ペイント

  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781620237

感想・レビュー・書評

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  • 韓国小説『ペイント』無料試し読み版の配信が決定!「親子って結局、何?」鋭い筆致で描いた、本国ベストセラー。|株式会社イースト・プレスのプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000096.000065025.html

    PAINT | ペイント日本語版 特設サイト
    https://www.paint-jp.com/

    書籍詳細 - ペイント|イースト・プレス
    https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781620237

  •  舞台は近未来の韓国。少子化問題の深刻化の行き着いた先、ここでは何らかの事情で生みの親に育てられなかった子どもたちを国家が育てる、NC(ナショナル・チルドレン)センターという施設が全国的に機能している。センターの子どもたちは、十三歳になると、父母面接を重ねて親を選ぶ権利を持つ。家族になることが決まれば施設を出ることができ、そのときNC出身であるという記録は抹消される。二十歳までに親が決まらない場合、保護者の無いNC出身者として社会に出ていくことになるが、NC出身者への差別は根深い。
     タイトルになっている「ペイント」とは、父母面接=ペアレンツ・インタビューを縮めた非公式の呼称。「ペイントする」とは父母面接をしにいくことを指すが、過去を塗り潰すことや、未来を希望の色で描くことをも表しているのかもしれない…。主人公は、ひとりそんな思索をすることもある、冷静で大人びた雰囲気の十七歳の少年。
     ちょっと粗削りと感じるところもあったが、問題提起はたくさんあった。実は、韓国の小説を読むのはこれが初めて。訳者の小山内園子さんによる、ラジオ番組での紹介がきっかけで読んだ。

  • 国は少子化対策として、親が育てられない子どもを国が養育するセンターを設立。そこで育てられた子どもは13歳から19歳の間に面接をして養親を選ぶことができる。
    養育費欲しさや虐待目的の養親希望者もいるため、養親は慎重に選ばなくてはならないが、見つけられないままセンターを卒業すると、社会での差別が待っている。
    主人公ジェヌ301は、17歳。何度も面接をしているが、相手の本質を見抜いてしまうため、親を決められない。
    センターで子どもたちを見守るガーディアンたちは、基本的に使命感のある誠実な人たちなので、「結果」を求める上層部との板挟みを見ると辛い。そこはどこの社会も同じなのか。それでも、防波堤となろうとするセンター長と、彼すら気遣うジェヌ301のいたわり合いが温かい。

    Web東京創元社マガジン「深緑野分のにちにち読書」で知る。

    http://www.webmysteries.jp/archives/28610458.html

  • ヤングアダルト向けの作品。
    何もわからず読んでいて、何となく中学生くらいの子向けに書かれている作品かな?って思っていたらあとがきに"韓国では中学校で必読書になっている"と書かれていました。
    教訓じみた事は書かれていなくて、「理想の親子関係」であったり「差別」のことについて考えさせられる1冊でした。

    この作品と同じように、もし少子化対策として日本でも実の親が我が子を育てたくないとなったときに政府が子供を引き取って養育するという対策をとったらいずれは国が、国の理想とする人を育てることができちゃうんじゃないか、と。なんか対策のようだけど、そうなってしまうと何かが違うなって思いました。

  • 親子とは?家族とは?その非対称的になりがちな関係についての思考実験。「親ガチャ」を語る場からは、よい意味でも悪い意味でも遠いところにある。もちろん、通り一遍の道徳的な家族論でもない。韓国では中学生の課題図書(必読書)になっているらしいが、それにふさわしい作品であることは間違いない。皮肉でなく。よい本です。

  • 親に望まれない子どもを国家で引き取り育て、ある一定の年齢になったら、子どもを望む夫婦と子どもを引き合わせる、という国家プロジェクトの存在する時代。親とのマッチングがうまくいかなくても、20歳になったら施設をでなくてはならない。マッチングできなかった施設出身の子どもは、偏見の目で見られるという。そんな社会が舞台。

    親になるとはどういうことか、親子とは何なのかを考えさせる。とはいえ、良かったと思えないのはなぜか?
    カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」のような感動を期待していたからか?ちょっと(はるかに?)およばないかな。

  • 原題Par-Int by Lee Hee-young 2019
    小山内園子 2021

    近未来の韓国
    少子化が進み、政府が子どもを育てるNCセンターができる

    ファーストセンター 生まれて間もない赤ん坊から未就学児
    セカンドセンター 小学校入学から13歳まで
    ラストセンター 13歳から19歳まで

    その間に、プレフォスター(親志望)とマッチングされなければ、外の世界でNC出身者として差別を受ける

    子どもの名前はセンターに入った月に由来する
    1月 ジュヌ、ジェニ
    6月ジュン、ジュニ
    7月ジュノ、ジュリ
    10月アキ、アリ
    11月ノア、リサ

