遠い家族 (ラテンアメリカ文学選集 10)

  • 現代企画室
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773892130

作品紹介・あらすじ

電話帳で同姓同名の人を探し出すという、ふとした遊びが、現実と関わりをもち始めたとき、植民者エレディア一族の汚辱に満ちた来歴が明らかになる、完璧な小説。

感想・レビュー・書評

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  • 主にフランス、ときにメキシコが舞台の幻想ホラー。フエンテスのほかの長編より汗臭くなくてさらっとしているし、その都度だれが話しているのかもだいたいわかる中編なので、『アウラ・純な魂』がよかったけれど『脱皮』は意味不明!という人にもお勧め。

    主人公の老人は個人的な動機を抱えつつ、礼儀正しく「成り行き上」のダンスを踊っているうちに物語の大渦に巻き込まれていく。繰り返されるイメージはだれの幻想とも記憶ともつかず、歴史の流れや個人の境界が崩れていくさまはうっとりするほど幻惑的。

    最後に「私」が超現実的なものを目撃する以降のくだりは圧巻で、読んでいる自分自身が巻き込まれていく感覚を堪能できた。本を閉じて、ひとつの物語を読み終わった満足感と同時に、まだ何かがうごめいている感じが続いている。

  • (小説)「開かれた結末、終わりのないストーリー、言ってみれば責任を、その本来の場所に、すなわち読者一人一人の良心と想像力に突き戻し」ながら、新旧両大陸の人間のアイデンティティの問題に迫る。

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著者プロフィール

外交官の息子としてパナマに生まれた後、キト、モンテビデオ、リオ・デ・ジャネイロ、ワシントンDC、サンティアゴ(チリ)、ブエノス・アイレスなど、アメリカ大陸の諸都市を転々としながら幼少時代を過ごし、文学的素養とコスモポリタン的視点を培う。1952年にメキシコに落ち着いて以来、『オイ』、『メディオ・シグロ』、『ウニベルシダッド・デ・メヒコ』といった文学雑誌に協力しながら創作を始め、1955年短編集『仮面の日々』で文壇にデビュー。『澄みわたる大地』(1958)と『アルテミオ・クルスの死』(1962)の世界的成功で「ラテンアメリカ文学のブーム」の先頭に立ち、1963年にフリオ・コルタサルとマリオ・バルガス・ジョサ、1964年にガブリエル・ガルシア・マルケスと相次いで知り合うと、彼らとともに精力的にメキシコ・ラテンアメリカ小説を世界に広めた。1975年発表の『テラ・ノストラ』でハビエル・ビジャウルティア文学賞とロムロ・ガジェゴス賞、1988年にはセルバンテス賞を受賞。創作のかたわら、英米の諸大学で教鞭を取るのみならず、様々な外交職からメキシコ外交を支えた。フィデル・カストロ、ジャック・シラク、ビル・クリントンなど、多くの政治家と個人的親交がある。旺盛な創作意欲は現在まで衰えを知らず、長編小説『クリストバル・ノナト』(1987)、『ラウラ・ディアスとの年月』(1999)、『意志と運』(2008)、短編集『オレンジの木』(1994)、『ガラスの国境』(1995)、評論集『新しいイスパノアメリカの小説』(1969)、『セルバンテス、または読みの批判』(1976)、『勇敢な新世界』(1990)、『これを信じる』(2002)など、膨大な数の作品を残している。

「2012年 『澄みわたる大地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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