花びらとその他の不穏な物語

  • 現代書館
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本棚登録 : 217
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768459317

作品紹介・あらすじ

 現代メキシコを代表する作家グアダルーペ・ネッテルのデビュー作。
 「不穏だ」「ぞくぞくする「クセになる」などなど、発売と同時に大反響を呼んだ『赤い魚の夫婦』(2021年邦訳)。瞬く間に外国文学ファンのあいだで話題になり、多くの書評やラジオでの紹介で取り上げられました。
 今作も、多くの日本の読者を虜にすることまちがいなし。
まぶたの整形手術の術前・術後の写真撮影を仕事とする、まぶたに執着せずにいられない男(「眼瞼下垂」)。ほんのわずかなブラインドの隙間から通りを隔てた向こうに住む男性を覗き見ては妄想にふけることをやめられない女(「ブラインド越しに」)。自分をサボテンに同化させたうえに妻をつる植物に見立て、家庭崩壊に突き進む男(「盆栽」)。〈ほんものの孤独〉を探し求め、離島で一夏を過ごす少女(「桟橋の向こう側」)。女性トイレに「痕跡」を発見し、街じゅうのトイレに同じ痕跡を探し求める男(「花びら」)。髪を抜く癖に取り憑かれ生活も精神も崩壊し、出口の見えない状態で病院で療養している女の手記(「ベゾアール石」)。
 六作品いずれもあまりに個性的な人物が主人公となっていますが、作品の舞台は、パリ、ローマ、メキシコ、東京といずれもコスモポリタン都市。確かな筆致で読者を作品に引きずりこみます。

感想・レビュー・書評

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  • Guadalupe Nettel — Indent Literary Agency
    http://www.indentagency.com/guadalupe-nettel

    花びらとその他の不穏な物語(仮) グアダルーペ・ネッテル(著/文) - 現代書館 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784768459317

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      今週の本棚:鴻巣友季子・評 『花びらとその他の不穏な物語』=グアダルーペ・ネッテル著、宇野和美・訳 | 毎日新聞(有料記事)
      https:/...
      今週の本棚:鴻巣友季子・評 『花びらとその他の不穏な物語』=グアダルーペ・ネッテル著、宇野和美・訳 | 毎日新聞(有料記事)
      https://mainichi.jp/articles/20221224/ddm/015/070/030000c
      2023/01/06
  • 初めて読む作家の短編集。あらすじの、「ひと癖持ち合わせた登場人物たちが」という文言が気になって手に取った。
    ひと癖なんてまとめていいのか。
    誰だって程度の差はあれ持っているだろうフェチな部分や、ちょっと変わってるね、そういう時期もあるよねで済まされるような考え方、変態だと感じる行動など、様々だ。

    「ブラインド越しに」
    自宅の窓から向かいの集合住宅を覗き見る「わたし」のことをいかがわしいと思ったけれど、見られている「あなた」の方が変質的だと思う。

    「ベゾアール石」
    語り手のような脅迫症状について真に理解しているわけではなくても、いちばん分かりやすい話だと思った。
    しかし長く読んでリアルに想像すると気分が悪くなりそうだから、短編でよかった。

  • メキシコ文学である。
    ガルシア・マルケスが最も親しみを覚えているが・・じっくり読めるほどに、馴染めていない。

    盧っている6編は10分余りで読めるものばかりだが、読みこなせていない、不消化感が大きい。
    奇妙というより、登場人物や設定に共感を覚えず、なじみのない生活感が大きく私をブロックしている。

    「盆栽」が一番、印象的だった。なんと、登場する園丁の名はムラカミ。して、舞台は東京。
    村上春樹の長編を読み終えた直後がこの本だったので、何か親身な距離感を覚えた。

