万引き依存症

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781617053

作品紹介・あらすじ

被害総額1日13億円!

万引きは、日本一発生件数の多い深刻な犯罪です。



あなたの家族が陥るかもしれない⁉︎

●「貧困」が原因ではない

●女性に多い

●認知症や摂食障害との関連も



なぜ繰り返すのか。どうすれば止められるのか。

依存症の専門家が解き明かす、万引き依存の実態。



「万引きGメン」伊東ゆう氏との対談収録





第1章 万引きを繰り返す人たち

第2章 被害者が見えづらい深刻な犯罪

第3章 なぜ女性が多いのか

第4章 なぜやめられず、エスカレートするのか

第5章 高齢者と摂食障害と万引き

第6章 「万引きしない自分」に変わるために

第7章 特別対談 伊東ゆう(万引きGメン)×斉藤章佳

感想・レビュー・書評

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  • 万引きをする人間の心理、理由、更生・改善させることの難しさが書かれたルポ。
    目からウロコがあまりにも多く、同時に当事者に対する自分の偏見の多さを痛感した。

    P74)本屋では1冊盗まれると損失カバーのために10冊売らないといけない。


    P81)万引き依存症の難しさは、逮捕されなければ変わらない一方で、逮捕だけでは変われない、こと。
    それは万引きの再犯率が高いことを示している。まさに全体の1/4。
    年齢別に見ると男性の40代、女性は65歳以上が最も多い。女性は年齢が上がるほど再犯率も上がる。

    P85) 男性は収入が上がるほど再犯率は下がる傾向にあるが、女性は収入が増えるほど再犯率が増える。これが示すのは女性の万引き理由が、お金、ではないということ。
    →節約のため。という理由が多い。男性には見られない。
    50歳以上女性の ストレス発散という理由も多い。

    P106) 依存症とは、決して快楽に溺れるために繰り返すのではなく、人の内面にある「痛み」を緩和させるための鎮痛剤である。

    P116)孤独も依存症再発の引き金になる。
    当事者は自身の心の寂しさを誰かに知って欲しいと感じ、その欲求から万引きをする。万引きにメッセージ性がある。
    私はこんなに寂しくて辛い思いをしているということを発信している。


    P136)万引き依存症者には認知の歪みがある。
    全ての依存症に共通する。被害者意識とも言える。
    (P160 彼らの中では悪いことをしたから捕まったのではなく、失敗したから捕まった、でしかない。加害者意識は無く、運が悪かっただけ、私は悪くないと開き直っている。)

    度重なる万引きで捕まった者は異口同音にこう言う。「大したものを盗ってないのに・・・」

    これはおかしい。問題は盗ったこと、なのに。問題を重大なことと捉えず、軽視している。

    著者はその認知の歪みを、
    「問題行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」と定義する。
    →まさにその通り。よく実録動画で犯人がチグハグな言い訳をしているのを見るが、総じてそのようなことを言っている。

    P143)万引き依存症になると色々な感覚が麻痺し、何百回何千回と繰り返すうちに、「衝動制御障害」状態に陥る。
    これは、ある引き金を引くと、自分の内から込み上げる衝動を抑えられず不合理な振る舞いをしてしまうこと。

    →スーパーに行くと万引きのスイッチが入る。
    怖いわ・・・。


    P150)改善策として、依存先を増やすこと。
    依存症とは万引きではなく、自分を損なわない依存先をたくさん見つけておく。

    P170) 65歳以上で万引き理由で、生活困窮が案外少ないのは、高齢者が一概に貧しさを理由に万引きに及んでいるとは限らないことを示している。
    貧困=万引き ではない。

    P180) 高齢になり孤独を感じると、男は酒に、女は万引きに溺れる。
    男の日常には酒が、女にはスーパーがある。依存症とは日常の中で耽溺していくのだということがよく分かる。孤独だ、人恋しいという感情が引き金となり、問題行動(万引き)に発展する。

    P185)孤独が万引きを誘発するのだから、未然に防ぐためには1人にさせないようにすることが大切。周囲が目配りし物理的、精神的にも孤立を防ぐ(おせっかい)。
    →孤立させない支援。

    P226)万引きした者に家族がかける言葉として、「なんでやったんだ!」と怒っては逆効果。責め立てても問題は解決しない。
    話してくれたことに対して(ありがとう)と受け止めることが大切。

