- Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
- / ISBN・EAN: 9784769022206
感想・レビュー・書評
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マリー・ホール・エッツ作。こみやゆう訳。
今までに読んだマリー・ホール・エッツの絵本のなかでは、めずらしくリアリズムに徹している。これはメキシコから来たアメリカ移民のお話。
両親と兄のマルコ、姉のマリア、そしてロベルト本人、妹のリタ、生まれたての妹という7人家族。
両親はスペイン語しか話せず、兄のマルコだけが英語を話せる。
やんちゃなロベルトは、兄や姉たちについて近所の店に行き、お金もないのに売り物のキャンディーを食べてしまったり、
お母さんが作ってくれた食事が気に入らないとお皿をひっくり返したりする。
両親は忙しいのでおとなりのテレサおばさんにロベルトとリタと赤ちゃんは預かってもらうことがあったが、
ロベルトはいたずらっこだから、食事のとき以外は放置される。しかたなくロベルトは三輪車で町をうろつくしかない。
そしてまたいたずらをする。けれども、ロベルトは悪気があってやっているわけでもないらしい。
そうこうするうちに、両親が食事のことでケンカをし、お母さんが家を出ていってしまう。すると、ロベルトのいたずらはエスカレートしていく。あげくのはてに警察まで来るしまつ。
お父さんは警察から注意を受け、「子どもセンター」を紹介される。ロベルトはまもなくセンターに通い始めるのだけれど、ここでもやりたい放題。
(だんだんとロベルトがわが子みたいな気がしてきて、果たしてうまくなじめるだろうかと心配していたが)ロベルトは「学校」(彼は兄を真似てセンターをそう呼んでいる)が好きになり始めた。
そしてさらに、文字というものを教わり始めた。
自分の名前を書けるようになり、紙なら何にでも字を書くようになる(分かる笑)。
ロベルトは書くことに夢中になっていく。次の1文がぐっときた。
「ロベルトは、ある日とつぜん、てがみをかいてみたくてたまらなくなりました。」
ロベルトは兄のマルコに頼んで、手紙に書きたいことを英語にしてもらい、それを書き写すことで手紙にした。そして最後に自分の名前を書いた。
(内容は書かないけれど、この、シンプルイズベストな短い手紙がたまらない)
宛先はお母さん。住所がわからないので、伯父さんに手紙を出してお母さん宛ての手紙を届けてくれるように頼む。
息子からそんな手紙をもらったお母さんはもう、いてもたってもいられずに帰ってくる。
ーーとはいえまあ、根本の問題は、お母さんの作る料理がまずいと言ってキレるどうしようもない父親なのだけれど。何も解決していない。
お母さんは料理が上手になって帰ってきて、息子はいたずらをしなくなり、お父さんは上機嫌。
(思わず、「お前がいちばん心を入れ替えろ」、と絵本にツッこんでしまった)。
ともあれ、お父さんとちがって利口なロベルトは、暴力衝動によって解決・発散しようとせず、もやもやとした衝動を言葉にして伝えるすべを習得したのでした。めでたしめでたし(ほんとに笑)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
メキシコからアメリカへ移住した7人家族の次男ロベルトのお話。ある日、両親がけんかをし、お母さんが家を出て行ってしまいます。ロベルトは日中施設に預けられることに…
エッツの体験に基づくお話。絵も文章も派手さはないけれど、心の深いところを丁寧に追ってくれているという印象。
ロベルトは悪気はないけれど、言葉が通じなかったり、わからないことが多いせいで、周りの人に叱られたり誤解されてしまいます。それが私の心に突き刺さるようでした。子供のすることには理由があるかもしれないのに、大人は想像して理解してあげようとしていない。私もその一人かもしれない。
少しずつロベルトが施設に慣れて、文字を覚えて行くところもゆっくりで好き。ロベルトがくるくる回ってぼく、ロベルト!という表紙のシーン、いいな。嬉しいなんて言葉がなくても伝わってくる素晴らしさ。