    そこに番号が振られる

    主人公は、ジュヌ301

    ガーディ(通称 ガーディアンのこと) NCセンターでこどもたちの世話をする人
    パク~センター長
    チェ 女性
    ファン

    センターのこどもたちは、センター内だけで通じるマルチウォッチが与えられ、コントロールされているし、面大要求などの連絡手段にもなっている

    ジュヌの同室は、アキ13歳
    「ぼくね、親選びって結婚似似ているって思っているんだ」33
    「結婚ってそういうもんだよね?他人だった二人が契約を結んで、一つの家で暮らすこと。お互い二歩み寄っていくんだから最初のうちはケンカだってするんだろうけどさ。時間が経つうちに慣れるでしょ?そうじゃなかったら別ればいいんだし。親子の関係も、そうなんじゃないかなあ」


    「兄さん、ぼく、愛も作っていくものだと思うよ」37

    ノア「コイツらの親も、コイツらのことウザがってるんじゃないか?コイツらにイラついて、キレてるんじゃないかって?オレは絶体、原因のない結果って、ないって思っているから」43

    面接の前にはホログラムで相手の映像とメッセージを読むことができる
    プレフォスターは子どもを引き取ると、政府から支援金が与えられるので、お金を得る手段としても申し出る
    借金、老後の資金などの理由で子どもを引き取るのだ
    子どもを結婚させれば年金にも鳴る

    ジュノに30歳の夫婦からの面接用のホログラムが届く
    二人は今までになく、積極的でもなく、自然体だった

    「少なくとも、ぼくには親を選ぶ権利があるじゃないですか」55

    「子どもは、親の都合で生じる存在らしいです」
    「・・・・・」
    「自分たちの都合で僕らを訪ねてくる、プレフォスターみたいに」82

    「実はお前じゃなくて自分のためだって、正直に打ち明けてくれるほうがマシなんじゃないですか?」

    「どんな親を選びたいかって聞かれたら、僕は自分の気持ちに正直な親だって答えます。それらくし取り繕った人は勘弁だ。だから、今回の父母面接はよけいしたかったんです。僕と合う人かもしれないじゃないですか?」83

    30代の夫婦は、ソ・ハナとイ・ヘオルム
    女はエディターで、男はグラフィックデザイナー 二人は紙の本を作る仕事をしていたがやめて、自分で文章を書く、絵を描くことを選んだ

    一方、アキの面接相手は、老夫婦で、全面的にアキを愛していた

    「治部の親に育てられたからって、その子に問題がない?あたしは自分の親が誰か知ってる。おじいちゃん、おばあちゃんのことも、遡れば自分のルーツもだどれると思う。でもある日突然こう感じたの。あたしがもしあの親のもとで育っていなければ、今ごろ完全に違う背角で、違う生き方をしていたんじゃないか?結局、自分でやったと思いこんでいることも、実際には知らないうちにさせられてたわけでしょ。あたしの記憶があるのは小学校二、三年くらいからだけど、はっきりしていない。だったら、記憶ができる前のあたしって、どんなふうに育てられたんだろう?そう考えたとき、NCセンターのことが頭に浮かんだ。自分が十代で、今の君ぐらいの年でうちの親と会ってたら、どんな関係になったんだろう?実はね、あたし、母親から結構ひどい目に遭わされたんだ。もちろんあたしもさんざん当たったし、意地悪をして母さんを苦しめたけど。
    子どもって、ほとんどは家族から一番傷つけられるんだと思う。だからあたしたちは子どもをつくらないことにした。自分でも知らないうちに、一人の子どもの性格や価値観、ひいては人生まで牛耳っちゃうかもしれないって思ったから、ドキンって怖くなったから、赤ちゃんの面倒を見るのだって並大抵のことじゃないし。とにかくしばらく真剣に悩んだ。116

    「・・・ほとんどの人は、リハーサルなしで親になりますよね」120

    「大人だからって、みんなが大人っぽい必要ありますか」121

    「世の中の親って、だいたいが不安定で不安そうな存在じゃないですか?あの人たちだって親をするのは初めてだろうし、誰かに自分の弱さをさらすって、それだけ相手を信頼していることだと思うんです。子どもに弱みを隠して、恥部を見せない親ってたくさんいますよね。そういう関係は時間が経つほど信頼が崩れるでしょ」123

