答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ

著者 :
  • イースト・プレス
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781621760

感想・レビュー・書評

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  • わかった気にさせてくれる本でした。
    感覚になんとなく訴える書き方(そして読者が自分で勝手に補って「そうだね」と納得する流れになる書き方)をされているので、ざっと読んで、なっとなくわかった気になります。

    でも、よく考えると、「それってちょっと違うんじゃない?」「嘘じゃないけど、そう言い切るのはどうだろう」という点がたくさんあります。
    ロジカルに書かれているようで、そうでない箇所が結構あるように感じました。
    例えば、言葉をきちんと定義をした上で論を展開しているわけでではないので、解釈によって如何様にでも考えらる箇所が多かったりします。

    他者の著作や言葉・主張の引用も、ご自身の論を混ぜて書かれているので、雑な印象でした。どこが元の方の言っていることで、この本の著者のオリジナルなのか、ちょっと不明瞭です。また、元の著者が使っている文脈の意図とは少しずれているような箇所もあったり、著者の解釈を織り込んで取り上げているような箇所もあります。(完全に違うわけじゃないのですが、5%の部分を99%みたいに言ってない?みたいな感じがちらほら。)

    というわけで、読んでいて、私にはちょっとストレスでした。
    箒木先生のネガティブ・ケイパビリティの本も読みましたが、箒木先生の本の方が、この種のモヤモヤ感は少ないと感じました。

    ただ、ざっと読んでまぁこんな感じかぁと、なんとなく参考になりました。
    書いてあることを文字通りに受け取ってはいけない感じで読むというか、素直に受け取れない感じだったのはちょっとつらかったです。ある意味、ネガティブ・ケイパビリティを鍛えられる一冊でした。

  • 年末に友人たちと泊まりがけの忘年会に出かけました。温泉入って食事してコタツに入ってごろごろして、なんとなく今年面白かった本談義になった時に、たまたま読んでいた中公新書「ウクライナ動乱」の中で提示されていた「錯綜した亀裂」「オーバーラップした亀裂」の対比図が目鱗だったという話をしました。いくつかある亀裂がバラバラな時は大丈夫なんだけれど、その線が重なり合うといきなり戦争になる、という指摘です。それって「ネガティブ・ケイパビリティ」に通じるものがあると教えてもらったキーワードです。これほど正解の見えない時代に必要とされている能力のこと、とのこと。全く知りませんでした。で、この本です。いくつか薦められた本の中で一番易しそうなもの,読んでみました。本当に優しい語り口で語っているのでするする読めてしまいますが、そのテーマは深く、広く、重いです。しかし、この能力は、別の語り手を持ってして「聴く能力」とかあるいは「ケアの力」として語られていることとも重なると思います。とても気づきの多い本ですが…今、まさにウクライナのこととかガザのこととか思ってしまうと、ネガティブ・ケイパビリティではなく思考停止してしまう感じにも陥ってしまいます。まあ、急がず慌てず,同じ著者の「システム思考の上手な使い方」でも読んでみようなかな…

  • 思うに、この本を一度読んで「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念をすんなり理解できた人は、すでにネガティブ・ケイパビリティが相当高い人だ。なぜならこの言葉自体がとても抽象度が高く、曖昧で、多様な意味を含むものだから。

    私はイマイチ消化できなかったので、その特徴をいくつかの行動や態度に要素分解して、自分なりにかみ砕いてみることにする。

    ①分からない状態に耐える
    分からなくても取り乱さない。白黒つかない状況、先の読めない状況でも不安や焦りに耐えられる。知的寛容さ。おおらかさ。

    ②あえて判断や結論を保留する
    早合点せず、じっくり情報を収集し吟味し判断する。多様な意見に耳を傾け、広い視野と長い時間軸で正否を考えることができる。メタ認知。

    ③自分の知識や能力の限界を自覚する
    世の中には自分のコントロールが及ばないものがある。分からないことや矛盾したことがあって当然とする謙虚な心構え。無知の知。ダニング=クルーガー効果。

    ④既存の知識や価値観、こだわりや目的意識を捨てる。
    自分の認知バイアスやフィルターバブルに気づく。アンラーン。

    ⑤迷うことや躊躇うことを前向きに捉える
    正しい答えを出すことより、迷ったり右往左往する中での学びや反省が成長を促す。結果よりプロセスを重視する。

    ⑥空っぽの状態に価値を見出す
    積極的に分からないままでいる。身体感覚や無意識に身を委ねる。無心。無為自然。ゾーン。マインドフルネス。

    ⑦作為性から離れてみる
    偶然の出会いや他者からのインスピレーションを信頼し、期待する。セレンディピティ。創発性。コネクティングドッツ。

    こうして分解して考えてみると、ネガティブ・ケイパビリティの裏には「未来の“計り知れなさ”は言わば伸びしろだから、答えを急がなくてよいよね」という楽観的な信念が通底していて、逆にポジティブ・ケイパビリティの方が未来を不安やリスクとして悲観的に見ているんじゃないか?

