- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768458280
感想・レビュー・書評
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黒田さんの本は以前よく読んだが、ある時期からいやになって読まなくなり、買っていた本もすべて売ってしまった。それはそのいかにも読ませようというエッセイの書き方が鼻につきだしたからである(正確には当時のブクログを見ればわかる。本書では基本的に著者の主張に賛成だが、ときに断定的に言われるとそうかなと思うところもある)。
それが今回なぜ読むことになったかといえば、『週刊文春』か『新潮』かでフランス文学者の鹿島茂さんが書いていた本書の書評を読んだからである。それは、要するに語学に王道なし、ひたすら読んで暗唱することだとあったからだ。なんだ、それならぼくが日頃考えていることと同じではないか。もっとも、黒田さんの学習法はミールというロシア語学学校での少人数教育にあり、一般の大学生の教育にそのまま当てはまらないが、それでも共通するものはたくさんあると共感した。そのミールの教育方針は、ひたすら発音を直し(ロシア語らしくさせ)、模範文を暗唱し、日訳、露訳、そして単語テストを繰り返すというものである。ぼくもほぼこの方針を一貫して貫いてきたが、ミールはそれをさらに徹底してやった。黒田さんはしかも高校のときからミールへ通い、最後はミールの教師にまでなる。といっても、かれは一方で大学院まで進み、大学の教壇にも立ったし、NHKのラジオ、テレビの講座にまで出演している。その間、語学に関するエッセイ集もたくさん書いてきたから有名人である。ただ、黒田さんの理想は、すぐれたロシア語の話し手になることで、研究にはそれほど重きを置いていないように見える。ロシア語の世界では、ミールに通ったといえば位置も置かれるそうだ。このミールをつくった東一男・東多喜子夫妻の名はどこかでいたことがあったが、白水社から立派な本を何冊も出している。本当はこんな本をだせればいいのだが。本書は、ロシア語を学ぶ中で知り合った仲間、生徒との淡い、また熱い交友が各所に書かれている。まさにロシア語だけの「青春」である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロシア語を愛する人のロシア語学習遍歴が語られたロシア語愛に満ちた本。
ロシア語の学校についてが中心にあるが、まさに混沌とした昔ながらの「塾」といった印象を覚えました。語学の学習においては、こういう授業が王道なのではと思いますが、それでも結局は生徒あっての学校ということなのかと思いました。今の生徒が求めるのは短期的に分かったつもりになれるシステマティックな学校なのでしょう。 -
黒田龍之助さんの言語エッセイ。
氏がかつて学んだロシア語学校の物語。
語学学習のいろいろな意味で「原点」についてはっきりと述べられている素晴らしい本でした。
言語学習において、学習者の日々における努力において他はなし。 -
自分の語学学習の甘甘さを見せつけられました。
・外国語教育についていえば、暗唱は欠かせない。暗唱してこなかった学習者の外国語は底が浅い(耳が痛い~)
・訳読が悪いのではない。その後に暗唱しないからである。辞書を引いてくる作業は、外国語学習の準備にすぎない。和訳を確認した後で暗唱するのが勉強。