    「オレは、アフリカにいるガゼルみたいなやつだって思っているからさ」
    「最近、動物もののドキュメンタリーを見たんだよ。絶滅の危機に瀕した動物のガゼルってのは、不思議な事に生れてすぐに歩いたり、走ったり、全部できるんだ。もちろん親の保護は必要だけど、だいたいのことは一人でできるらしい。もし人間もそうだったら?生れてすぐにいきなり歩いて、走って、話して。そういう状態で親を探すのって無茶苦茶笑えない?」「オレはアフリカで生れたガゼルだ。そう考えることにしようって。生れてすぐに歩いて、走って、話せる状態で、親を見つけるわけ」135

    「あたしたちが、必ずしも親になる必要がある?ただの友達じゃダメ?十代って、親より友達のほうがもっと大切じゃない?親には言えない話だって友達には話すでしょ?」181

    「この世の中に、最初から最後までいい人っていうのはいないあ。あの人たちがお前に、いつも明るくかわくいろって要求してきたら、お前できるか?
    「自分にできないことを、あの人たちに要求するな。オレとああだこうだって言い合えるように、あの人たちともソリの合わないことはきっと起きる。あの人たちのいいところだけを探そうとするな。お前もいいところだけ見せようとするな。でないと、お前とあの人たちはどっちもつらい思いをする」194

    「いつも感謝の気持ちを忘れるな。お前が愛情をほしがっているのと同じように、あの人たちもそうかもしれない」195

    「NCは人に差別されているから、自分たちがNC出身であることを隠そうっていうのは・・・根本的な解決策じゃないと思います」217



    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000065025.html

    https://book.asahi.com/article/14532059

    https://www.paint-jp.com/

  • 近未来を描いたSF..になるのかな?
    現代よりも少し進化したロボットやバーチャルシステムが登場していなければ、韓国のリアル?って思っちゃったかもしれない。
    それくらい現実味のある話だった。

    舞台は近未来の孤児院なんだけど、テーマとしては
    家族って何?
    親子ってどういう関係?
    というところを問うた青少年向けの小説。
    ほんとに私側の問題(?)なのか、書き手さんがそういう世代だからかは分からないけど、この作品も脳内でアニメ化されてしまうんだよなぁ。
    それが悪いわけじゃないんだけど。

  • 作者の後書きにグッときた。
    子育ては突然本番がやってくる。

    子どもが親を選べるなら…
    私がこの世界に立った時、自分に合う完璧な親を探し選ぶだろうかと一度は考えた。そう思い至った時に、私の中には家族との思い出がたくさん浮かんできた。そのどれもが楽しいものばかりではない。家族とは決して最初から今まで完璧ではなかった。時にぶつかり合い、怒り、悲しみ、どうして自分を分かってくれないのかと嫌になることもあった。しかし、そんな家族との時間で自分を知り、相手を知ったことは、他の何者にも変え難い時間と感じた。

    子どもも親も、その立場での自分自身を知るには努力と時間がいる。子どものためにという思いの本質には、叶わなかった願いを叶える親のエゴがあるかもしれない。また、子どもが親に求める気持ちもあって当然だと思う。
    ただ、家族というものは完璧でないもの同士が補い合って、お互いや自分自身を理解するためにあると思えば、今の親や子との関わり方が間違っているのではないかと悩む人たちも、きっと気が楽になるのかな、と思った。

    あとは、私も親になった時に、完璧でなくちゃ!と気を張りすぎず、でも、命令せず子どもや自分に問いかけ反省できる人になりたいなと感じた。

  • 親を選べるこども
    いままで親を選べないことが当たり前だった
    でも施設出身であることを隠して、普通のこどものように振る舞う
    例えばもし友達に施設出身の子がいたら、一度も可哀想だと思わず同情せずにいられるのかな
    例えばいい子だけど施設出身の子が犯罪を犯したらどこかで受け入れる自分がいて
    でも親元で育った子が犯罪を犯したら、なんであんなにいい子が…と思うだろう
    人間は思ったよりも偏見にまみれている
    ひどい親元で育った人も描かれていて、みんなそんな当たりの親元で育てるわけないかあ、と当たり前のことを思った

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著者プロフィール

2013年に「사람이 살고 있습니다(人が暮らしています)」で第1回キム・スンオク文学賞新人賞大賞を受賞して作家デビュー。2018年に第12回チャンビ青少年文学賞を受賞した『ペイント』(イースト・プレス)が30万部を超える大ベストセラーとなる。そのほかの著作に、第1回ブリットGロマンススリラー公募展大賞を受賞した『너는 누구니(きみは誰だ)』や、『나나(ナナ )』などがある。毎年着実に新作を発表していて、最新作は『챌린지 블루(チャレンジ・ブルー)』(2022年)。

「2022年 『普通のノウル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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