂れた空間のあり方も見直したい。せめて、空間の管理や風よけ施設の整備など、マネジメントレベルのルールを制度的に入れ込む必要があると思う。

    (2)観光商業が居住系商業を圧迫するという問題意識。(p129)

     これは、いままで自分にはほとんど思いつかなかった。復興の際にも、商店街の復興にあわせて、観光客も引きつけたいと商業者がいうが、そのような発想は、問題があるのだろうか。日本の場合、おちついた歴史的商業という概念がないので、観光商業と区別する発想がないのかもしれない。

     例えば、伝統的建造物群保存地区などでも、むしろ、生活の糧のために積極的に観光商業に転換していて、それも自立のためには問題ないように思うが、その発想は間違いだろうか?

    (3)歩行者専用地区について、電動で上がり下がりするボラードで居住者用、荷さばき用の車以外の排除する仕組みについて、これは交通規制を排除する仕組みに使えないか。(p77)

     もともと、警察の交通規制がかたくな過ぎることから、権限を市町村か県に委譲すべきとの意見をもっているが、それはすぐには到底実現しない。
     むしろ、とりあえず、このボラードをつくって、地区の関係者はカードを示して、地区内の道路に入るような仕組みであれば、道路交通法の規制を逃れられるのではないか。もちろん、ハードの維持管理については、住民では対応できないので、道路法の適用は認めて、市町村の道路部局が管理することが前提だが。

     こざかしい知恵だが、著者が、パリの都市計画家の「狡猾さ」を何度も指摘しているので、狡猾なアイディアを考えてみた。

     どうでしょうか。法律的には、道路交通法上は一般交通に供していないということで、排除できそうですが。

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著者プロフィール

首都大学東京 都市環境学部 建築学科准教授。1993年東京大学工学部都市工学科卒業、1995 年同大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程修了、2001 年同博士課程退学、1995-1997 年パリ・ラ・ヴィレット建築大学校、1997-1999 年パリソルボンヌ大学地理学院、1997-2001年パリ社会科学高等研究院、1999年及び2000年パリ市外局パリ都市計画アトリエ研修員、2001年東京都立大学工学研究科建築学専攻専任講師、2004年東京文化財研究所国際文化財保存修復協力センター協力研究員兼担、2005年首都大学東京都市環境学部講師、2006年政策大学院大学非常勤講師。

「2018年 『ワインスケープ 味覚を超える価値の創造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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