- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784779170102
作品紹介・あらすじ
政府や東電、学者に対する強い不信と、マスメディアや論壇の機能不全により、いま日本を〈不信の連鎖〉が覆いつくそうとしている。
「唯一の被爆国」として、核兵器なき平和な世界の実現をナショナル・アイデンティティとして育んできた日本だが、大震災と原発事故後、非論理的でセンセーショナルな〈反原発熱〉にうかされ、デマや差別、暴言がとびかう構造的暴力が出現した。
原発推進派のレッテル貼り、反原発美談、原子力をめぐる「安全神話」から「危険神話」への単純なシフト。だが、実際には、原子力の神話化がより強化されただけではないのか?
イデオロギーで潤色し、極端な二項対立で問題を過剰に政治化する―これは、つねに感情的なテーマであり続けた歴史問題をめぐる言説と通底するのではないか?いま日本を呪縛する「放射能による不信の連鎖」を断ち切るための提案とは。
感想・レビュー・書評
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回送先:品川区立源氏前図書館(OM05)
西川長夫はかつて公演で「あんたもうしゃべらんでええわ」といって中断させられたスピーチで、「国民国家に反対する運動自体が新たな国民国家への運動へと回収されるという性質が国民国家の力学には存在する」と言いたかったことがあるといいう。小菅の本著もまた同様に、「核(原子力発電・あるいは核兵器)に反対する運動自体が、新たな核(原子力の更なる神話の形成)を求める運動へと回収されている」ことへの強い危惧がその根底にあるのだろうと考えられる(これは評者もまた同様に思うことであるし、ゆえに評者も小菅も「反核」・「日本型平和運動」のシンパから口汚い非難を浴びることになるのである)。
本書において小菅が重視しているのは、過去と現在の間に横たわる「埋めがたい距離」の問題、あるいは「多層的に折り重なる」過去の事例を一刀両断することなく、多層的なまま直視することの重要性であり、聞き手(あるいは読み手)にとって「耳障りの良いストーリー」だけをえり好みしたり、無意識的に編纂しやすい私たちの問題に視点を当てていく。
「いくつもの声」に耳を傾けること、「過去は死なない」がゆえに生じるさまざまな「見たくないもの」への真摯なまなざしをいかにして維持していくか。問われるべき課題はあまりにも山積したままである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私の頭でフォローするにはちょっと難しい本でした。それでも、多様な考え方や生き方が共存するには譲り合う事が大事と言う部分には共感しました。
福島が過度に政治利用される事への懸念なども参考になりました。 -
著者はニュートラルな立場の近現代史の学者であり、戦後和解について研究されています。その見地から福島第一原発事故のこれまでとこれからを解明されています。著者らしい優しさが感じられる著作です。