    ネッテルの専らの手法は一人称。有機体のごとく、シュルシュルとその人物の心に潜入し、彼彼女の社会的枠を取っ払ってむき出しに料理する。

    健康と非健康、富裕と貧困、依存と自立、健全と精神疾患の垣根を取っ払って「真の姿」に人間のありのままを問うている感じ。

  • 2022.12.31
    かなり変わった癖の持ち主たちの短編集。
    不穏だけど美しいっていうふしぎな感覚を楽しめる作品だった。。

    お気に入りは
    ブラインド越しに
    桟橋の向こう側
    花びら

  • 『赤い魚の夫婦』よりさらに不穏さを強めに感じる。こちらのほうが先に書かれているということなので荒削りなのかとも思うが、それが魅力的。

    『眼瞼下垂』はまぶたの話でつい小川洋子を連想してしまうし、『盆栽』は舞台が東京で出てくる園丁の名前が「ムラカミ」なので村上春樹フォロワーなのかな?と思ったり。『花びら』は気持ち悪さのほうが強かった。
    『桟橋の向こう側』は(とても)ひねりのある少女物で、私は好きだな。

  • 文学ラジオ第105回紹介本
    https://open.spotify.com/episode/3x0g0esPOrftzthFfdNi2O?si=ef562801234e46c3

    個人的にはネッテルを最初に読むなら「赤い魚の夫婦」のほうがよいかと思う。
    ただ「赤い魚の夫婦」に出てきた「菌類」のような話が好きな人は、この短編集はすごく楽しめると思う。どれも短いのですぐに小説の世界にトリップできるのでオススメ。

  • 好き嫌いはおいといて、まあ自分は楽しめたかな?という感じ。
    しかし、あとがきに書いていあるように「世界中から大絶賛」みたいなのには首をかしげる。
    癖があって、読む人を疲れさせ、選ばせるタイプかと思う。いわゆるメンヘラこじらせ文学なんだが、「生理のしんどさを理解しろや男ども!」って言われても、男にゃ子宮ないしさ、作者に共通する、こういう女の出し方には自分はうんざりするよ。でも短編としてもまとめ方はとても上手な人かと思う。

  • この町の多くの人々同様、私の父は、他人に寄生した仕事をなりわいとしている。(「眼瞼下垂」より)

    開いて一文目からシニカルで最高だなと。
    いずれの短編も、「分かり合えない誰か」「共感されない行動や感情」の話で、他者性に関する物語だった。

    わからないけどすき。わからないけどわかる。わからないけど美しい。言語化できないなにかを信じる姿勢が良いなと。

    “やせっぽちの犬のそれのような、つんととがった乳首に彼女をひきよせた。彼女は唇の薄い、冷たい魚の口でわたしの乳首を吸った。恐怖を振りはらうのに必要な力をすべて吸い上げようとするかのように”
    ただその一方で言語運用の美しさや特異性も良い。

  • 人は自分に理解できない暗闇をもった存在をモンスターと呼ぶが、こちらからは見えない世界がいかに彩り豊かな世界かを知ってしまえば目を逸らすことができない。
    ネッテルの用意した覗き穴から見た世界にどうしたって魅了されてしまうのだ。

  • 人間くさい
    ラストのベゾアール石は良かった

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著者プロフィール

Guadalupe Nettel
 1973年、メキシコ生まれの作家。メキシコとフランスを行き来して育つ。フェミニズムとジェンダーをテーマとした創作に取り組み、2008年にアンナ・ゼーガース賞受賞、ラテンアメリカ文学のこれからを担う39人のうちのひとりにも選ばれるなど、早くから期待を受ける。
 2013年に第三回リベラ・デル・ドゥエロ国際短編小説賞(本作)、2014年にはエラルデ文学賞を受賞するなど国際的に高い評価を受け、海外では毎年のように「今年のベスト10」に取り上げられる。
 初邦訳『赤い魚の夫婦』(2021年8月刊)が、2022年第八回日本翻訳大賞最終選考作品に。

「2022年 『花びらとその他の不穏な物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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