家のない少年たち 親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 192
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778312367

作品紹介・あらすじ

詐欺、闇金、美人局、架空請求、強盗-家族や地域から取り残され・虐げられ、居場所を失った少年たちは、底辺で仲間となって社会への「復讐」を開始する。だが大金を手にしてもなお見つからない、"居場所"。彼らはそれを探し続ける。取材期間10年、語られなかったこの国の最深部を活写する、震撼ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  •  鈴木大介のルポは、第1弾『家のない少女たち』、第2弾『出会い系のシングルマザーたち』をそれぞれ読んで、感銘を受けた。
     第3弾にあたる本書は、『家のない少女たち』の読者たちからの声――「家のない少女らの話はわかったけど、家のない少年たちはどうしてるの?」――に答えるべく書かれたものだという。

     前2作に連作短編集の趣があったのに対し、本書には全編を通しての「主人公」がいる。龍真、スギ、マー君、サイケの4人がそうだ。その4人を軸とした長編ノンフィクションの趣。それ以外の「家のない少年たち」も、サブストーリー的に出てくるのだが。

     少年鑑別所で出会った4人は、義兄弟のような絆で結ばれ、出所後はチームを組んで強盗などの犯罪をくり返していく。昔ならヤクザ組織などに吸収されたであろう彼らだが、どの組織にも属さない。「ネットや携帯などのツールの発達が、少年たちを犯罪現場の“主役"にのし上げた」時代ゆえだ。

     そんな「犯罪現場最前線」の少年たちを、著者は綿密な取材のもと、いきいきと描き出す。ほかにも、振り込め詐欺集団で働く少年などの肉声が記録されている。

     著者が出会ったプロの犯罪者になった少年の多くが、親の虐待やネグレクトなどを経験した「家のない少年たち」だった。

    《龍真たちは、殴られ捨てられ放置され、腹が減ったから万引きして、万引き覚えたらその糧を年上の不良に搾取されて、トカゲの尻尾切りで一発逮捕、一発少年院。審判しようにも母ちゃんはシャブ中で更生施設の中だ。
     誰も面倒なんか見れないから、満期みっちりブタ箱生活。仮退院や再入院を繰り返せるだけの環境のある不良少年たちを指くわえて見ながら、塀の中で不公平に泣く。》

     まるで『スラムドッグ$ミリオネア』のような世界が展開され、「ホントに日本の話なのか?」と驚かされる。主人公の一人・龍真がポツリともらすこんな言葉が印象的だ。

    《「俺、『クローズ』って漫画嫌いなんすよ。(中略)高校に通えてるヤツが不良とか意味わかんねーし。他のヤンキー漫画みたいのとかみんなほとんど高校行ったりとかで、クソだなって。不良高校行かねーよ。そういう話をスギやサイケたちとして、俺ら高校行くとか考えたこと一度もないし、そういう選択肢ないじゃないですか」》

     犯罪を仕事としてつづける「家のない少年たち」を描きつつ、著者は彼らが心の鎧の下に隠した寂しさ、哀しみにまで迫っていく。その点にこそ著者の真骨頂があるのだが、しかし本書は前2作に比べ共感しにくい面がある。「犯罪を礼賛する気はさらさらない」と著者は「まえがき」で言うのだが、それでも犯罪をどこか肯定的に描いている印象を随所で受けるからだ。

     『家のない少女たち』で、援交家出少女たちに著者が注ぐあたたかいまなざしに、私は共感を覚えた。しかし、売春と強盗などの凶悪犯罪は、やはり次元が違うのである。少年たちがくり返す犯罪の模様をここまで詳細に描写する必要があったのかと、やや疑問。なにしろ、その手の場面はまるでノワール(暗黒小説)のようなのだから。

     とはいえ、犯罪者となった少年たちの世界をリアルに描き出してものすごい迫力ではあり、一読の価値はある。

  • 鈴木大介の『家のない少年たち 親に恵まれなかった少年の容赦ないサバイバル』

    何故犯罪に手を染めるのか…。

    生きて行く為の手段に犯罪しか選択肢が無かった状況等々のノンフィクション。

    考えさせられる所もある。

    2014年読破

  • おもしろかった!

