縁もゆかりもあったのだ

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 361
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778317508

感想・レビュー・書評

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  • こだまさんの作品と言えば、キレキレのギャグセンスの自虐というイメージだったけど、この作品は自虐減、人のあたたかみ&センチメンタル増という感じで、持病などいろいろ大変だけど、こだまさん今幸せなのかなあと勝手に嬉しく思った。
    ※かと言って自虐のキレがなくなったわけじゃない。男湯と女湯を間違えて「洗顔フォームで股間だけを隠す」エピソードとか最高。

    願い事を書いて飛ばすと叶うという天燈に書かれた母の思いが泣ける「祈りを飛ばす人、回収する人」、
    父がオートタイマーの「カメラが点滅しているあいだに戻ってくることができず、ひとりだけ輪郭のぼやけた「移動中の物体」としてフレームの隅に収ま」る「ただ穏やかなホノルルの夜」など、
    家族の話を含むエッセイが特に良かった。

    あとがきに、「父が重い病に罹っている」「いつもの場所も、いつもの人も、簡単に当たり前じゃなくなる」とあるが、こだまさんが家族と幸福な日々を送って、面白いエッセイをたくさん残してくれることを強く願う。

  • 今回の本もとても面白かった
    こだまさんの旅にまつわる色々なことのエッセイ
    どの章も目の奥に景色が浮かぶような、穏やかで丁寧な語り口が読みやすくするっと読めてしまう
    そこかしこにユーモアが散りばめられていて、にやにやするのが抑えられない、夕張の話とかめちゃくちゃいい

    猫の話でひとり号泣してしまった
    猫に対する愛が文の間からにじみ出ていた、ああ、ここんちの猫は本当に愛されてたんだなとしみじみ…

    単行本が出る度に必ず買っている、とても好きな作家さんなので身体に気をつけてぼちぼち素敵な文章を書いていってほしい
    また次が出たら絶対に買うと思う

  • なんて素敵な雰囲気をまとった文章を書く人なんだろう。
    初めて読むのが新作だった。
    だから、他の作品もぜひ読まなければいけない。

    こだまさんの旦那様も素敵だし、ご家族も。
    こだまさんの文章がそうさせるのかな。

    久しぶりに京都に行きたいと思った。

  • 人間関係に疲れていました。
    そんな時、以前の仕事繋がりで知り合った方から
    勧めてもらった本です。 
    いくつもの、著者のエピソードを描いたエッセイ。 
    読んだ後、「なぜ、自分ばかりが不幸なのだと自惚れていたのだろう」
    「自分の捉え方で人生っていくらでも明るく見えるんだ」
    そう思いました。
    この本をきっかけに、本を勧めてもらった方と文通を始めようと思っています。
    ありがとう。ちっちゃいさん。

    #人間関係 #再起 #エッセイ #読みやすい

  • この作者のエッセイの本は3冊持っているが、言い方悪いかもしれないけれどこの本が一番明るい感じがする。以前の著書で親御さんとの関係はあまり良くないイメージがあったが、さまざまな経験を経て、色々あることはあるんだろうけど、旅を楽しめる関係性になれてよかったなぁ、と思った。コロナ禍なこともあって、作者の目を通して描かれた場所が鮮やかで、まるで自分も旅を一緒に楽しむ感覚になれた。

  • 縁もゆかりもない土地のはずなのに、過去の思い出と結びついて親しみや懐かしさを感じることがある。読みながらほっこりした気持ちになった。
    個人的には牛糞号の話が面白くて一番好き。

  • 著者にとっては4冊目のエッセイ集だそうだが、私がこの人の著書を読むのは3冊目だ。

    旅の思い出を綴った一冊だが、この人のことだから微塵もリア充臭やキラキラ感がない。そこに好感とシンパシーを覚える。

    著者本人も、夫も、そして旅の道連れとしてしばしば登場する著者のご両親も、エッセイを読むかぎり地味な感じの人たちなのに、みんなキャラが立っている。

    彼らのやりとりが綴られるだけで面白い。真似のできない不思議なユーモア感覚がある。

  • 過ぎ去った時間を想う切なさと、ハートフルな愉快さが同居する面白エッセイ。
    東京に向かうのにも一大決心が必要だったエピソードや、親との旅行、パートナーとの引っ越しの話などなど。
    どのエッセイもとても愉快だった。

    愛猫が死んでしまったあと、これまで暮らしてきた借家を車で回ったエピソードと、学生時代を過ごした地方都市を歩きながら、当時を思い出す話にはしんみりさせてもらえた。

    かつて訪れたことのある場所や長い時間を過ごした場所を巡る旅に魅力を感じる。
    時間が経てばその場所も自分ももちろん変化する。その時々の友人や好きだった人ももちろんそこにはいない。けれど、そこに行けば忘れていた思い出がよみがえることもきっとあるだろう。あの頃の友人に再会したような気分になれるかもしれない。しょうもない懐古主義だってことはわかるけれど、やはり過去に勝るものはないように思えてしまう。

  • 2021.07.06

    「おとちん」からずっと新刊が出るたびに読んでいます。この淡々とした諦めがにじむ、上がったと思ったら落ちるこの文章が好きです。

    わたしもメロン大好物なので、ぜひ食べ放題してみたい!2人で夢中で食べても3玉なのね…。
    網走監獄の話で、2人が夢中になってるという漫画は「ゴールデンカムイ」かな。いまちょうど国立アイヌ博物館で展示をやってるけど2人も行くのかな?などと思った。

    年末の温泉で、男湯に間違えて入浴した話にふふふっと笑いが漏れた。さすがこだまさん。抜けすぎている。

    飛行機が遅れて思わず老夫婦をタクシーで反対方向へ送った話、どこかで読んだことあるなぁと思っていたらブログで連載されていたものなんですね。終わってしまったとのことでさみしい。こだまさんの旅をもっと読みたい。
    旅エッセイ大好きなので、このエッセイもとても好みでした。

  • 一緒に旅してるみたいだった、いろんな「旅」の話が出てくる。やわらかな書き言葉と好対照な、けっこう雑な発言の奔放さに、勝手に自由な精神を感じる。落ち着いた語りの中で唐突に笑わせてきて時々急降下する、ジェットコースターみたい。他のこだまさんの本もそうかもしれない。

    雷おばさんと呼ばれたお母さんのこの穏やかなかわいらしさを見るにつけ、年月はどうやって人を変えるのだろうと思う。「ただ穏やかなホノルルの夜」の姉妹の姿に一緒に穏やかな気持ちになったり、「猫を乗せて」に自分の思い出がかさなったり。引越し先で待っていた異動先の人々とか、学生時代の周囲の人々の話なんかも出てきて、豊かな旅と豊かな人間関係がやさしく繋がっているみたいに思える。

    度々意外な言葉のチョイスにニコニコしてしまうんだけど、「熊の恋文」に出てくる言葉が特におもしろくて、「アル中の親族が設計した」実家で、「百合のような甘いシャンプーの香りが」漂っているところを想像すると、ちぐはぐなものが並んでいるみたいなのに、収まりがいいような気もする。どの話の言葉もとっても素敵だった。

    写真もたくさんはいっていて楽しかった。のびのびした読後感、わたしも旅したい。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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