フィンランド国語教科書小学3年生 日本語翻訳版: フィンランド・メソッド5つの基本が学べる

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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766783629

感想・レビュー・書評

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  • 日本で教育を受けた私にとってこの国語教科書はすごいものでした。とても難しいです。答えは何?って何度も思いました。でも答えはありません。答えがないことが大事なのだそうです。よく考える、自分の意見の理由を考える。そのために題材文をよく読む。もやもやして考え続ける。こういう経験が大事なのだとわかりました。「自分のいいたいことを相手に伝えること」「相手のいうことを理解すること」がフィンランドの国語教育の根底にあるそうです。非常にシンプルですが、難しく、力がいることです。力の付け方がよくわかります。教科書が変えられなくても、教師や親などの、子どもに関わる大人たちが意識することで、子どもにこういった力を付けさせることができるのでは?まず、「なぜ?」と聞いて説明させてみる。自分自身も、今からでは遅いと思わず、自分の思考を意識的に深めてみたいです。

    私は読書が好きで、たくさん読みますが、読んだことをすぐに忘れてしまいます。だからブクログに記録を残しているのだけれど、自分のレビューを読み返しても、内容を思い出せないことが多々あります。
    本書のp90に「本を読むときには」という項目があり、20のアドバイスがあります。たとえば、物語の主人公、場所、時間に注目しよう。あらすじを自分のことばでまとめよう。作者のいいたいことは、何かな?登場人物で一番好きなのは誰かな?どうして?登場人物と同じような経験をしたことはあるかな?何か登場人物に言いたいことは?意味の分からない言葉を書き出そう。心に残る言葉を書き出そう。作文を書くときに仕えそうな言葉を書き出そう。など。
    これを参考に私もレビューを書いてみたいと思いました。

    メモ
    フィンランドの国語教育の根底にあるのは、「自分のいいたいことを相手に伝えること」「相手のいうことを理解すること」の2点。
    フィンランドの教育メソッドは次の5つの力を段階的に育成することによって、グローバル・コミュニケーション力の習得を目指している。
    ①発想力・・・「いいたいこと」を思いつかなければ、コミュニケーションははじまらない。
    ②論理力・・・「いいたいこと」に筋が通っていなければ、どこの誰にも通じない。
    ③表現力・・・いいかたが悪ければ「いいたいこと」は伝わらない。
    ④批判的思考力・・・相手のいいぶんにも一理ある。自分のいいぶんにも問題がある。それを認めるところから、コミュニケーションは始まる。
    ⑤コミュニケーション力・・・発想力、論理力、表現力、批判的思考力―すべてを駆使して、困難な状況の中でも意思疎通を図ることができる能力を磨く。
    フィンランドの国語の授業では、生徒が問いに答えると、先生は必ず「どうして?(ミクシ?)」と質問する。どうしてそう思ったのか、どうやってその答えを導き出したのかを問う。きちんと理由付けができなければ、答えとして認められない。解答が存在しない―日本人にとっては、なかなか納得のいかない状態。しかし、フィンランドではその納得のいかない状況を重視する。納得できないから、また考える。問題が心のどこかに引っかかっていて、考え続ける。とりあえず答えを出してもさらに考え続ける。そうすることによって、ゆるぎない「考える力」を身に付けることができる。
    フィンランドの国語教育の特徴は考えるための道筋「型」を示すこと。物語を創作する際の型、書き出し→問題の発生→挑戦と失敗→問題の解決をプロの作家が書いた手本を示して子どもたちにも型通りに書かせる。いずれ型破りになることは期待されているが、最初から型なしであってはならない。考えたプロセスを発表させる。

  • 北欧の小国でありながら、NOKIAなどの世界企業を輩出するフィンランドが、経済協力開発機構の学習到達度調査で、トップクラスの成績を叩き出したことは記憶に新しい。

    本書はフィンランドの小学校で使われている国語の教科書をそのまま翻訳したもの。この教科書の目的は大変明確である。5つの力「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を身につけさせること。それだけ。指導方針が教師によって大きく変わる日本の国語教科書とは似ても似つかない内容で、まずそのことにカルチャーショックを覚える。とにかく社会に出てからの即戦力となりうる言語技術に特化したカリキュラムなのだ。そして、教科書を読み解くにつれ、森林資源のほかには技術力しか売るものがないフィンランド国家がどのような人材を育成しようとしているのかがクリアに理解できる。

    もちろん、日本の国語教科書にも美点はある。日本人は、既存のものを深く理解し、それを発展させることに長けた民族だ。そのためにはまず知識を吸収するための読書力を構築する必要がある。そもそも、日本語という言語そのものが同じ経緯をたどっている。だから、自然にアウトプットよりもインプットに主眼を置いたカリキュラムが組まれることになるのだろう。

    しかし、その対極に位置するフィンランドの教科書を理解することによって、今の日本の子どもたちに足りないものが手に取るようにわかる。
    日本人がそのまま使えるように、翻訳には工夫を凝らしてあるので、授業に取り入れることも可能だ。ぜひ一度、フィンランド・メソッドを体感していただきたい。

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