  • 不良を「悪いヤツ」という一括りにしてはいけないと感じた。
    彼らなりにそうせざるをえなかった経緯がある。

    この本はあとがきが良かった。
    すべてのことを「誰かのせいにしない」、そう生きるのだと。
    自身にも当てはまると感じた。

  • 世の中は不公平に満ちている。
    虐待された被害者の子どもが腹を空かせて万引きをし加害者になるのか。市井の大人たちはそのような子どもたちのために何をやれたのか。

    犯罪内容のすごさに若干引く。
    これから更に格差社会になり、底辺の犯罪者は増えていくのか…。

  • ふむ

  • 成長譚として読める面もあり、後味は悪くない。が、あとがきにもあるように、取り上げられた少年たちはまともなほうで、書けなかったという「最底辺」の人たちが気にかかる。救済の可能性はあるのか、救済できたポイントはいつの時点だったのか?

  • 面白かった
    女の子の方は読んでて女性はああやって生活ができるんだろうと思ってたが、
    男もこうやってできるのね
    という感じ
    どちらも犯罪に手を染めざるを得ないのか

    問題は根深いと思う
    そういう形で家族の意味を見出すのは嫌だが
    家族とのつながりなどがあることで、
    犯罪行動等をとる規制となっている部分もあるのかもしれない
    こういった漏れ出してしまった人たちをどうするかというのは、
    ほうってはおけない問題なんだろう

  • 家のない少女は売春や風俗
    家のない少年は犯罪や暴力で

    言われてみればそうだとしか思わないけれど
    一般的な家庭で育つとあまり意識して考えてみない事かもしれない。

    風俗に嫌悪感を抱く人は何故そこで働くかまでは考えずに嫌悪する場合が多いだろうし
    強盗や詐欺をする人達は何故そうするのかは考慮されずに嫌悪され。
    まあ、犯罪の場合は理由がどうであれ同情しづらいけれど。
    貧民側はお金を奪われた方に同情しまくる。
    汗水流して働いたお金を失ったら殺意わくかと。

    この本を読んで問題だと思ったのは「経歴」云々の件。
    母子家庭で、母親が男のところに転がり込んで生活していて、その後DVで祖母の所へ行ったものの、小学生の時に祖母が他界、施設へ行くも環境が悪く、学校でも救いの手がなく、中卒で、少年院行き

    …就職するのに履歴書、どう書けばいいのか。確かに困る。更生に力を入れて採用する企業の話も聞いた事がある気がするけれど
    そう簡単にそこらにはないですよねえ。
    しかも犯罪で生活を続けていい歳になってしまったら
    ホントにもう、履歴書の経歴をどうすれば良いのか。
    何をするにも住所を書けないとどうしようもないなんて経験した事がないので本当にどうするんですか、こういう場合。
    経歴も住所も書けない人の働き口…
    あきらかにうさん臭い履歴書不要で日払いしかも手渡しの仕事とか駅とかで看板持って労働者募集する能力が低くて普通の仕事で使ってもらえないとしか思えないような人や、障害があるのか健常者には見えない言動をする人が多い、某派遣みたいな所しか行く所がないのでは。

    努力してカタギの中に入って行く人もいるようですが
    簡単ではないうえに
    その困難に立ち向って行こうと思えるだけの「何か」を持てるかというのは
    …運、もあるかも。と思ったり。
    この本に出て来る1人は恋人が出来た事がきっかけで変わったようで。
    ありがちだけど結局愛って凄いですね;

    全ての犯罪者がこの本に出て来る方達ほど家庭に恵まれなかったという事はないと思いますが
    犯罪者を減らす為に必要なのは子供を守れる社会なのかなと思いました。
    じゃあその為に何が出来るかと問われれば
    回答に困るのですが
    自分の周囲で気付く事があれば児童相談書に連絡する程度でしょうか。
    大切なのは考える事。
    そういう意味で明確な回答はなくとも
    中学生あたりの年代の人に読んでみてもらいたいです。
    かいつまんでまとめて授業などでも使えそうに思うのですが。

  • 読んでよかった。読み終えてから読まなければいけないと感じた

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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