【増補決定版】「自己決定権」という罠:ナチスから新型コロナ感染症まで

  • 現代書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768435854

作品紹介・あらすじ

旧版から約二〇年、「自己決定権」と「自己決定」は今や当たり前のものになった。しかし、その問題性は見えにくい形でますます広がっている。本書では、「自己決定権」が医療や福祉でどのように作用しているか、近年喧伝される「人間の尊厳」という言葉がいかに巧妙に作用しているかを考えた。
増補決定版にあたり、これら全ての問題が噴出した出来事として、「相模原障害者殺傷事件」「新型コロナ感染症」を詳論。

感想・レビュー・書評

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  • 尊厳死とか選択的な出産とか、自殺だったり子供を選んだりという普通だったらやっちゃいけないことをやらせろという時に、自己決定権というロジックで求めるというやり方があるが、それは、権利を拡大するように見えて、実は、権力とか、国家、経営者が密かに望んでいることであって、要するに弱者減らした方がいいとか、医療費がかかる人は本当はいない方がいいとかいうことに、結局はのってしまっていて、権利の拡大を主張しているはずが、実は権力の思うつぼであって、絡めとられて、結局それが小さくされてしまう。あるいは、権利を主張していると、逆にそれが義務性を帯びてしまって、あなたは死ぬことができるのになぜ死なないのというように、刃がこちらに向いてしまうということがある。だから自己決定権は罠だと。自己決定権というテクニックを使って主張するということは危ういと。

    尊厳死の問題ほどシビアなものではないが、リモートワークについても同様の議論はできそうだ。

    コロナが怖いからリモートワークをさせろと、会社には行きたくないんだと、どこで働くかは私に決める権利があるんだと、自己決定権を主張したとする。

    会社は最初は仕方ないですねという体で認めていくけれど、本当は、会社はオフィスなんか用意したくないし、わずかなネット接続の費用くらいで、パソコンから作業空間から、モチベーションから何もかも全部ワーカーが抱えて、自分で管理して、指示したことをやってくれさえすれば、そんなありがたいことはないと思っている。

    リモートワークを自己決定権で要求していくと、働く場所を提供するのを本当はやりたくないという権力側の思うつぼで、それでワーカーにあったはずの権利がどんどん奪われていき、しまいには、わざわざ会社に来たがるって何だということに容易に反転するということになってしまう。

    自己決定権のはらむ矛盾を考える。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50231290

  • 請求記号 151.2/Ko 61

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著者プロフィール

1955年生まれ。東京大学大学院理学系研究科・科学史科学基礎論博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター教授。科学史、生命倫理学専攻。
著書『死は共鳴する―脳死・臓器移植の深みへ』(頸草書房) 『生権力の歴史―脳死・尊厳死・人間の尊厳をめぐって』(青土社)ほか。

「2018年 『「自己決定権」という罠』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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