元少年Aの殺意は消えたのか 神戸連続児童殺傷事件 手記に見る「贖罪教育」の現実

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781613567

作品紹介・あらすじ

なぜ『絶歌』は「2500日」を描かなかったのか?元東京少年鑑別所法務教官が手記の行間から読み解く「更生プログラム」の落とし穴と発達障害の可能性。

感想・レビュー・書評

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  • 「元少年Aの殺意は消えたのか」草薙厚子著、イースト・プレス、2015.08.24
    191p ¥1,404 C0095 (2020.05.19読了)(2016.05.11購入)
    副題「神戸連続児童殺傷事件 手記に見る「贖罪教育」の現実」

    【目次】
    はじめに 『絶歌』から感じた「違和感」の正体
    第一章 元少年Aが「矯正教育」を描かなかった理由
    わずか四行しかない「矯正教育」の記述
    私が『2500日全記録』に記した矯正教育の全容
    元少年Aによって欺かれていた精神鑑定
    真っ向から否定された「母親原因説」
    精神鑑定と矯正教育への疑念
    第二章 元少年Aの「贖罪意識」と「自己肯定」
    巻末の「謝罪文」に漂う違和感
    「後悔」はしても「贖罪意識」はない
    殺害の記述に見る「贖罪意識」の欠如
    ガンジーやゲバラを自分と同一視する発想
    太宰治の『人間失格』を模倣した自己演出
    美化された殺害の「動機」
    手記は「強者に見せるためのツール」にすぎない
    第三章 元少年Aの「性的サディズム」は矯正されたのか
    裁判所が認定した「性的サディズム」
    未発達だったAの性的中枢
    なぜ猫の虐殺シーンを克明に描写したのか
    なぜ「頭部」に異常にこだわったのか
    「性欲」と「サディズム」が融合した瞬間
    「自分が苦しむから人を殺すべきじゃない」という論理
    父親の涙に対する「ありえない」分析
    「直観像能力」と犯行の関係
    第四章 元少年Aの「広汎性発達障害」が見落とされた理由
    事件の原因は「心」ではなく「脳」にあった
    残酷なホラー映像を好むという特性
    じつはAが広汎性発達障害と知っていた医療少年院
    広汎性発達障害が「封印」された理由
    少年事件は「心の闇」だけでは解明できない
    進まない再犯防止のためのサポート
    第五章 『絶歌』をめぐる議論を検証する
    被害者遺族や支援者は〝どこ〟に怒っているのか
    出版されるまでの複雑怪奇な経緯
    元週刊誌編集長が指摘する手記の問題点
    なぜ元少年Aは「匿名」にこだわったのか
    「加害者の手記出版」は許されることなのか
    おわりに 加害少年を「浦島太郎」にしない社会をつくるために
    参考文献

    ☆関連図書(既読)
    「絶歌 神戸連続児童殺傷事件」元少年A著、太田出版、2015.06.28
    「彩花へ―「生きる力」をありがとう」山下京子著、河出書房新社、1998.01.02
    「彩花へ、ふたたび―あなたがいてくれるから」山下京子著、河出書房新社、1998.12.25
    「彩花がおしえてくれた幸福」山下京子著、ポプラ社、2003.11.09
    「淳」土師守著、新潮文庫、2002.06.01
    「校長は見た!酒鬼薔薇事件の「深層」」岩田信義著、五月書房、2001.05.28
    「「少年A」この子を生んで……」「少年A]の父母著、文芸春秋、1999.04.10
    「少年A矯正2500日全記録」草薙厚子著、 文芸春秋、2004.04.10
    「心にナイフをしのばせて」奥野修司著、文芸春秋、2006.08.25
    「僕はパパを殺すことに決めた」草薙厚子著、講談社、2007.05.22
    「犯罪被害者の声が聞こえますか」東大作著、新潮文庫、2008.04.01
    「なぜ君は絶望と闘えたのか」門田隆将著、新潮文庫、2010.09.01
    「天国からのラブレター」本村洋・本村弥生著、新潮文庫、2007.01.01
    「殺人者たちの午後」トニー・パーカー著・沢木耕太郎訳、飛鳥新社、2009.10.20
    (アマゾンより)
    元東京少年鑑別所法務教官が手記の行間から読み解く
    「更生システム」の落とし穴と発達障害の可能性
    なぜ『絶歌』は「2500日」を描かなかったのか。

    私はすぐに本を手に入れると一気に読み始めた。当時の取材内容を思い出しながら、冷静に、かつ慎重に読み進めていったのだが、しばらくたっても自分のなかに残っている疑問符が句読点に変わることはなかった。最も国民が知りたがっている、矯正教育を終えて社会に出てからの「空白の11年間」を埋めるものが、どこにも見当たらなかったのだ。止まっていた私の時計の針が突然、動き出した。(「はじめに」より)

  • 「絶歌」が出版されて慌てて出された本。タイトルは煽情的だが合っていないような。殺意にスポットは当てていないようだが?「矯正2500日全記録」の著者。以前この本を読み、少年Aは治ったのだと思っていたが、そうではなかったようだ。そして著者自身もそう感じたのだろう。評価していた更生過程があっけなく否定されてしまった困惑が伝わってくる。困惑と言い訳と引用で構成された書。しかし改めて取材し直してわかった事実もあったようだ。そこを突き詰めてまた改めて書いて欲しい気がする。

  • 事件についての感情は別として、本の評価だけすれば、著者の主観と感想の羅列なので、まぁ他の本を読んだ方よかったかも。残念。

  • 368

  • 3章の「性的サディズム」は矯正されたか?は、インパクトがすごい。絶歌の引用が多いが具体的に記すと模倣犯が出るのではないか心配。他も含めこのような怪物を誕生させる社会はどうなのか?
    絶歌の出版、少年院での対応も疑問。
    絶歌では、「蟻やゴキブリを殺しても誰も怒らへんのに、人間の命だけが尊いんですか?人間を殺すのがそないに悪いことなんですか?」と、いまだにナメクジやゴキブリの延長線上に人間を見ておりとても矯正されたとは言えない。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・ノンフィクション作家。日本発達障害システム学会員。地方局アナウンサーからブルームバーグL.P.でファイナンシャル・ニュース・デスクを務め、独立。著書『少年A矯正2500日全記録』(文春文庫)など。

「2018年 『となりの少年少女A 理不尽な殺意の真相』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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