- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784767825809
感想・レビュー・書評
-
エクスナレッジのそれは美しい本。
4800年前に書かれた「易経」で幕を開け、これに続く99冊の締めくくりはナオミ・クラインの予言書「これがすべてを変える」。
この間のあらゆる時代に読まれた科学書・宗教書・経済・数学・辞典・哲学・植物学・芸術・文学等々、どれもその時代に大きな影響を与えてきたものが顔を並べている。
既読の本は約3割しかない。はじめてその書名を聞く本も何冊もある。
見開き2頁での紹介で、書影がきちんと載っているものが多いのが嬉しい。
100冊の選定が無謀か快挙かはどちらとも言えない難しさがあるかな。
選書が英国に偏り過ぎだし、大半が欧米もの。
日本からは「源氏物語」のみが掲載され、しかも国芳の浮世絵で登場する。
ちょんまげ姿の光源氏など違和感しかない。
前書きで著者も認めているが思わず首をかしげる選書も多い。
「ロリータ(1955年)」「キンゼイ・リポート(1948年)」などは持ち上げすぎ。
それでものめり込むように読んでしまった。
矢張りこの美しさには勝てないし紹介文も面白い。
私にはこういう類の本を読んでいる時は極上の至福タイムだ。
歴史に影響を与えたほどだから、禁書になったり裁判沙汰になったりと言う本も多い。
ソルジェニツィンの「イワン・デ二ーソヴィチの一日(1962年)」は、スターリン時代の強制収容所の非道さを暴いたもの。
体制に翻弄された作品であり、作者は毒殺されかかったことさえある
この本がきっかけになってソビエト連邦が崩壊していったことを思うとまさに「あの本は読まれて」いたということだ。
読み違いかと思って何度も確認したのは「毛沢東語録が西側の資本主義国ではビジネスに成功するためのマニュアルとして使われている」という記述。
未読ゆえ何とも複雑な思いだ。読まれた方、教えてください。
「ジェーン・エア(1847年)」や「ガリヴァー旅行記(1726年)」は偽名で世に出している。
ブロンテの時代はまだ女性の物書きという社会的立場は無きに等しかった。
スウィフトは、国家批判の罪を免れるための身を守る手段だったらしい。
タイムラインによく登場する「沈黙の春(1962年)」の作者・レイチェル・カーソンは化学工業界から悪意に満ちた個人攻撃を受け続けたという。
やや意外だったのはユゴーの「レ・ミゼラブル(1862年)」は、出版後カトリック教会が即座に禁書にしたということ。
登場人物を通して表現された政治理念・感傷主義・貧困などに抗議したのだという。
書物を通じて問題提起したものは、現代でも継承されているものが多い。
批判を恐れず身を賭して著された作品の話は、やはり胸が震えるものがある。
問題提起している本、禁書扱いになった本、今も読み継がれている本などとカテゴリー分けもしてみたが、これらは密接に繋がっている。
分類して列挙したら皆さんにも読みやすいかと思うが、とても不可能だった。
これはもう、お読みいただいて確認していただくしかない。
ところで今後読んでみたい本もあった。
食物本のさきがけ「地中海の食べ物の本(1950年)」。
植物分類学の祖と言われたリンネの「植物種誌(1753年」。
未読であることを後悔した本はレマルクの「西部戦線異状なし(1929年)」。
映画を見て、知っている気になっていた。反省。
考えてみれば、読者が歴史を変える後押しをしてきたということでもある。
皆さんが読む本は、今後どのような運命をたどるのかしら。
何世代にもわたって読み継がれる作品だと嬉しいよね。 -
絵だけは見たことあるというやつから、全く知らなかったものまで幅広い。写真が多く、当時の本のデザインも楽しめる。100冊読破を目指すのも面白そう。
-
-
百冊の選び方には、概ね首肯できる。時代が近いほど難しいと思うが。
見開きで一冊なので、簡潔な紹介となっている。 -
100冊の内、何冊既読か恥ずかしくて人に言えないです。
-
↓貸出状況確認はこちら↓
https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00266726 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/776955