    ネガティブが楽観的で、ポジティブが悲観的だなんて、なんか逆説的で面白い。

  • 人間の器の大きさはネガティブケイパビリティの大きさかもしれない。

    わかりやすさ、速さに価値を置き過ぎない。

    リーダーからネガティブケイパビリティを発揮していれば、メンバーにも伝染する。完ぺきでなくてもいい、わからないこともある。

    自分にも相手にも完璧を求めるリーダーの組織は息苦しいかも。

  • こういった忍耐力の事を、ネガティブケイパビリティという能力やスキルとして定義した事が素晴らしいなと思った。頑張って身につけよう。

  • いい本でした。
    ネガティブ・ケイパビリティは「不確実性」が不安や脅威を引き起こす中でそれに流されずに不確実性を受け入れることであり、(不確実な場所にとどまることは目的ではなく)その結果として新しい思考や認識が出現するための手段だということ。デザインの現場やデザイン教育の教室での実践経験としても納得感があります。

    ビジネススクールのデザイン思考やサービスデザインの授業の前に読んでおくべき課題図書にしたい。読んだからといってすぐに身につくわけではないけれど知って意識するだけでも効果はありそう。

  • 読了!早急な結論、判断や見解に飛びついたり、諦めたり、思考停止しない 持ちこたえる能力、待ち続ける能力をたかめるように、意識して日々過ごしたいと思いました

  • 「答えを行動を急がされる」「分からないが言えない」学校で特に感じること。
    子どもの「ネガティブ・ケイパビリティ」を奪っているのではないか。

    私自身、特にこの2年、「聴く」ことができるようになりたいと思い、いろいろと考え動いてきた。
    今感じているのは、「“ただ”一緒にいる」その重要さと難しさ。
    今の私の中にあるものはなんだろう。
    それをゆっくり見るために春から余白の時間を持ちたいんだな、私は。




    ・脳は不確実性を嫌うように進化してきたため、物事が予測・コントロールしにくくなると、私たちは私たちは強い脅威を感じる。脅威を感じると、脳は「闘うか、凍りつくか、逃げるか」というモードになり、モチベーションや集中力、敏捷性、協調性、自制心、目的意識、ワーキングメモリも低下する。
    ・意味がわからないと、わかりたいと思うのは心の根本的な傾向。
    ・ネガティブ・ケイパビリティとは、事実や理由をせっかちに求めず、不確実性や不思議さ、懐疑の中にいられる能力。
    ・何がわかり、何がわからないのかの区別がわからねばならない。本当にわかるためには、まず何がわからないかが見えて来なければならない。
    ・“新たな考えのためのスペースを残す”ために、自分が知っていることと、欲していることを忘れ、新しいパターンが展開するのを辛抱強く待て。
    ・不安や居心地の悪さかは、つい「逃げ出そう、散らそう」とする衝動が生まれるのは、実は自然なこと。その衝動を否定するのではなく、不安などをそのまま器に容れるようにして、不安や居心地の悪さを認めて同居する、一緒に居続ける。
    ・ある人の前提を「保留する」とは、「いわば、『自分の前に吊るし』、いつでも質問したり、観察できるように」しておくことだ。これは前提を捨てたり、抑圧したり、表現するのを避けたりという意味ではない。自分の前提を自覚し、検証するために掲げるという意味なのだ。これは自分の意見を弁護していたらできないことである。また自分の前提に気づかないうちは、あるいは自分の考えが議論の余地のない事実ではなく、前提にもとづいていることに気づかないうちは、やはりできるものではない。
    ・素直な心とは、自分の利害や感情、知識や先入観などにとらわれずに、物事をありのままに見ようとする心である。
    ・方向性を全部捨てた集中力、何もしないことに全力を傾注する、なんにもこだわらない状態、無為。
    ・何もしないこと、ボーッとしていることは、実はすごくエネルギーがいること。

  • 少し冗長だが参考になった。

  • ネガティブ・ケイパビリティ
    どうにもならない状況の救いとなる考えかた。

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著者プロフィール

大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役、株式会社未来創造部代表取締役社長、幸せ経済社会研究所所長、環境ジャーナリスト、翻訳家
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア著)の翻訳をはじめ、環境・エネルギー問題に関する講演、執筆、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動きを発信。持続可能な未来に向けて新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンスを高めるための考え方や事例を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
心理学を基にしたビジョン作りやセルフマネジメント術で一人々々の自己実現を手伝うと共に、システム思考やシナリオプランニングを生かした合意形成に向けての場作り・ファシリテーターを、企業や自治体で数多く務める。教育機関で次世代の育成に力を注ぐと共に、島根県隠岐諸島の海士町や徳島県上勝町、宮城県気仙沼市、熊本県南小国町、北海道の下川町等、意志ある未来を描く地方創生と地元経済を創り直すプロジェクトにアドバイザーとして関わる。

「2023年 『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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