- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766421507
作品紹介・あらすじ
フェリスと出会ってなぜ書けたのか。あの恋は本当に恋だったのか。
『判決』の、『変身』の秘密は、彼らの〈恋〉にある。
スリリングな展開でカタルシスに導く、強いカフカ!
1912年9月20日、カフカはフェリスに最初の手紙を送る。2日後、一晩で一気に『判決』を書く。数日後、長編『失踪者』に取りかかる。約1ヶ月半で第6章まで書き進む。11月下旬、中断して『変身』を書き始める。虫になった男の話は2週間で書き終えられる。
おそるべき集中力で創作を続けた晩秋の2ヶ月半。
29歳の彼は、同時にその夏に出会った女性フェリスにも大量の手紙を書いていた。
カフカは恋に落ちた。だから、書けた――。人々はこう理解してきた。しかし、それは本当に恋だったのか。甘い熱い感情の高ぶりだったのか。なぜ、そのとき書けたのか。なぜ、書いたのか。
『判決』の、『変身』の謎を解く鍵は、彼らの〈恋〉にある。作品の秘密は、彼と彼女の秘密である。
スリリングな展開でカタルシスに導く
強いカフカ!
感想・レビュー・書評
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この本ではカフカはまず商人の家庭に生まれ、実際に商売をしていたという事実や、お金に非常に細かかったという点が公開された『ミレナへの手紙』では省略されているといった事実、父との確執が直接的なものではなく間接的なものであった点について詳細に触れた上で、「金銭に疎い、世俗に縁のない、純粋で高潔な人間としてのカフカ像」が、編集者であったブロートやカフカの周囲の人物、文学者の評論によって作られていったものであることを喝破しています。商売を営む家庭に生まれたこともさることながら、本当は欲深く、商売っ気たっぷりの、金に細かい、嘘つきの、面倒臭い作家であった、という本著の投げかけるカフカ像は、カフカを神格化せず、ありのままのカフカを提示してくれるので、とても面白いです。ミラン・クンデラやエリアス・カネッティのような高名な文学者や編集者マックス・ブロートが作り上げた偽のカフカ像に、我々は踊らされていたのだよ……という、ギャグ漫画日和のクマ吉風の世界観が見えてくる本の構成になっています。良書と言えましょう。
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文学
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柄谷行人さんの書評から読んでみました。
カフカさんの痩せて神経質そうな写真からくるイメージに今まで誰も疑問を感じていないという。もしかしたらそういった疑問は最初からあったのかもしれないけれど敢えて触れようとしなかった。文学という世界の欺瞞と言えるのかもしれない。カフカはそういった欺瞞にこそもっとも敏感だったのだという。そういった疑問と欺瞞に焦点を当てていてかなりおもしろかった。カフカさんの本を読んだのはずいぶん昔でタイトルなど変わっているのだなとも思った。
面白い。カフカを読んだのはずいぶん昔だけれど読み返してみたくもなった。