ナラティヴ・セラピー・ワークショップBookII: 会話と外在化,再著述を深める(Journey with Narrative Therapy)
- 北大路書房 (2022年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
- / ISBN・EAN: 9784762832109
作品紹介・あらすじ
対話で暗に示される希望を聴き取るためには,会話に潜む思い込みやパターン化に意識を向け続ける必要がある。「人=問題」にしない質問法,過去・現在・未来の行為に新たな視点をもたらす会話法を実践的に解説。まだ見えない結末を協働して探求し,クライエント自身のエイジェンシーが発揮されるナラティヴへと導く。
感想・レビュー・書評
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著者のこれまでの本を読んだり、ワークショップに参加しているので、ここに書いてあることは、いつかどこかで読んだり、聞いたりした話しではあるが、こうして本になったものを読むとあらためてじわっと理解が深まる感覚がある。
同シリーズのBook1で基本的なところは議論されているわけだから、このBook2はそこからより専門的な議論(外在化と再著述)になって難しくなりそうと構えたが、そんなことはなくて、基本的にはとても読みやすい。
マイケル・ホワイトを初め、ナラティヴセラピーのもともとの本が難度が高いことを考えれば、この読みやすさ、わかりやすさは、ある意味、驚異的なことだと思う。
ポストモダーン思想は、常識に反する見方をするわけで、そこから生まれる難解さがある種の魅力でもあるわけだが、では現実的にどうするのかというとわからないというか、批判はよいけど、創造ということについては、あまり役に立たないことが多い。
そういうなかで、現実に関わっていく実践的な技法の一つとして、ナラティヴ・セラピーがあるわけだが、この本における説明は、とてもスムーズで、「なるほど、そう言われればそうだね」と素直に納得できるものとなっている。
が、この優しい語り口は自然に生まれたものではなくて、何度も何度も、説明に工夫に工夫を重ねて生み出されたものであろうことが推察される。
もちろん、わかりやすいだけでなく、Book1よりも、そして以前ワークショップで聴いた説明よりも深く、詳しく説明されている部分もあって、その説明の内容と仕方が進化していることもわかる。とくに、再著述に関する説明の「厚い記述」はすごいな〜。
もちろん、「わかりやすい」ということが、「わかった気になる」といことになってしまうのも問題なのだが、そうした点についても、「わかりやすく」、「そんなに簡単に理解しても困る」ということが伝えられている。(笑)
この本のわかりやすい説明を読むと、なんかやれそうな「希望」を感じる一方、最後に収録されているナラティヴセラピーの逐語を読むと、ああ、これはやっぱできないな〜と「絶望」に突き落とされる。
よって、「簡単に理解できるものではない」ことが、全体構成として確認できる仕掛けになっているともいえる。(笑)
このダイアログについては、無藤さんと白坂さんのかなり長い解説がついていて、これがまたすごい。そうか、ここまで読み込んで、解釈することができるのかとまたまた怖れ、慄いてしまった。
個人的には、無藤さんのPCAとナラティブ・セラピーの違い、単に技法ではなく、根源的な認識論の違いをどう整理するのかという問題意識に深く共感した。
わたしはカウンセラーではないのだけど、この2つの違いは本質論と社会構成論の違いで、自分のやっていることにも関連している。これらは、単にいいとこ取りすればいいようなものではないと思っている。でも、全く違うものではなく、ある意味とても近いところにあるものでもあって、そこをどう考えるんだろうな〜?
とりあえず全体を理解するために一気に読んでみた。これから、仲間とゆっくりと読み込んでいきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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