本を読みたい。教養を身につけたい。
そんな人にオススメ。
大きい!見やすい!美しい!の三拍子です。 -
1800年代が26冊
1900年以降が27冊
紀元前が11冊
ギルガメシュ叙事詩や論語に並ぶ本が20世紀にそんなにあるとは思えず、チョイスに疑問。ヒッピー文化に影響を与えたとか、いやどう見てもアメリカローカルの話でしょみたいなものもあったり。
しかし「欧米の有名どころを押さえておきたい」という人にはいいと思う(私も触発されて君主論の文庫本を買った)。 -
烏兎の庭 第六部 8.25.20
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto06/diary/d2008.html#0825
「文芸講話」毛沢東 竹内好訳 岩波文庫
この本を選んだのは単純である。「岩波書店創業百年記念読者が選ぶこの一冊」の冊子において、この本が「薄い岩波文庫」で1番だと紹介していたのである。ちょっと手にとってみた。
少しは予想していたが、薄いからといってあっと言う間に読めるわけじゃない。87pのパンフを読むのに三ヶ月かかった(ホントは買ってから三年かかっている)。もしかしたら、ページ当たりでは今まででもっとも手強かったかもしれない。
毛沢東を本格的に読んだことはないし、竹内好もしかり。お二人とも興味深い人物なので、収穫はあったのだが、正直まだよくわからない事が多い。
文芸問題は同時に思想問題だということもわからないではない。しかし、この文芸を革命の武器として徹底して磨きあげようとする姿勢に、私は怯まざるを得ない。それをこの八路軍内で言えば私は日和見主義と批判されるのかもしれない。しかし、この違和感を私は大事にしたい。
最初に毛沢東が方向性を出し、20日間の討論ののちに「結論」として、「誰のために」「どう奉仕するか」「党との関係」「統一戦線問題」「文芸批評問題」そして最後に思想問題としてまとめるやり方は、竹内好によれば全ての毛沢東論文に共通しているのだという。そのように「弁証法的に」理論を磨きあげる姿勢は学ばなくてはならないだろう。
読了あとに哲学者古在由重が、1950年代後半この本をテキストに労働者の学習組織自由大学で何年間も使っていたことを知った。おそらく学生たちは岩波文庫を100円ぐらいで買っていたと思う。当時の青年たちの感想を聞いてみたい。
この本を読んだだけでは到底無理だが、古在由重は1960年代始めに文化大革命が始まった時に知識人の中で唯一最初からこの革命を根本部分で批判していた。文化大革命の本質が革命ではなく、権力闘争にあることを見抜いていた。それは、解説書ではなくテキストを真摯に読んでいたからだと思う。
最後のページで魯迅の詩を大絶賛していた。魯迅の作品はまさに融通無碍の作風に思っていたので、どう読めば「革命の武器」になるのか、若干意外だった。
2013年7月9日読了
私たちは「文化大革命」を「文化」の「革命」だなどとは思ってもいないわけです。
しか...
私たちは「文化大革命」を「文化」の「革命」だなどとは思ってもいないわけです。
しかし西側ではその認識はないのでしょうか。
その辺りを知るには元になるテキストを読まねば何とも言えません。
本書では言葉を尽くして褒めちぎっています。
もしや大金つかまされた?と一瞬思いました(笑)
初版から50周年という記念に2014年には「増補版・毛沢東語録」が出ていますからね。
まだ共産党内には信奉者が多くいるということなのでしょう。
それが資本主義国で読まれるというのはなんとも皮肉です。
読み方によっては革命のツールにも成り得るのでしょうね。
一度ぜひ読んでみたいです。ありがとうございました。
私のあくまでも推測なのですけど、毛語録も文芸講話も竹内好は同じ構造を持っていると言っているし、古在由重が文化大革命を権...
私のあくまでも推測なのですけど、毛語録も文芸講話も竹内好は同じ構造を持っていると言っているし、古在由重が文化大革命を権力闘争だと喝破したことから、西側陣営は「権力闘争に勝つ方法」「(マルクスよりも更に役に立つ)弁証法理論の使い方」として重宝していたのではないかと思います。実際、現在中国はほとんど資本主義化していますし、その見立てはあまり間違っていなかったようにも思えます。