「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生;源流「エヴァンゲリオン」「まどかマギカ」と虚構と現実の芸術論

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  • 彩流社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779128769

作品紹介・あらすじ

2022年12月にアニメ映画が公開予定のベストセラー小説『かがみの孤城』(辻村深月、ポプラ社、2018年本屋大賞受賞)は、学校で傷つき居場所をなくした少年少女が居場所を求めて不思議な居場所(孤城)で繰り広げる物語。大きな感動を呼んだ衝撃のラストシーンは、2017年単行本の元になったポプラ社のPR誌連載版では想定されていなかったものであり、むしろ矛盾さえするものであった。単行本への大改作を詳しく検証し、新しい結末が生まれた背景を考える。また、日本の SFアニメ史上最高傑作である『エヴァンゲリオン』シリーズと、『エヴァ』に強い影響を受けて生まれた『魔法少女まどか☆マギカ』の2作品を『かがみの孤城』の源流作品と位置づけ、パラレルワールドなどのキーワードから比較し、現実の相対化、虚構と現実の関係を問う。

序章 孤独な少年少女の居場所としての「かがみの孤城」
第1章 連載版から17年版への大改作
第2章 「かがみの孤城」が示した類型化への抵抗
第3章 「かがみの孤城」と「魔法少女まどか☆マギカ」
第4章 虚構の中の創造主――「エヴァンゲリオン」と円環の物語

感想・レビュー・書評

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  • 前半は、連載版と2017版の異同について扱っている。

    読むまで、『かがみの孤城』が途中で打ち切った作品であることを知らなかったので、どのような変更が為されたかというのは、好きな人なら読みたい部分かもしれない(しかし、説明が長い)。

    後半は、まどマギとエヴァと比べながら、その構成を見る(箇所もあるのだが、まどマギ論とエヴァ論として各々に読んだ感じがする)。

    以下、私の勝手な感想なので、この本とはあまり関係がなくなるかもしれない。

    まどマギでは少女たちが、(シン)エヴァでは14歳の少年少女が、年齢不相応の「契約」を交わして、敵を倒すために活躍する。

    不思議なことに、能力や認知を得る代償として、身体的な成長を止められてしまう彼らが、どうにかして「その先」に進むために、もがいているようにも見える。

    かがみの孤城とどう重なるのか、難しい所なのだけど、少年少女アニメで繰り返されてきた「敵を倒して成長する」ことは、虚構だ。
    現実には「敵」が存在しても倒してはいけない。
    そんな中で、この本で言う「居場所」を現実に生み出すことは、易しいことではないと、ある種の人々は(もしかすると多くの人々は)知っている。

    だから、虚構の力を借りて現実を改変したストーリーが、読者の現実をエンパワーする。
    かがみの孤城で、登場人物が願ったことの変化が、印象深く感じられる。

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著者プロフィール

文学・芸術論ライター。
多くのファンを刺激した代表作『エヴァンゲリオン解読』(三一書房、2001年)は、96~97年のいわゆるエヴァンゲリオンブームが終わった後であったにもかかわらず増刷を重ね、文庫版『完本 エヴァンゲリオン解読』(静山社文庫、2010年)として読み続けられている。童話作家、シンガーソングライター、数学教師としても活躍。絵本『ガラスの中のマリー』(三一書房)ほか、アンソロジー『わすれものをした日に読む本』(偕成社)や『月刊MOE』などに作品を掲載。

「2023年 『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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