    P257)万引きGメンの葛藤として、
    犯人が商品を持って店を出てからしか声をかけられない。本当はカバンなどに入れた時に声をかけたい。→具体的に声をかければ大半はやめるから。その方が罪を犯さずに済むし、店や警察之負担も少ない。
    ただ、そのようなことをして未遂で終わらせるとGメンの仕事は評価されない。。。

  • 特に新しい話はなかった。

  • 依存症を認知心理学の観点から観察した本。
    理解しがたい人物でも、認知の違い(そもそもの物事の見え方が違う)から説明されると理解しやすくなる。
    他人からは異常行動に見えたとしても、本人の中では合理的なのだ。「認知」とは、「そのようにしか見えない」ということなのだから。たとえ歪んでいたとしても俯瞰する発想がない。というか、自身の内面世界に外側(現実世界)があることを知らないのだ。

    また、万引きをするたびにドーパミンが出て快感を感じるらしい。繰り返すと「ドーパミンの耐性」が強くなるため、さらにそれを求めて繰り返す。

    <アンダーライン>
    ★★★
    なんであれ、やればやるほど人は麻痺していく

    ★★★
    彼らは善悪の区別がつく普通の人です。それなのに物を盗まないということだけができない

    ★★★★
    認知の歪みを「問題行動を継続するための、本人にとって都合の良い認知の枠組み」

    ★★★
    依存症の条件反射

    ★★★
    こんな自分を止めてほしいというメッセージ

    ★★★★★
    万引きをすることでその今日一日を生き延びることができる人もいる

    ★★★
    万引き依存症に反省が見られない理由の一つに「被害者意識」がある

    ★★★
    彼らの中では「万引きしたから捕まった」ではなく「失敗したから捕まった」

    ★★★
    どうせ吐いて捨てるものだからお金を払いたくない

    ★★★
    摂食障害は身近な人への処罰感情を兼ね備えている場合がある

  • 万引きGメンに密着といったTV番組を見て、なぜお金がないわけでもないのに万引きするんだろう、こんなに何度も繰り返すんだろう、と思っていたけど、単純に捕まえて罰すればいいという問題ではないと分かった。
    根が真面目な人、真っ当に生きてきた人も、なにかのきっかけで万引きをしてしまい、それがやめられなくなる可能性はある。他人事ではないのだと思うとおそろしい。

  • 生活が苦しくてその足しにするため、転売するため、その物が欲しいからという目的で万引きをする人は意外と少ないそうだ。
    そうでなく、依存症になってしまって、パブロフの犬よろしく、条件反射で万引きをしてしまう人が多いとのこと。
    梅干を見て唾が出るのと同じで、それを止めるのは難しいとかいてある。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/472426006.html

  • 非行や貧困、組織犯罪以外の要因を知ることが出来て勉強になった。

    クリニックの方と万引きGメンの対話をもっと読んでみたい

  • クレプトマニア、いわゆる「万引き依存症」についての一般向け書物であるが、一般向けである分だけ読みやすい。摂食障害と万引きの関係はよく知られているが、著者の調査のように中高年の女性が多く、背景に家族関係の問題を抱えているというのも臨床現場との感覚と合っている。基本的には依存症の治療と同じ対応をしていくが、この病気には、この病気の認知の歪みと行動パターンがあるので、そこを十分に理解して治療をすることがミソだと思う。最後に万引きGメンとの対談は、興味深く読ませてもらった。

  • ・処罰ではなく、プログラムを受けさせることで依存状態を改善し、再犯を防ぐことを目的としたプログラム。
    治療的司法。
    アメリカの、ドラッグコート
    ・ストレスコーピングとして機能してしまっている。

  • 自分は依存症にはなりたくないなあ、とぼんやり思って読み始めた。しかし、捕まって呼ばれた家族に恥をかかせるために、あえて万引きを繰り返すというのがあるというのを知って、ちょっと驚愕だった。これはむしろ、自分が万引き犯になる可能性よりも、家族が万引き犯になる可能性の方が高いのではないかとおもった。少なくとも、やたら節約を声高に言うのだけはやめようと思う。

  • 依存症の陰にある家族関係や、被害者意識、生きづらさ。誰もがトリガーを引きかねないことを心に留めながら、自分を止められる環境を整えておきたいと考えた。

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著者プロフィール

精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模と言われる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに2500人以上の性犯罪者の治療に関わる。主な著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(ともにイースト・プレス)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)、『セックス依存症』(幻冬舎新書)、監修に漫画『セックス依存症になりました。』(津島隆太・作、集英社)などがある。

「2023年 『男尊女卑依存症社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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