絵本だけど、しっかりした読み物。
小学校中学年くらいからかな。
そして学校の先生やパパママに。
やんちゃな男の子を抱えてる方に。
特別支援学級などの方が読めば、すごくわかることがあるのかもと思った。
家庭の絵が描き方もリアルで子供に媚びない感じが好き。一冊の本を読んだような満足感。 -
メキシコ移民である両親の元、5人兄弟の真中のロベルトはなかなかのいたずらっ子。本人は、いたずらしているわけではなく、興味のあるものに素直に反応しているだけなのだが。ロベルトの両親は英語が話せないので、家ではスペイン語で話している。小学校に行っている長男と長女だけが英語がわかる。まだ学校へ行っていないロベルトは、町の人たちに注意されても怒っていることは表情でわかるが、何を注意されているのかがわからない。
ある時、両親がけんかをして父親が母親を追い出してしまいます。父親は幼い妹二人を祖母に預けます。父親が庭師の仕事に出かけ、兄と姉が学校へ行っている間ロベルトは一人で町を三輪車で遊んでいますが…。
貧しい移民の子として育つロベルトの素直な気持ちが、少しづつ家族や地域の人たちに受け入れられていきます。アメリカの抱える様々な人種の問題を、子どもにわかりやすく訴えています。
原作は1967年、もちろんトランプ大統領のメキシコとの壁問題が起きる前の話です。 -
ロベルトの行動はどうしてなのか、こどもと話しながら。作者の目線がとても丁寧。"セツルメント活動"で出会った実在の子がモデルとのこと。
ロベルトの気持ちがわかるね!と熟読。
言葉が通じない中、
お父さんお母さんも、言葉に不自由する中、
英語が使えるのは小学生のお兄ちゃんだけ。
たくさんのきょうだいとの暮らし、
親が仕事に行く間…
子育て中の身に沁みるシチュエーションが満載。
ロベルトの居場所があたたかいものでよかった。
自分の名前を書いてもらって、嬉しそうなロベルトの姿は胸打たれる。
メキシコ、アメリカ
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メキシコからアメリカのカリフォルニアに来たロベルトの家族の話。家族の中で英語が話せるのは兄のマルコだけ。そんなときに夫婦喧嘩でお母さんはお兄さんの所に出て行きました。ロベルトは子どもセンターで英語を勉強します。そしてお母さんに英語の手紙を書きました~
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大人から見ると、子どものいたずらって、手を焼いて何とかしなくてはって思うのだけれど、
子どもの立場からすれば、興味のあることを素直にそのまま行動しただけなんだなぁ、と。
読んでいると、何だか胸がヒリヒリと痛みました。
どちらの気持ちも分かるから。
文字を書く。
文章にする。
人に伝わる。
理解される。
認められる。
それが、どれだけ人をおちつかせ、喜びをもたらせるのかということを深く思いました。 -
メキシコから移住してきている、貧しい家族のお話。お話そのものは古くさくは感じませんでした。大人から見たら、ロベルトの行動はいたずらで、悪い子なのでしょうけれども、ロベルトは純粋に子どもらしく生きています。
スペイン語しか話せなかったロベルトが徐々に変わっていきます。ことばの力ってすごい!と思わせる作品でした。 -
ここ最近、ステイホームの影響もあってか、いつもより多くの書評集が上梓されている気がするし、雑誌の特集も頻回に目にする。そんな中から拾った一冊。書店でこの絵本を目にしても、絵が好きじゃないからきっと手を伸ばさない。読んではみたけど、内容もそこまで素敵なものとも思えず。
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ちょっとした違和感は、エッツの体験に基づくものだったからか。大人が決めつける悪い子は子ども側からすると悪い子じゃないな。気持ちを言葉や文字を使って伝えられることは偉大だね。ロベルトの中から溢れた言葉のパワーがロベルトの世界を変えた。