リベルテに生きる パリ市長ドラノエ自叙伝

  • ポット出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784780801040

作品紹介・あらすじ

「理念は実証されて初めて意味がある。すべての人権の中で、最も大切なのは自由だ」



チュニジアで過ごした子供時代から政治活動に身を投じるまで、彼の思想・政治哲学がいかに育まれ、パリ市政においてどのように結実したのか。



ゲイであることをカミングアウトし、6年前パリ市長に当選したドラノエ氏が熱く書き下ろす半生。

感想・レビュー・書評

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  • 『すべての人権の中で、最も大切なのは自由だ。文明化された人間の根底には、意志、生活、交際、好み、教育、呼吸、娯楽、その他諸々の自由がある。革命や社会正義といった、その他の至上命令のために、自由を犠牲にしなくてはならないという考えを認めることは、私にはできない。そうした類の論理は共産主義体制の正当化に使われた。その結果、共産主義体制の には、デモクラシーも正義もなかったのである。

    自由は個人の権利の中で最大のものであり、他のすべての権利の前提条件である。たとえばもし、自分が何者としてどう生きるのかを自ら決める、完全無欠の侵し得ない権利が個人に与えられていることをまず先に認めなければ、どうやって差別ー民族、宗教、性別、アイデンティティに由来するーを撲滅することなどできるだろうか。個人の生活にも、集団生活にも、自由ほど神聖なものは他にない。

    だから私は、心の奥底にあるものが侮蔑的な扱いを受けていると怒りを感じる。私は、反ユダヤ主義と同じく、イスラム嫌いを嫌悪する。同様に、性差別やホモフォビアに対しても怒りで震える。あるアイデンティティが、自分は他よりすぐれていると言い出せば、そこには排除の論理が姿を現し、それと一緒に憎しみや対立、苦しみが生まれる。』

    チュニジア生まれでフランスに移住し、ゲイで、パリ市長で、ホモフォビアに刺されたこともある、情熱的で自由をこの上なく愛する、政治家。

    本物の人の言葉。

    薄っぺらくて、言っても意味のない空疎な言葉とは違う。

  • 以前から一度は読もうと思っていた本である。
    彼はパリ社会党として初めてパリ市長に就任し、かつ同性愛者であることを公言した政治家である。

    彼の政治信条は典型的な修正主義・社会民主主義のそれであるし、私は社民主義よりもう少し革新であるから、少し相容れないというかずれている部分もあるが、概ね考え方は一致している。「社民主義をグローバル化する」という考えには、首肯できる。

    日本だと、革新・左翼勢力は祖国をけなしているかのようなイメージが持たれるが、ベルトラン・ドラノエはフランスを非常に愛している。しかしそれはナショナリスティックなそれではなく、むしろ郷土愛的なそれである。自分も日本の文化や歴史は非常に興味がある。むしろ彼は市場至上主義がその国やエスニック的集団の文化を破壊することに危惧をいだいている。しかしながら保護主義に走ることはなく、社民主義を国際化することによって、その市場至上主義に対抗しようと、彼は考えている。

    海外の政治家は、個々人それぞれ哲学を持っているようだ。日本の政治家がどれほど哲学を持っているのか、少し考えてしまったが、哲学を持っていそうな政治家ほど今政治に携えてない状況にあるように思っている。

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